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砂漠の縁の街の冒険者ギルド

ブックマーク、評価、誤字報告 ありがとうございます。


去年10月に投稿を始め100話になりました。

お読みくださった皆様にお礼申し上げます。


 昨晩は砂漠の街の食事宿で「砂漠トカゲの煮込み」や「サボテンステーキ」などの夕飯をご馳走になり、その場にいた商人の方たちとお話も出来た。デーツの蒸留酒を奢って砂漠は初めてだと言えば砂漠での旅に必要な装備や常識、近頃の砂漠の情報や何かも親切に教えてくれた。

 男性は皆一様に日焼けし髭を蓄え、人の良さそうな顔を初めての人間にも向けてくれるのはありがたかった。


 さて、今日は瞑想だけ済ませて朝早くからトカゲの皮の鎧とアラジンパンツ、『砂蜥蜴のマント』に『浮遊の靴』、首からは『砂除けの風霊』のネックレスを下げ、見える肌には『遮熱クリーム』、見えない内側には『調温の旅装』、腰には『御霊のランプ』と『魔法収納袋』と小袋を装備した完璧な砂漠対応スタイルで冒険者ギルドに顔を出している。


 砂漠の縁の街の冒険者ギルドではどんな仕事があって、どんな冒険者が居るのか興味があったからだ。早めに来て離れた国のギルド証を見せれば特に誰何されることもなく、壁際に背を預けることが出来た。


 ここでは朝一の仕事は受付が口頭で説明して、応札金額をそれぞれが手を上げて落札する仕組みらしい。今日の仕事を手に入れるのに忙しい冒険者たちは私の事が目に入ってもすぐ応札に気を移している。


「さぁ、「陽光トカゲ」の脱皮殻集め5枚、銀貨5枚から!」

「4枚半!」

「4!銅2!」

「4.1!」

 ・

 ・

「はい、4.1もう無いか?」

「銀4!」

 ・

 ・

「はい!銀貨4枚で落札! 次は「サンドラット」の駆除! 銀貨6枚半から!」


 今日の稼ぎの為、朝から活気のある様子である。

 応札の様子を少し離れて眺めていると、次から次へと仕事が落札され落とした冒険者は受付で詳細情報の確認と契約書の締結をすると足早にギルドを出てゆく。


・「陽光トカゲ」の脱皮殻集め: 早朝、岩場で日光浴をするトカゲが残した皮の回収。薬の原料や防具の補強に使われるそうです。

・「砂潜り:サンドラット」の駆除: 街中の倉庫の床下へ潜り、食料などを齧るサンドラットの退治。狭い場所での戦闘・罠設置技術が試されそうです。

・「乾燥サボテン」の果実収穫: 水分たっぷりの果実の採取。棘の処理や、果実を狙う鳥型の魔物を追い払う必要があるそうです。

・「琥珀色の砂」の採取: 砂丘の層に含まれる金属加工に適した硬い砂を集める作業。暑さと砂対策が必要そうです。


 固有名詞は珍しい物であるが、基本冒険者の仕事としてはどこも同じような感じである。

 当日もしくは短期間の仕事の応札が終わると今後は中長期の仕事の紹介の様です。


「さぁ、定期仕事のダスト・ジャッカル討伐だ。南東のオアシス周りで20頭ほどの群れの目撃情報があった。1頭当たり銀貨6枚、20頭以上いたらその分もボーナスだ! 検討しているパーティはこっちに集まってくれ」


「こちらは隊商の護衛任務だ! 中級以上、ラクダは支給だ! 片道1か月、金貨2枚銀貨3枚、」


「「砂上帆船」の乗組員募集、経験者優遇! 出発は4日後! 風の魔法使いはボーナスありよ! 詳細を聞きたい人はこちらね」


 簡単な仕事の者たちが居なくなり、今ここに残っているのはこの冒険者ギルドでも中級以上のある程度の実力者たちなのだろう。仕事の中身と自分たちの実力、装備等を秤に掛けてそれぞれの仕事の詳細を各カウンターで受付と確認したりし始めている。


