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買取査定交渉からの解体ショー

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「とりあえず、『幻燐竜の鱗』の代わりになる素材としては『月光石』や『虹色のオパール』、『幻蝶の鱗粉』、『霧草の葉』などがあったと思いますが、どれも産出量が少なかったり、取れる場所が特殊だったりしています。そして入手できても『幻燐竜の鱗』ほど密度の高い成分や量が抽出できない物ばかりです。10倍でも安いくらいではないですか?」


「10倍‥‥‥」


 支部長はボンヤリと呟き意識が飛んでしまっているが、さすが王都冒険者ギルドの買取責任者デヴィッドはきつく口を結んで仕事を続行した。


「見積り額についてはギルド長の承認が必要になりますのでお時間をください」


 私はダブスを見て、ダブスはそれに気が付くと慌てた様に答えた。


「も、もちろんです」


「では次に買取物品についてですが『ポーション』5本、『スクロール』3巻、『スペルブック』2冊、『鎧』3着、『ガントレット』1双、『盾』2枚、『剣』4本、『槍』1本、『メイス』1本、『短剣』2本、『ワンド』1本、『メダル』1つ、『ブーツ』1足、『口輪』1個、『指輪』3個、書籍20冊、ミノタウロスの両刃の戦斧を含む諸々の武器、防具など20点、宝石12個、こちらをお預かりして査定金額を出させていただきます。また、亡くなった冒険者の持ち物の内、身元が分かるようなものがあった場合はご協力をお願いいたします。」


 私はテーブル上に書類ファイルを一つ置く。


「『口輪』に関しては1年ほど前にうちでお売りした物です。鑑定書の写しと売買記録等もありますので登録番号を確認ください」


 以前うちで買取し鑑定書の発行と魔法公安委員会への登録を済ませてあるので王国魔法古物管理元帳に記載されている魔法の品である。


「お預かりします」


 今回冒険者ギルドで確認が取れれば『口輪』の来歴書の履歴が「メリッサ・スー魔法古物店 → 亡くなった魔法使い → ダンジョン遺失 → 新しい持ち主」と記載されることになり、『魔法古物』の持ち主の履歴を明確にすることに寄与する。


「よろしくお願いいたします」


 全ての物はダンジョンからの帰り道の野営中に鑑定は済ませてある。メリッサ・スー魔法古物店で直接買取りをしても構わないのだが、ダンジョンから発見されたものについては亡くなった冒険者の持ち物だったものも多く、その記録や何かは冒険者ギルドが握っているので照会は任せた方が面倒がない。

 それにあまりギルドのメンツを潰すのもダブス達の活動に影響があるし、私も居心地が悪くなる。

 こちらが鑑定を済ませてあるという事などお見通しであろう。きっといい金額を付けてくれるはずだ。


 預ける品と預かり証の受け渡しを済ませ、入れ直してもらった紅茶をみんなで傾ける。

 心持ち私以外の皆さんが疲れているように見えるが気のせいだろう。


 支部長の意識がまだどこかに行っているので、デヴィッドがこの後の流れを説明してくれた。

 町長の依頼で解体は町の中央広場で行いたいそうである。要は見世物である。

 普段は魔物を討伐しても素材として価値のある一部だけを持ち帰ってくることが多い。

 ミノタウロスやキメラの全身を解体するのを見るなんて、ダンジョンが近い町の者でもそうそう見る機会はないという事だ。

 そういえばさっきから冒険者ギルドの外から喧騒が聞こえている気がするし、宿屋からここに来るときに広場で何か大工仕事をしていた。

 きっと今日は町の人たちも自分の仕事をお休みにしているのだろう。


 気持ちを切り替えたのか、デヴィッドが無理に笑った顔を作った。


「町の人たちのために協力してもらえるかな」


「もちろん!お祭りよ!」


 カレンが元気に答えた。


 エリカが遺族との面会があると言って別れ、デヴィッドと支部長と共にギルドの玄関を出ると広場には大勢の人がいて我々が出て行くと喧騒が高まった。老若男女、働き盛りの大人から、赤ん坊を抱いた母親や杖をついたご老人まで町の人間すべて仕事にもいかず広場に集まっているようだ。


 広場の真ん中には大きく丈夫そうな作業台が出来上がっており、滑車やロープ、フックなどが設置されている。その周りにはマスクと手袋、大きなエプロンを巻いた男たちが群がり巨大な肉切り包丁や骨斬り用の鋸、皮剝ぎナイフなどの様々な解体道具を研いだりと手入れしている。


 我々に気が付いた一人の男が近寄ってきて町長だと挨拶してくる。彼は赤く火照った頬で挨拶を返すと私たちにお礼を言ってから作業台に案内してくれた。

 作業台まで近づくとそれまでの喧騒が静まり、皆が作業台の周りに集まりだし、人々が周りの家々などにも声を掛けて回り、家々からも人々が出てきて作業台を囲う。

 集まった中にはウェンディやチャドたちもいてこちらに押されてきている。ジョナサンは居ないようだ。

 随分と人が多い。どうやらこの町の人間だけでなく近所の村々や隣の町からも人が集まってきているようだ。


 町長が挨拶を始めると皆が静かになった。


「今日はこの目出度き日に集まってくれてありがとう。祭りは夕刻からという事のはずだが、気の早いものが多いようだ。まずは今回持ち帰られた魔物の解体を始めたいと思う。最初の魔物はこれだ!」


