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王都への帰還

 今日は王都へ帰還するため、町を出る日である。


 二日前、最後の騒動で祭りは混乱の元に終息した。町長が騒ぎまくり、ジョナサンや司祭さま、助祭などが逃げる時に転んだ人に『治癒:ヒーリング』や恐慌な人に『精神安定:リム―ブフィア』、ウェンディが『精神の精霊』にお願いして気持ちを落ち着かせたり、支部長は頭を押さえていた。


 ちょっと「サービスぅ」が過ぎてしまったようだ。思い返せば、キメラの解体で胃の構造を見たりしてちょっとだけ気持ちが高揚していたかもしれない。お酒もいつもよりちょっとだけ飲んでいたかも‥‥。


 昨日は町長や司祭さまなどの町の人との諸々のやり取り終わらせ、広場の石の観覧席は撤去し、石像やバジリスク、ゴーレムも仕舞っておいたが、ブランコやハンモック、木のうろは町の人々の要望で残すことになった。


 そして今、カレン達と支部長、エリカ、吟遊詩人の女性という総勢10名で町を後にする。

 貸し馬車屋で馬二頭と幌馬車を冒険者ギルド名義で支部長が借りて、町で解体した素材は私の『魔法収納袋』に入れてその輸送と護衛任務という名目である。

 吟遊詩人の女性は名前をアーレイと言い、話を聞いたところ本業は吟遊詩人だが冒険者登録もしているという私と同じ兼業冒険者だった。


 馬車の荷台は良く揺れてお尻が痛くいなるのが常なので予防にクッションを多めに出し皆に配る。道すがら皆で色々と話をするが、旅から旅の暮らしのアーレイは各地の話しをよく知っており、いろいろと教えてもらった。西の方では小麦が豊作になりそうだとか、北の方では森で狼系の魔物が出ているとか、5年ぶりに行った石巨人の集落では女の子が一人家出していたとか、面白い話が聞けた。


 季節は春から夏へ移り変わってゆく途中、日和も良くガタゴトと揺れる荷台でアーレイとウェンディがリュートの二重奏を始める。2つのリュートが交互にメロディーを交換したり、片方がメロディーを演奏しもう片方が伴奏したり、それぞれ独立したパートを演奏して絡み合ったりする。即興で合わせているのに真似の出来ない技である。私もピアノがあったら参加したいところである。

 ちなみにアーレイが使っているリュートは『飛竜の琴』というそうだ。ワイバーンの翼膜を特殊な方法で加工し板に張り付けクリアで持続音の長い響きを持つらしい。弦はワイバーンの腱を使用しており、非常に弾力があり切れにくく、音の立ち上がりが速く、力強い演奏に適しているということ。


 演奏後は二人でリュートに使える夢の素材について盛り上がっている。レッドドラゴンの骨は響きがいいとか、ドレイクトレントの木は音の広がりが素晴らしいとかいまいち共感できない話で盛り上がっている。『魔法古物』について語っている時の自分も同じようなのかもしれないとちょっと反省した。

 ここで初めて知ったがウェンディは今回の幻燐竜の素材でリュートを作れないか狙っていたようである。今回素材として回収できた中からも「キメラのライオンの鬣やドラゴンの髭」や「ミノタウロスの皮」などは一部、ウェンディが買い取る話になっている。


 王都への帰路は進んでいくが、幻燐竜ダンジョン踏破の噂話は先に広まっているので立ち寄る町々では有力者の家に招かれ、宴が開かれ、話をしなければならない。主にカレンとダブスが。私は大人しくしていようと思っていたのだが、幻燐竜の幻影で町の人々の度肝を抜いた話もセットで広まっており、怖いもの見たさの町の人々が集まり、有力者の方から懇願されては断ることも難しい。

 司祭さまなどに待機してもらい自己責任でという話を事前にとっくりと話してもらってからショーは開催された。バジリスクやアイアンゴーレムの展示もセットで大反響である。これだけで旅芸人としてやって行けるかもしれない。


 まさか、後日王都の劇場でも観客に向けて放たれる体験型「幻燐竜のドラゴンブレス」が最大の見せ場の観劇が流行るとはこの時思いもしなかった。

 しかもその装置の開発にも関わるとは。




 とりあえず、無事?に帰路の旅は進んでいる。

 ある日のお花摘みから馬車に戻る途中、女性だけの時にカレンがエリカにここ数日の疑惑を追及した。


「で、ジョナサンと上手くいきそう?」


 そう、町で教会に遺体を預けた辺りからその翌日はご遺族や教会とかにジョナサンとエリカは二人で対応していた。

 ここまでは二人でいても仕事であるし、何の問題もない。が、その後の祭りの辺りからジョナサンの近くにエリカを寄り添っているのを皆が見掛けている。

 エリカは童顔で楚々とした見掛けで一歩引いた奥ゆかしい態度を取っており、人目を惹く派手な見掛けのカレンやウェンディと違い、どちらかというと子供扱いされることが多い私寄りだ。しかし中身は肉食である。


