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解体ショーメインイベント会場整備

「次はやっとミノタウロスの出番だ!乞うご期待!」


 教会の鐘が鳴って人々が各家に戻ったり、屋台で買い物しようとしたりして多少、広場から捌けてゆく。

 解体の昼休みの間は一旦、部屋に戻ってゆっくりとする。何せ人の居るところだと皆が話をせがんで来るので相手をするのが大変だ。まぁ、大体カレンが相手してくれるのだが、気が休まらないので屋台で軽食を貰って部屋に戻る。代金を払おうとしたら断られた。

 カレンとウェンディも同じ気持ちなのか一緒に宿の部屋でたわいのない話をしながら軽食をとる。

 カレンも話し疲れたのかいつもより静かである。


 さて、小一時間した辺りで広場がまた煩くなって来たので佇まいを整えて広場に向かう。

 午後になってさらに人が増えたようだ。話を聞きつけたさらに近隣の村や町などから集まってきたのであろう。広場は人で埋め尽くされる勢いである。

 町長は作業台の横で興奮し周りの人と話しながら我々を待っているが、小さな子供やお年寄りは大人の間に挟まって危険な状態になっているのに気が付いていない。

 私はカレンとウェンディに耳打ちしてから町長の近くに寄った。


「町長さん。再開する前にこちらの左右のスペースから一旦、人を退避させてください。うちの魔法使いたちが余興の魔法を披露しますから」


「余興の魔法ですか、それは素晴らしい!おいお前たちそっちとこっちを開けろ!」


 町長に促され人々がスペースを空けてゆく。そこにカレンが現れ、いつもより長く集中して魔法を唱えてゆく。普段は使っていないが今は演出なのか『ワンド』を出してその先で魔法陣を空中に書いてゆく、魔法陣の完成とともに両手を天に広げ呪文を叫んだ。


「石壁改:ストーンウォールステップ」


 カレンの呪文により地面から石の壁が出現する。通常であれば城の石壁のように厚さ幾つ、高さ横の長さ幾つと指定したただの石壁を出す呪文であるが、今回は横10mほど、一段目は高さ1㎝、二段目は1.5mと50㎝ごとの段差のある五段ほどの階段状の観客席になっている。横には上がる階段があり、最前列と最後尾、左右には転落防止用の小壁まである親切使用である。

 戦闘時の呪文は基本的には応用が利かない、条件に合わせて呪文の効果を変えることはその場で呪文構文を変更しなければいけないので手練れの魔法使いでも行わない。しかし平時で十分に時間があり、落ち着いて行うなら応用することは可能である。

 その場ですぐに魔法構文の変更に対応できるのはカレンが魔法使いとして優秀である証拠でもある。

 調子に乗るので本人には言わないが。


「おおーーーー!」と人々から歓声が上がる。


 人々が急に出現した観客席に驚愕し歓声を上げている背後から声が上がる。


「『木々の精霊』よ、人々が座れるよう形を変えて」


 ウェンディが広場に脇に生えている二本の大きめの楓の木の語り掛けると、その大き目の枝が向きを変え、伸びて繋がってゆく。が上手く段差を作って行くのが難しいようだ。


「そこもうちょっと上、左下げて、後ろ高さ合わせて」


『木々の精霊』となかなか大変な作業をしているうちに町長さんに耳打ちする。


「子供やお年寄り、女性を優先的に座らせて下さい。解体が始まって前にみんなが詰め寄ってきても怪我人が出ないように、石のほうは硬いのでクッションは各自持ってきてください」


 町長が人々に説明している間もウェンディは『木々の精霊』と悪戦苦闘している。

 精霊魔法は精霊との会話によって魔法を発動させるので決まった呪文はないが、イメージを伝えて魔法を起こしてもらうので応用は利く。ただし『精霊』にこちらの意図を汲んでもらわないといけない。普段の戦闘系の魔法であれば『風の精霊』に「切り裂け」とか『氷の精霊』に「吹雪き、舞い上がれ」とか術者も『精霊』も意識し易いものが多い。

