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解体ショーメインイベントと祭り

魔物の解体シーンがあります。

「では、ミノタウロスの解体を始めましょう!」


 再び身綺麗にした解体人たちが作業台の上のミノタウロスの周りに集まる。

 まずは両足を太いロープで括る。作業台の横に立ててある二本の太い柱の上部の輪っかを通したロープをそれぞれ十人ほどの周りにいた男たちが引っ張り、ミノタウロスを逆さ吊りにし頸動脈を切断し「ピューーー」と出た血を大き目の瓶に集める。ミノタウロスの血も素材として貴重である。

 血が噴き出るのに対して歓声が聞こえる一部で、大コウモリや大ムカデとは違い人型であることが関係するのだろう、女性や気の弱い者の中から悲鳴も聞こえる。


 十分な時間を取り血抜きが終わるとミノタウロスは元の位置に戻され、その喉元に太いナイフが当てられ腹まで開かれてゆく。大の大人が馬乗りになりその分厚い胸筋の間などに刃物を入れ力一杯作業している。何とか腹まで筋肉を割いたところで肋骨を大型の鋸で切断する係と腹腔内の内臓を取り出す係に分かれる。

 同時に頭部では眼球の摘出、舌や鼻、耳の切断が行われてゆく。


 離れてみていると、かぶりつきで見ているものと青い顔をして広場から去ってゆくものの温度差を感じるが、大勢は盛り上がっている。


 二時間ほどで内臓はすべて取り除かれ、全身の皮は剥がれ、肉は部位ごとに切り分けられ、頭部は分離された。そして作用台から別の台に移された頭部は最後の見せ場に二本の立派な角の切断になったが、希望者は大きな鋸を一挽き出来るという事で人々は列をなしている。後々、呑んだ時の話のネタにするのには十分である。


 その間に作業台や道具の清掃と『浄化:ピュリファイ』が行われる。

 頃合いを見計らって町長が再び声をあげ、人々が呼応する。


「では最後の獲物、キメラの番です」


「おーーーーー!」


 作業台まで移動していた私は『魔法収納袋』からキメラを出す。山羊、ライオン、ドラゴンの頭とライオンの前半身、山羊の後半身、ドラゴンの羽と尾を待つ体長4mほどのキメラのインパクトは抜群である。解体ショーの最後を飾るのに文句なしの主役である。

 ミノタウロスの重さにも耐えていた作業台も全長4mの重さに「ミシッミシッ」と悲鳴を上げている。

 ミノタウロスは牛の頭の巨人なのでその大きさや筋肉、人に牛の頭が付いた異形に驚いてはいたが、村人も牛は見慣れているのでキメラに比べればそれほどの驚きは無かったのだろう。


 キメラを見た人々は言葉を失った。山羊は珍しくないがライオンやドラゴンは見たこともない。シンと静まった時間が2、3分ほど経った頃、ブランコの上から見ていた男の子が声をあげた。


「すげーーー!ドラゴンの頭だ」


 その一声を皮切りに人々はてんでんばらばらにしゃべり始めた。


「これがキメラか!頭は三つで食ったもんは腹は一つなのか?」

「ライオンて初めて見たけど鬣が立派ね!」

「この羽で空を飛ぶんか?!」

「デカいな!」

「こんなバケモンをどうやって倒したんだ!」


 支部長が人々の盛り上がりを横目に解体人に指示を出すとキメラの後足にロープが括られ血抜きが始まった。

 血抜きの後はドラゴンの羽根が切り取られ、腹を裂かれる。ここは興味があったので私もかぶりつきの一番いいところで観察した。

 三つの頭のうち、ライオンは肉食動物である。その食道は短く、獲物の肉や骨を飲み込む用で、そのまま胃に繋がっている。

 ドラゴンは雑食らしいがその食道は獲物を丸呑みする場合に備え、爬虫類のような高い伸縮性を持っているようだ。そして途中にはブレス袋がある。

 山羊は草食動物であり反芻を行う。見ると食道は長く、食塊を胃へ送るだけでなく、咀嚼のために口腔へ戻すための逆蠕動が出来るようになっており、本体の共通の胃の前に小さな反芻用の溜め込む胃がある。

 それぞれの食道から別々の角度で胃に繋がっており、丸呑みの肉、草、それ以外の物を一つで対応するそのハイブリッドな胃の形状と機能は素晴らく芸術的である!