 そんな中、詳細を聞きに人が集まっていない仕事があり、一人の受付の女性が困った顔をしている。確かカピトリン王国への薬草の輸送の護衛だったはずである。

 ここで仕事を受けるつもりは無かったのだが、ちょっと話を聞いてみることにする。

 偶々、朝一で私が身元証明のギルド証を見せた赤毛の受付嬢さんは私が近づくと苦笑いをしている。


「詳細をお伺いしたいのですが」


 私がここの街の冒険者ではないことを承知の受付嬢さんは私の背後や壁際などを確認して目線を私に戻した。他のパーティは大体、代表が受付で詳細を詰めて他のメンバーは壁際やソファーなどに集まって待機していることが多い。


「失礼ですがお一人ですか? 他のメンバーの方は?」


 見慣れぬ冒険者は私しかいないだろう、あくまで確認で受付嬢は私に質問してきた。


「ソロです。ですが一応、エスクイリン王国では中級冒険者と言われております」


 恰好は砂漠の冒険者風であるが真新しく、肌は白く日焼けはしていない。言葉の訛りはこの地方のものではなく、冒険者登録は馬車でも2か月も掛かる街のもの。見ようによっては16歳で成人したばかりっぽい容姿と低身長、自分で言っていて情けなくなってくるが一端の冒険者には見えないので受付嬢の対応も致しかたない。


 後ろから足音が二つほど聞こえ、受付嬢の目線が私の後ろに移動し顔を顰める。


「おいおい! このお嬢さんが中級冒険者だって剣は家に忘れて来ちゃったのかな?」

「馬鹿なことを言うなよ。きっと魔法使いか弓使い、いやスカウトかな」

「どっちみち杖や弓は忘れちゃたんだな。がはははは!」


 振り返れば砂トカゲの鎧を着て剣を腰に下げた戦士風の二人が私を見降ろしている。どこの冒険者ギルドにも同じような人たちはいるもので、背後では他の冒険者たちが呆れているのも目に入る。

 まぁ、私が世間知らずのお嬢さんであればここでちょっと怖い思いをして世間を知れば、今後は気を付けるだろうからちょっと様子を見ようかなとかいう雰囲気が伝わってくる。


「馬鹿なことを言っていないであっちに行ってください。貴方も‥‥」


 受付嬢が取り成してくれようとしたが私は男たちの方へ一歩進み出た。


「ちょ、ちょっと危ないわよ!」


「あれれ、もしかして俺たちの相手をしてくれるのかな?」

「お人形遊びが良いかな? それとも砂山を作るかな?」


 男の一人が右手を伸ばしてきたところで「おい!そこまでにして‥」他の冒険者から掛かった声が終わる前に伸ばした男の手を取り、スッと引き足を掛ける。

 男は「おっとと」と声を上げるが足元のバランスは崩れておりそのまま受付カウンターの腰壁に顔面から突っ込み「ぎゃ!」と悲鳴を上げた。

 受付嬢が「きゃあ!」と驚き腰を上げると同時にもう一人の男が「な、何しやがる」と両手を上げて私に覆いかぶさって来ようとする。男の左サイドに回り込むように移動すると男も向きを変えようと右足を出して回転しようとしたところで、その右足が床に着く前に身を屈めてその足を払った。

「あっ!」と声を上げたまま後ろに二歩三歩とたたらを踏んでいるので胸を人差し指でチョンと突いてあげると大きく後ろに倒れ、先にカウンターにぶつかっていた男に横に倒れ込み、こちらの男は後頭部を腰壁にぶつけて気絶した。


 静かになった周りを見渡せば冒険者の方々がポカンとした顔をしている。


「で、詳細をお伺いしたいのですが? よろしいですか」


 ちらほらと正気に戻った冒険者たちが声を上げ始める。


「すげー!なんだ今の」

「やるなー、あの嬢ちゃん」

「おいおい、一人なのか。うちのパーティに誘うか?」


 など周りが五月蠅くなって赤毛の受付嬢の後、受付のまとめ役から声が掛かる。


「こ、こちらの個室へ案内して」


 やっと再起動した赤毛の受付嬢の案内で個室に移動する時に、先ほど止める声を掛けてくれた冒険者に軽く頭を下げると、あちらも手を振ってくれた。


挿絵(By みてみん)











更新頻度は不定期です。

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