 しかし、「人が座れるように段々に枝を張って階段状にして」とかは『木々の精霊』には伝わりにくいようだ。ウェンディはああでもない、こうでもないと散々捻くり廻してから、諦めたようだ。

 らせん状に楓の木の周りを回って上がれる階段や、三人ほどが入れる蔦で編んだバスケット状のブランコやハンモック、3mほどの高さにうろを広げてツリーハウスを作り始めた。

 エルフの里ではこのように家を作ったり生活環境を整えたりしているのだろう。普段の野営でも役に立ちそうだが、そこそこ魔力を使っているから気軽に頼めるものではないだろう。

 人々から歓声が上がる。特に子供たちから。


 そんなこんなで子供たちは木々のうろやブランコなどに、お年寄りや女性は石の観客席に収まり、作業台の周りには大人の男たちが残った。あとは怪我人が出ても自己責任としてもらう。


 怪我防止という観点も勿論あったが、これは私があまり注目を集めたくないので、二人に派手なことをして貰いそちらに興味が行くように誘導したのであるが、今作業台の横に立つ私の手元に広場中の視線が集中している。効果は薄かったようだ。


「ではミノタウロスの解体を始めましょう!!」


 町長の合図で『魔法収納袋』からミノタウロスの死骸を作業台の上に出す。全員の視線がミノタウロスに注がれている隙に作業台から距離を取り、広場の後ろのほうに陣取ったカレンたちと合流する。

 立派な双角を聳えさせた雄牛の頭を持つ筋骨たくましい巨人が作業台に上に横たわり、広場は歓声と悲鳴に包また。

 作業台の近くの者たちは食い入る様に見るものと腰が引けて下がるものが半々である。


「サービスします?」


『魔法収納袋』からミノタウロスの斧の柄の先を出しダブスに尋ねる。

 解体されてしまうと巨大なミノタウロスと両刃の斧という見栄えのする組み合わせを目にする機会はなくなってしまう。

 ダブスとチャドが顔を見合わせているところに「行ってらっしゃいよ!」とカレンが二人の背中を叩くと、二人は観念した様に肩を竦め、私が出したミノタウロスの斧を受け取り二人掛かりで肩に担いだ。グレイサンドにミノタウロスの一撃を受けて壊れたチャドのタワーシールドも持って行ってもらう。

 三人がまだ騒がしい広場を作業台に向かうと人々が道を開ける。

 両刃の戦斧、長さは3m、刃渡りは両刃とも70㎝はあろうかというラブリュスを大の戦士二人掛かりで運んでいる様に歓声が消えた。

「あんな大きな?」「バカな!」「すげーーー斧」などの声が一つ二つと上がり、再び広場は歓声に包まれた。

 作業台のミノタウロスの横に斧を、その横に壊れてひしゃげたタワーシールドを置き三人が帰ってくる。


 収拾が着かないほど盛り上がってしまい町長が進行に困っているところにリュートの音とともに広場の喧騒にも通る歌声が聞こえ始める。


 昨日の夜から我々から話を聞き取りしていた吟遊詩人が早速、詩を作ってくれたようだ。今回の幻鱗竜ダンジョン討伐の軽い触りから、ミノタウロス討伐をメインにミノタウロスの巨大さ強靭さ、そして戦士のタワーシールドも使い物にならなくする破壊力を歌う。私がマントに意識を集中させ攻撃を避け、斧を『魔法収納袋』に入れる件は聴いててこそばゆい。


 とりあえず広場の皆が吟遊詩人の詩に聞き入り、歌い終われば万雷の拍手が広場を満たす。

 手を振りながら中央から下がってくる吟遊詩人の女性は私たちのほうに視線を向けるが、カレンの親指を立てた仕草にニッコリ笑顔を返してくる。


 拍手が鳴りやむタイミングを上手く掴んで町長が作業台の近くで手を挙げる。


「では、ミノタウロスの解体を始めましょう!」




次回は明日16:00ごろ、更新予定です。

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