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二十一ノ話 「”鴉”」

向かうは情報を握る”協力者”。

正直気は進まない相手だが、仕方ない。

そこで得られた情報により、俺たちはようやく敵の姿を垣間見るのだった…。

「…ここだ」

俺がやってきたのは一軒の家の前だった。

「…何よ、ここ?」

怪訝そうな美里。

「あれ…? ここって…」

奈々美を初めとする古参メンバーはみんな”何か”に気付いたようだった。

…まあそうだろうな。なんたってここは…

「俺の家だ」

「「はぁ!?」」

俺の言葉に素っ頓狂な声を上げる美里と亮。

…ていうか俺も帰って来たの久しぶりなんだけどさ。

「と、いうことは…?」

この場所から全てを悟った晃は嫌な笑みを浮かべる。

「…ご名答だ。でもその笑顔はすっごいムカつくな」

「いえいえ、心から同情しますよ?」

…心にもないことを。

「ここが篠原の家って事は…篠原の身内なの?」

流石に美里は察しがいいようだ。

「…まあ。とりあえず入ろうか」

…自分の家の前で足踏みしている俺はなんなんだろう…。


「…よし、じゃあ行くぞ?」

まだ入ってねぇのかよ!? というツッコミは甘んじて受けよう。

「…なんでそんなに身構えてんだよ…」

何も知らない美里と亮が不思議そうに見るのも無理は無い。

俺は今、ドアの真横から手を伸ばしてドアノブに手をかけている状態なのだ。

「…開けりゃあわかるさ」

この気配…”いる”な…。

「もういいからさっさと開けなさいよ…」

流石に疲れてきたのか、美里が刺々しく言い放つ。

…ああもう、わかったよ! 開けるよ! 開けますとも!!

「…せ~…───」

俺は意を決すると…

「───の───」

ドアノブを捻って、扉を開…”こうとした”。

なんで未遂なんだって? そりゃあお前…

「俊樹ぃ~~~~!!」

バダン!!

「いってぇ!!??」

突然叫び声と共に勢い良く扉が開け放たれたかと思うと、扉の横にいた俺はそのまま扉に衝突。思いっきり開かれた扉と背後の壁に挟まれる。

そして、その叫び声の主というと…

「ずっと会いたかったんだからぁ~~!」

「え? ちょ、ちょっと待っ…ぐぶっ…!?」

むぎゅぅぅぅぅぅ…

俺と勘違いしたのか、扉の前にいた亮に思いっきり抱きついていた…。

…なるほど、もし俺が普通に扉を開けようとしてたらああなってたわけか。

んで、不運にも俺の身代わりとなった亮はというと…

「ぐ…ぐふ…。ちょ…胸が…苦し…」

多分”大きい部類”に属されるであろう”女性特有の膨らみ”に顔を挟まれて、なんとも幸せそうだった。

「役得じゃないか、亮」

俺は扉の影から出てくる。

俺の声が腕の間ではなく、後ろから聞こえたことを不思議に思ったのか、奴はこちらを振り返って

「あら? 俊樹? じゃあこっちは…?」

そっと視線を下に下げる、と…

「も…ダメ……死…」

「あ、間違えちゃった」

アハハ~と笑うと、奴はすぐに亮を解放した。

「なるほど、幸福のあまり昇天しそうだった、と?」

苦しそうに荒い息をつく亮に、晃が笑顔のまま言い放つ。

しかしまあ、あまり女性陣のウケは良くない様で

「えっと…あの…」

「…不埒」

「…最低ね…」

奈々美、霞、美里から放たれる言葉の矢。

「と…俊樹…いきなりこんな調子じゃあ…」

ウチの女性陣と仲良くなりたかった亮は、俺に救いを求めようとする。

「…ご愁傷様」

「イヤァァァァァァ!!」

残念ながら、俺にはそんな慈悲は持ち合わせちゃいなかった。

「…それで篠原、その人は?」

がっくりと項垂れて動かなくなった亮はそのままに、美里が尋ねる。

「ああ、こいつは…」

「俊樹の恋び───」

「黙れ姉貴、ていうかブラコン」

誤解を与えかねないことを口走りそうだった”姉貴”を、俺は遮って止める。

「え、姉…? お姉さん!?」

俺が”姉”と呼んだのがそれほど驚愕だったのか、美里が素っ頓狂な声を上げる。

「未来の奥さ───」

「やめんか!!」

どこまで発展させる気だこの女…。


「改めまして、俊樹の姉の篠原しのはら沙希さきです。よろしくね」

立ち話もやってられないので、俺たちはリビングに移動していた。

「奈々美ちゃんたちは久しぶりね。…そっちのお2人は?」

古参メンバーは何度かここに来ていた為、姉貴とは面識があった。

今回新たに加わったメンバーの方へと姉貴が視線を向ける。

「九条美里です」

「ふ、藤原亮といいますっ!」

「お前、緊張しすぎな」

絶賛テンパり中の亮に言ってやる。

「うぐ…」

「もう、緊張しなくてもいいのに…。…そんなに苦しかったの?」

姉貴が意地悪そうに微笑みながらわざと胸を強調する。

「なっ…!!」

エサを見つけたかのごとくアホの眼は”そこ”に釘付けになる。

で。

「えっと…その…」

「…不謹慎」

「…最低…」

再び亮を襲う言葉の矢。

「う…ぐすっ…」

半泣きになってんじゃねぇよ。

「あ、そうだ。お菓子あるわよ? 食べる?」

そんな亮もお構いなしに、姉貴は何かを持ってきた。…って

「はい。ポッキー」

そこにはグラスに大量に入れられた”ポッキー”。

こいつ…!