 面白いものを見せてもらった。図鑑や博物誌の記載の文面や図解で見て知ってはいたが、やはり自分の目で見る感動体験は良いものである。


 その後は三つのそれぞれの頭と胴体に分かれ解体が進み、日が陰って来た頃には大方の方が付いたようで、同時進行で広場の別の場所では火が起こり、ミノタウロスの肉を焼く準備が進んでいる様だ。


 陽が沈み切ったころに解体ショーは片付けまで終わり、広場の周りにはかがり火が焚かれ、広場の中央ではミノタウロスの肉が串に刺され回し焼きされ始めた。


 使い終わった作業台はステージに変わり、そのうえで町長が声高に叫んでいる。明日声が嗄れてないといいが。

「では、皆さん今回の幻燐竜ダンジョン踏破を祝して、祭りを始めたいと思います。まずはここに幻燐竜ダンジョン踏破の冒険者達を紹介しましょう。パーティーリーダー!戦士ダブス、神官ジョナサン、魔法使いカレン、盾戦士チャド、精霊使いウェンディ、スカウトグレイサンド、参謀メリッサ!」


 各自の紹介で歓声や拍手が起こるが、私のところで人々の頭に「?」が浮かぶ。


「参謀って何?」


 町長が肩書きをなんて言おうか悩んで、気を使ったのだろうがそこは「荷物持ち」とかで良かったですよ。


 とりあえず町長はみんなの疑問は置いておいて祭りの進行を進めるようだ。


「では、幻燐竜ダンジョン踏破おめでとうございます。乾杯!!!」


 各々が周りとグラスやジョッキを合わせて祭りが始まった。




 我々は広場の目立つところに用意された大テーブルで横一列に並んで座らされた。

 街の人々が用意してくれた料理が並べられ、挨拶に来る人の相手をする。主にダブスとカレンとジョナサンが。

 それ以外は料理を摘まみ、グラスを傾け、ミノタウロスの肉に火が通るのを待つ。

 私もミノタウロスの肉は初めてで料理方法、味付けはお任せなのでどんな料理が来るか楽しみである。


 幾人かの挨拶を受けた後、40歳くらいの女性が子供たち家族と思われるものを連れてきてジョナサンが我々に紹介した。


「彼女は午前中に教会でご遺体の確認をされた遺族の方だ」


「ありがとうございます。30年前にダンジョンから帰らなかった兄を連れ帰っていただき。本当にありがとうございます」


 手元には指輪を持って目の端には涙を浮かべているのにダブスが答える。


「お気になさらずに。我々もご遺族にご遺体をお返しできてうれしく思います」




 その後、2組の遺族のお礼の言葉を頂いた。


 ジョナサンから他に2組のなりすまし遺族もいたことを聞いたが、エリカの指摘に反論できず厳重注意されて帰ったそうだ。

 残りのご遺体と石像は王都に移送し、王都冒険者ギルドで調査を継続することになる。




 ミノタウロスのリブロース、サーロイン、ロース、ハラミ、タンなどなどを楽しみ、祭りは盛り上がっている。

 皆の腹が一旦落ち着いた辺りで吟遊詩人の詩が始まった。

 幻燐竜ダンジョンB2F他の冒険者を助けてオーガ戦、B3Fキメラ戦、B4F第一の部屋ミノタウロス戦と詩が続くとカレンが笑顔で私の脇をつついた。


「サービス、サービスぅ!」


 軽いため息をつき私は広場の人ごみに行き、一部の人に場所を空けるように言った。

 そして詩がB4F第二の部屋戦士の石像戦となったところで空いた場所に「核の壊れた10体の石像」を出現させた。


 人々は驚きの声を上げ後ずさり距離を取ったが、壊れていることに気が付くと近寄ってよく見始める。


 詩が続くのに合わせて「仰け反ったバジリスクの石像」や「核の壊れたアイアンゴーレム」も出してゆくと人々はそれを見上げ興奮が高まってゆく。

 子供たちはバジリスクやアイアンゴーレムの上に乗り始めた。


 そして最後には幻燐竜の間である。



 カレン達に今から出るのは幻影だと言って回ってもらって『イリュージョンワンド』で幻燐竜の幻影を出した。

 人々は目の前に現れた幻燐竜を見上げ、最後の戦いの一部を自分たちも味わえるとあって興奮しキラキラした目で期待に胸を膨らませている。


 広場の端に現れた幻燐竜は「ヒュオーーーー!』という音と共に息を吸い込み喉元や首の下側が、風船のようパンパンに膨れ上がり、喉の奥が一瞬だけ太陽のような白い光を放ち、その直後に炎が炸裂し頭がノックバックする。

 ブレスが放出される際の空気の爆発的な膨張により、炎だけでなく目に見えない強力な衝撃波が発生し耳をつんざく轟音と共に、街の建物を震わせ、人々を炎が包む!





 気絶する者、呆然自失の者、腰が抜ける者、失禁する者、逃げ出す者、祭りの最後は悲惨なことになった。



次回は明日16:00頃、更新予定です。

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