 町長がノリノリで私の方に右手を差し出した。

 あまり目立つのは好きではないし、『魔法収納袋』を人前で使うのもよろしくないのだが、雰囲気がもう断れない。ああ、カレンの事を叱れなくなってしまう。


 作業台の上に大コウモリ10匹を出した。「おおーーーー!」と歓声が上がる。

 追加で10匹。更なる歓声。もう10匹。歓声。もう10匹。歓声。最後に12匹。最高潮の歓声。

 作業台の上には体長30㎝翼長1mほどの大コウモリで山となった。

 人々の盛り上がりで何とか気持ちを取り戻した支部長が解体担当者に声を掛け10人ほどの男たちが解体を始める。3人ほどがそれ以外の者に見本を見せながら解体しているのでその3人がギルドの正規の人員だろう。


 人々は解体の手元を覗きながら素材となってゆく羽や爪、牙、毛皮、目、喉頭などを興味深げに眺めている。死体が吊るされて滴り落ちる血液は大きな瓶に集められ赤黒く不吉な色をしている。

 通常、冒険者が持ち帰る素材は現地でナイフや鉈で切り取られてくることが多いため、中には扱いが適正ではなく傷付いたり、保管状態が悪く腐ったりで価値が低くなってしまうものがままある。

 しかし今回の獲物は倒す時も『催眠:スリープ』の呪文で眠らせた後、喉を切るなり、頭に一刺しするなりで仕留めてあるので傷も最小限で、その後は時間停止機能のある『魔法収納袋』で運搬している為、鮮度も抜群である。何ならまだ温かい。とても素材として価値の高いものである。

 解体人達も遣り甲斐のある仕事でうれしい事だろう。

 ちなみに大コウモリは羽、翼膜と喉頭が価値の高い素材になる。翼膜は薄くしなやかで、貴夫人の鞄の内張りや軽いレインコートの素材や薬の原料などになる。喉頭は人間にはない超音波を発生させる器官で研究用や、貴族家の監視システムの一部に使われる。


 流石に大コウモリは普段から解体慣れている様で50体が小一時間ほどでスムーズに解体されてゆく。解体された素材は広場に別に設置されたターフの張られた陳列台に置かれてゆき、見学の人々は解体の被り付きの席を交代し箱に入ったり、瓶に入った素材を眺めながら感嘆の声を上げ盛り上がっている。

 小さな男の子たちはおっかなびっくり近づいては瓶詰の目玉100個やびっしり詰まった爪、牙などを眺めている。それを遠巻きに女の子たちが男の子たちを理解が出来ない生き物のように見ている。

 あの男の子のうちの何人が将来、冒険者を目指すのだろう。そして女の子にトラウマが残らないことを祈るばかりである。


 大コウモリの解体の目途が付いてきた辺りで解体人たちの一部が周りの片づけ、清掃準備に入っている。大コウモリはその牙や爪に病気を持っており、解体中も細心の注意で作業している。血液は血抜きをしているのでそれほど派手に飛び跳ねてはいないが作業台の上はそれなりに血まみれではある。作業が終わったところで、作業台の上の破片や何かを片し、乾いた布で汚れを拭きとり始める。使っていた刃物や道具もしっかりと拭き取られ作業台の上に並べられ、使っていたマスク、手袋、エプロン、汚れた布もまとめて片される。


 そこへ服装からこの町の助祭と思われる人物が出てくると人々から喝采が掛けられる。軽く手を上げることでそれに答えた後、助祭は作業台の前で神への祈りを捧げ作業台と道具を『浄化:ピュリファイ』した。降り注ぐ太陽に下にキラキラと光が煌めき作業台と道具を包み込む。

『浄化:ピュリファイ』は神の使いが使用できる魔法であり、穢れや病、魔的な不浄を取り除くことが出来る。長期のダンジョンアタックなどの時は悪くなった水や食料も元に戻せる便利魔法であり、長期航海する船乗りたちからも有難がられている。


 一段落付いて人々が人心地付いたところで再び町長が大声を上げ始めた。


「さぁ、大コウモリは終わったが続いては大ムカデの出番だ!」


 また、手を向けられたのでカレン達と木陰のテーブルで冷たい飲み物を飲んでいた私は再び作業台に近づき長さ5mほどもある大ムカデ1匹出した。歓声。追加で2匹。歓声。3匹。歓声。7匹。最高潮の歓声。

 作業台に載った合計13匹の大ムカデが山となりマスク、手袋、エプロンを新調した解体人たちが再び作業に取り組み始める。


 大ムカデも毒を持つ魔物であり、毒嚢は毒そのものとしても薬の材料としても価値がある。また、外骨格の粉末は強壮剤や身体能力向上薬の原料となり、触覚は振動検知の能力がある為、これも貴族家の監視システムの一部に使われることがある。


 大コウモリよりも大きいが数が少なく、解体する部位の種類も少ないのでこちらも小一時間ほどで作業が終わった。


 このころには広場の外周には屋台やテーブル、椅子、空樽が並んで各々飲食を楽しみ始めている。

 解体人達が後片付けをしているところで町長は、次の解体はミノタウロスで一時間後に始まる旨の大声で伝えている。


「次はやっとミノタウロスの出番だ!乞うご期待!」


次回は明日16:00頃、更新予定です。

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