幻燐竜ダンジョンB6F 2
一概にドラゴン、竜、龍と言っても様々な種類のものが発見、言い伝えられている。
大きな括りでは大きなトカゲのような姿に翼をもつものと言われるが、比較的小型で乗用として人に飼い馴らされることもある飛竜・ワイバーンや、翼はなく蛇に似て海中に住み船も襲う大型な水竜・シーサーペント、こちらも翼がなく地を這う巨体の土龍・アースドレイク、体長50㎝ほどの超小型でブレスも吐かない小竜・ポケットドラゴンなどその定義に入らないものも多く存在する。
今は亜種と呼ばれるそれらは一旦置いておいて一般的な竜・ドラゴンについて考えてみよう。
鱗に覆われた小山ほどもある大きなトカゲのような躰、その四肢は発達し人間の金属鎧など簡単に引き裂く鋭利な爪を持ち、背中から生えた翼は突風を生み大空を翔る。そして喉元にはブレス袋がありドラゴンブレスを吐くことが出来る。
体色は白、黒、緑、青、赤、銀、金などが多く記録されている。生息地も火山の火口、雪に閉ざされた極寒の地、広大な熱砂の砂漠、深い深い森の奥など人里離れた場所が多いが何故かダンジョンの中にもいることもある。
ドラゴンブレスも体色によりコーン状、雲状、直線状と形状も違えば、炎、毒霧、塩素ガス、電撃、冷凍、酸などのタイプもある。
その巨体を飛ばすには小さい翼は精霊の力を借りていると言われるとともに、体の構造自体がマナで出来ているともいわれ、一部のドラゴンは魔法を使うこともあるという。
ドラゴンは古い種族で数百年から千年以上生きているものも少なくないと言われる。人間の村や町を襲うものもおり、古代の言い伝えでは一夜で国を滅ぼした悪竜の話しもある。逆に人語を解するドラゴンもいると言われ、古い言い伝えでは人間と友愛を交わし一緒に冒険する物語も存在する。
さてここまで見てきたのはいわゆる魔物としてのドラゴンであったが一部の人間やリザードマンなどからは神と崇められていることがある。
沼地を生息地としている泥竜・マッドドラゴンをリザードマンが信仰の対象としていたり、火山の近くに住む人間の種族が火口に住む火竜・レッドドラゴンを神格化したりという事がある。
これらは実際に目にした抗えない存在に対する畏怖と恐怖から来ているものと推測され、古代より各地で散見される。
別に、超古代文明時代に高次の別世界から古代竜・エンシェントドラゴンと呼ばれる全ての竜の始祖が訪問したという話もある。
その古代竜が超古代文明を滅亡させたとか、逆に滅亡しかかっていた文明を救ったとも言われているが真実は不明である。一部ではその存在自体を神と崇め神格化している教団もあると言われる。
とまぁ、ドラゴンに関しては色々な研究者が色々なことを言っており、虚々実々である。
最後の幻燐竜の間への移動中、私の講義を聞いていた皆の顔に感情の起伏が感じられないのでそろそろ今回の幻燐竜の話をしてゆこう。
幻燐竜:ミラージュドラゴンはそんなドラゴンの中でも一際変わったドラゴンである。
今回の相手は前回のダブスたちからの報告では鱗は虹色に輝き、体長は鼻の先端から尻尾の付け根まで15mほど、加えて尻尾も10mほどらしい。炎のブレスを吐き、巨大な前足で襲ってきたという。何せ這う這うの体で逃げ出してきたという事でそれ以上細かいことは分からないという事だ。
王都の図書館やそれ例外の書物で調べたところ名前の由来となった「幻の鱗」であるが透明度が高く、光を透過させるクリスタルのような鱗であり、体内に流れる魔力が燐光のように虹色にうっすらと見えるらしい。
その鱗は一枚の長さが20㎝ほどで幻を見せる魔法道具の素材として珍重され高値で取引される。
体は常に半透明で、輪郭が揺らいで見える。一説には半分精霊界に存在しているのではないかとも。
食性も不明で何を食べているのか、食べる必要があるのかも分からない。
幻影を操り、襲ってきた人間を煙に巻いたというような言い伝えもある。
分からないことが多すぎて対応策は取り辛いが、幻影対策として『精神抵抗』のポーションは人数分用意してきている。
馬車で近隣の町まで来る途中にも何度か話した話であったが、幻燐竜の話しからは全員、緊張した真面目な顔で再度聞いている。
ネズミの広場から30分ほど移動し、幻燐竜の間とカレン達が名付けた広場の手前で最終の小休憩を取る。
ダブスとチャド、グレイサンドは装備の最終確認をする。
私はダブスにチャドと同型のタワーシールド、グレイサンドに『火鼠の毛皮』のマントを渡し、自分も装備を付ける。
ジョナサンが『祝福:ブレス』、『精神対抗』を全員に『耐火:ファイヤーレジスト』をダブスとチャドに掛ける。
カレンが『加速:へースト』を全員に『盾:シールド』をダブスとチャドに掛け、自分の腰に差した『ワンド』を抜く。
ウェンディは『風の障壁』の呪文を唱える。
私は『精神抵抗』のポーションを全員に配り、全員が揃えて『ポーション』を煽る。
「いくぞ!」
煽った勢いのまま『ポーション』の瓶を地面に投げつけようとしたダブスを止め、全員から瓶を回収し『魔法収納袋』に収める。
「駄目ですよ。まだ再利用できるんですから。それにこんなところに割れた瓶があったら危ないでしょう」
「‥‥はい。すみません」
「はい!じゃぁ行くわよ!」
カレンの号令で我々は進み始めた。
なお『風の精霊』、『魔法の目:ウィザードアイ』による偵察はドラゴンに気づかれる可能性があるため行わない。
次回は12/1 16:00頃、更新予定です。