 農村や地方の町などでは親同士の話し合いや各種ギルドの紹介などで結婚するのが一般的だが王都では自由恋愛もある程度は存在する。二人とも成人しているしそろそろ結婚しても可笑しくない年ではある。というか一般的には16歳で成人して1~2年で結婚する者の方が圧倒的に多い。

 エリカは18才で恋愛を楽しむタイプらしく今まで決まった彼氏はいないが、男友達?は多いと聞いている。

 男の冒険者は一般的に結婚している者は少ない、元々根無し草のような人間も多いし、何時怪我をしたり、帰らなくなるか分からない職業である。男の冒険者は一般の女性の結婚相手としては人気がない。まぁ腕が有って儲かっている冒険者は金回りもいいし遊び相手としては人気があるそうだが。仮に付き合っても冒険者を引退したら結婚するというパターンが多いらしい。


「えーー、なんのことですか?」


 エリカがすっとぼける。


「いや、全然かまわないのよ。二人がくっ付いてもくっ付かなくても。二人とも恋愛で仕事に影響出るタイプじゃないだろうし」


「そうですね。このパーティの男性の中じゃ一番優良物件じゃありません?彼って。真面目だし、神官だから冒険での生存率も高いし、神殿や教会に貢いじゃうからお金はそんなに持ってないかもしれないけど、冒険者辞めても神官なら食いっぱぐれは無いでしょうし。戦士なんて冒険者辞めたらただのゴロツキですからね」


 エリカが正直な意見を披露する。きっと元冒険者のゴロツキとは何か因縁があるのだろう。下手したら複数。

 私もカレンもウェンディもエリカの本性を知っているので驚くこともないし、エリカも誤魔化すこともない。アーレイだけは驚いた顔をしている。


 さて今回の物件、ジョンナサンであるが年の頃は20才、短く刈り込んだ黒髪にヒョロ長の体形、横の大柄な戦士二人に比べたら筋肉は目立たないが、後衛で戦いも担当するのでそれなりに鍛えたヒョロマッチョ?である。顔は美形と言うわけではないが目つきは鋭く、シュッとしており精悍と言えば精悍と言える。小さい頃に神の声を聴き、地方の農村から王都の神殿に移ったと聞いている。公的には市民権を持っている神官である。


 市民権を持っている者は市民税の納付や年間数日の賦役、有事の徴兵義務などが発生する。王都の住民は賦役などは実際にはお金で納めることも多いが。また、王都内の土地建物の所有が認められ、諸々の公共サービスや権利を受けることが出来る。

 ちなみにウェンディとグレイサンドはこの国の市民権は持っておらず、冒険者ギルドで仕事をするために一時的に在住が認められている外国人滞留者であるため、上記、義務も権利も発生しない。

 二人の場合は冒険者ギルドに所属しているのでそこから一定の税を納め、例外的に魔物の襲来などの有事の徴兵義務は発生する。


 また市民となってもその公的立場はその職業等によって異なる。

 私は冒険者ギルド以外にも商業ギルド所属でもあり個人で魔法古物取扱店を営んでいるので冒険者を辞めた後も社会的信用は高い。

 カレンも魔法塔所属であり魔法使いは敬われる存在である。

 ジョナサンも神殿所属であり冒険者を辞めても神官という身分は変わらない。

 ダブスとチャドは冒険者を止めたら‥‥ただの市民である。

 退役冒険者として衛士になったり、冒険者ギルドで後任の指導教官になったり、貴族のお抱えになったりするものも一部はいるが‥‥。


 たしかにジョナサンは優良物件かもしれない、優しいところもあるし真面目だし、ちょっと口が悪いが。


「それに彼、ご遺族の方々へ丁寧にご遺体があった状況を説明してたんですよね。幻燐竜の間でどこでどんな風に倒れていたとか。遺留品も丁寧にまとめてくれていて」


 そう、ご遺体回収時にはジョナサンが簡易的に冥福を祈ってから、付近の遺留物を時間を掛けて探してご遺体毎に小袋に纏めていた。13体分全てである。

 ちなみにカレンはその時、幻燐竜の鱗をウハウハ言いながら自分の『魔法収納袋』に収めていた。


「そしたら祭りの騒ぎの中、偶に寂しい顔していた彼のこと、なんか放って置けなくて‥‥なーんて」


 くるっと回ってエリカが我々に満面の笑みを浮かべた。


 馬車に戻った我々は恙なく残りの行程を熟し、王都へ帰還した。


 王都に戻ったら仕事が溜まっている気がする。




 しかしその前に王都ではちょっとした騒ぎになっていた。



次回は明日16:00頃、更新予定です。

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