「おいこの野郎! ポッキーなんて俺の前で出すんじゃねぇよ!!」

俺は大声で姉貴に詰め寄る。

「あらやだ。どうしたの?」

「どうしたじゃねぇよ! 俺がポッキー嫌いだって事は知ってるだろ!!」

やっぱトッポしかねぇよ!

「アナタまたそんなこと言って…。ポッキーの方が美味しいっていつも言ってたでしょう?」

「いいや、認めないね! チョコは外より中と相場が決まっている!!」

自分でも何言ってるのかわかんなくなってきた…。

「んもう…俊樹ったら…。外とか中とかいやらしいわよ?」

姉貴は若干頬を赤らめながらそんなことを言う。

「そんな発想をするテメーの方がいやらしいわ!!」

こんなやりとりがしばらく続いた…。


「…それで、本題だが」

なんか時計の短針が1つ進んでる気がするが、見なかったことにしておこう。

俺は姉貴のグラスに無理矢理トッポもぶち込んで、それを咥えていた。

「調べはついていたのか?」

「ええ、バッチリ」

姉貴はピースをして笑顔で答える。

「え…。じゃあやっぱり篠原の言ってたのって…」

「ああ、姉貴だよ」

姉貴はこんなだが、霊能力者としてはかなりの実力者であり、”日ノ輪”でも歴戦の実力者に数えられている。

反幹部派の連中からも絶対的な信頼を得ており、あらゆる機関に通じていた。

…当然ながら幹部連中と幹部派の連中からはいいように思われてはいなかったが。

「これが資料よ」

姉貴はそう言って書類を俺に手渡した。

「…」

軽くそれに目を通す。

他の連中は、俺の次の言葉を伺っていた。

「…”鴉”。ねぇ…」

俺は一言だけ、そう呟いた。

「”鴉”…。組織名ですか?」

「ああ。思ったとおり大規模な組織らしいな。結構”ひっそりと””派手に”やってくれてるらしい」

晃の問いに、俺は資料を見ながら答える。

この”鴉”の活動報告を見る限り、かなり前から動いているらしい。

最初に活動が確認されたのも数十年前だ。

「…”ひっそりと””派手に”…というと、先日のような?」

霞がしばらく考えた後、聞いてくる。

「それも然り、だな。とにかく影みたいに目立たなくしてるらしいから、いつも後手に回ってるみたいだな」

報告書に目を通してみるが、どれも手遅れだったり、余裕で逃げられたりと、そんな報告ばかりだった。

「組織の規模も、目的も、まだよくわかってないらしいわ」

「ふむ…。…ん?」

姉貴の言葉を聞いていると、ふと資料の中に気になる報告書を見つけた。

「数年前に一度大規模な戦いがあったらしいな。幹部は全員逃がして、部下は拘束後に全員自害しちまったらしいけどさ」

そのことを姉貴に尋ねると、姉貴は少し目を逸らして

「…みたいね。アタシはその時別任務に就いていたから、どんなものかはわからないけれど…」

「…?」

なんか姉貴の様子がおかしいな…。

気になったが、どうせ聞いても教えてくれないだろうから、俺は何も聞かなかった。

「また…あんなふうに襲われるんでしょうか…?」

奈々美が不安そうに呟く。

どちらかというと非戦闘員で、揉め事が苦手な奈々美には先日の件が相当怖かったのだろう。

妖魔はともかく同じ人間相手に戦うのは、心境も何もかもが違いすぎる。

俺は他にも目を通してみたが、それ以外には特に手がかりになりそうな情報は無かった。

(”鴉”…か…)

その名前に妙な引っ掛かりを覚えたが、それが何かはわからなかった。

「まぁ、現時点じゃこんなもんか」

俺は一息つくと、机の上に資料を置いた。

「あ、お礼はデートで…」

「するかアホ」

こいつなりに緊張を解そうとしているのはわかるが、俺をネタにするんじゃねぇ。




「これからどうするの?」

用件も終わり、なぜかみんなそのまま俺の家で思い思いに過ごしていた時、美里が尋ねてきた。

「どうしたこもうしたも…俺たちは今までどおりに過ごすだけだろ」

何も進展がない以上、俺たちがどうこうできるわけでもない。

「俺たちが今できることっつったら、またああいう不測の事態に対応するためにも己を鍛えておくことくらいだろうが」

俺はそう言うと、美里の肩に手を置いて、あっちで女性陣にからかわれている亮の方に視線を移し

「今まで以上にお前らの力も必要になってくる。…頼むぜ」

いつもより真剣な俺の態度に、美里はただはっきりと頷くのだった。

ちょっとしたお知らせです。

実はここから先の展開がまだ曖昧で上手く練れておりません…。

これは完全に半端で進めた私のミスなのですが、勝手ながらこちらの更新を少し緩やかにして、別に考えてあった作品と並行更新しようかと思っております。


こちらの方もアイデアがまとまり次第、少しずつ進めていくので、ご了承下さい。

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