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九ノ話   「笑ミ浮カベシ者」

今日も今日とてサボる晃。

客が来てもいちいち呼びに行かなきゃいけないからイヤなんだよ…くそ。

でも、そんな風にサボる晃の真意をなんとなく察してしまっている俺は無理矢理どうこうするつもりも無かったりするのだった…。

「…ハァッ…!ハァッ…!」

息が荒いのは断じて俺が変態だからではない。

俺はもはや恒例行事となったこの作業に半ばうんざりしているのである。

「…7箇所目…ハズレ…」

ここもハズレかよ…。自信があったのと、疲労とで俺はその場にへたり込む。

あ~…今日も空が青いなぁ…。

窓から見える景色は、いつもと何一つ変わらぬ晴天だった…。


「いやがった…」

俺が”奴”を発見したのはいつぞやの廃墟と化した神社の隅。

・・・野郎、さっそく実行か。

俺がものすごい殺気を込めて睨んでいると、ソイツはのんびりとした調子でこちらに気付き───

「あ、こんにちは。俊樹君も昼寝ですか?」

なんてことを言いやがった…!

───その後、何かが切れる音とともに俺の叫び声が木霊したのは言うまでもない…。




…今から数時間前。なんか一人足りない依頼部室でのこと。

「…暇ね…」

それぞれ思い思いのことをして放課後を過ごしていた中、美里が呟いた。

「仕様です」

俺は机に突っ伏したまま答え

「美里、依頼部に客なんて2.3ヶ月に1回が関の山なんだから暇なのは慣れておけよ?」

そんなことを言ってみる。…言ってて悲しくなってきた。

実際、この依頼部が非公式で生徒の中には噂程度の広まりしかない以上、客なんて数えるくらいしかないのは事実だった。

そんな俺に、美里は呆れたように

「…ならなんで貴方たちはここにいるのよ?」

なんでかって? 決まってるじゃないか!

「「「暇だから」です」」

俺、奈々美、霞の声が見事に重なって響く。

…暇だからここに来て暇になってるって結局どうなんだろう…。

そんなくだらないことを考えていた…。

なんやかんやで前の依頼から既に1ヶ月ちょっと。依頼はまったく来ていない。

桜が散りきったのを見ると、もう春も終わりに差し掛かっていた。

「「「「…暇…」」」」

全員の声が部室に、校舎に木霊する。 …え? なんか一人足りないって? 晃ならサボってるよ、別に仕事もないんだから好きにさせてやるよもう。今日は俺は眠いんだぁ。

俺が再度惰眠を貪ろうとしたところで…

ガラララララ…。

「失礼しまーす」

聞きなれない声が入り口のほうから聞こえたのだった…。


久々の客だった、俺たちにとってそれは神の祝福とも言える。…いや、なんか言い方がおかしいが。

俺たちはその声を聞くないなや神速のごとき速さで姿勢を正し、美里は部室に入ってきた生徒の元へ、奈々美は即座にお茶を淹れに行った。

唯一動じなかったのは霞ぐらいである。

「ようこそ、依頼部へ!」

日々の疲れも吹き飛ぶような100万カラットの笑顔で挨拶をする美里。

この時、女って怖いと改めて実感したのは秘密である。

「え、あの…?」

流石にその不自然すぎる笑顔に、女子生徒は固まってしまう。

「あの、もしよかったらお茶でもどうぞ!」

そんな様子を悟ったのか、奈々美が手際よくお茶を用意していた。

…お前、よく転ばなかったな。

「ホラ、篠原! お茶菓子とか無いの!? お客さんよ!」

「トッポしかありません」

あ…、前買い置きしてたのが適当に残ってたっけか。

そんなこんなでやたらやる気になってる美里と奈々美に半ば強引にその女子生徒は引きずり込まれたのであった…。




 …で。お客ということで、どこかでサボってる晃を探すことになったのだった。

当然ながら俺はみんなにも手伝うように呼びかけた。奴の行動範囲(サボり場所)はあまりにも広い。この学校内でも骨が折れるというのにもし校外だったら…と言ってみた、のだが…。

「私はまだ久藤君のことよく知らないし」

「私はお客さんの接待がありますし」

「…晃さんの隠れ場所なら、部長が一番よく知ってると思いますが」

と、一蹴。

お前ら、間違ってる。”サボり場所の予想がつくぐらい何度も探し回ってる今の状況がおかしい”んだ。これじゃあまるで晃がサボるのは至極当然のことみたいじゃないか。

このままでは晃=サボり魔の方程式が出来上がってしまう。

お兄さんは優しいからそんなのは許しませんよ!

「…ハッ!」

なんかわけのわからない方向に思考が行ってしまったが、とにもかくにもこうやって晃は見つけた。

で、今はコイツを学校まで引きずってるわけである。

「まったく、俊樹君もご苦労なことですね。わざわざここまで僕を探しにくるなんて」

白々しくも晃はそんなことを口にする。

「うるせぇよアホ。誰のせいでここまで来たと思ってる」

「アハハハハハ。では、お互い様ですね」

コイツ…絶対楽しんでやがる。

まあ…実際コイツのこんな態度も慣れてしまった。

…慣れるのもどうかと思うが。

「…」

俺はふと、晃の左手に握られた刀に視線を向ける。

これを見ると、晃とはじめて会ったときのことを思い出す。そして、彼がなぜこうもサボるのかもなんとなくわかるのだ。

「…大丈夫ですよ? これは僕の問題ですから」

「…思考を読むな」

コイツもよく俺を見透かしてくる。まあそれはお互い様なのだが。

晃は珍しく、何かに思いを馳せるように呟く。

「…みなさんには本当に感謝しています。僕はここに来てよかった。だから、俊樹君もそう思い悩まないでください」

自分は後悔していない。今、この場所が自分にとっての”居場所”なのだと…───。

晃の言葉は、穏やかな風の中に溶けていった…。




「親友が行方不明、ねぇ…」

そんなこんなで晃を部室へと無事連れ戻し、改めて俺たちは依頼人である女子生徒の話を聞いていた。

簡単に要約するとこうだ。

彼女には仲のいい親友がいて、その親友が2日前から行方不明、と。

何日も出歩くような娘でもなく、ましてや両親にも連絡も無く突然消えたので不審に思ったらしい。

警察には届け出たがそんなすぐに成果が出るわけも無く、藁にもすがる思いでここを訪れたそうだ。

こんなところにまで頼るあたり、相当切羽詰ってるのだろう。

「…わかった。引き受けよう」

彼女がここを尋ねてきたのは幸運だったかもしれない。

俺はこの依頼に、ある”予感”を感じ取っていた。

…いや、それはほとんど確信に近い。

…今回の事件、妖魔が絡んでいる…。

他のメンバーも俺の真剣な様子に大体のことは察したらしい。

唯一それに気がついてない女子生徒は俺の言葉に安堵したのか

「あ、ありがとうございます!」

そう言って、深く頭を下げたのであった…。

みなさんお久しぶりです。

なかなかアイデアがまとまらずにプチスランプだったり学生の身分ゆえの忙しさから更新できずにいましたが、なんとか不定期ながらも更新を続けていこうと思っています。

なかなか更新できませんが、気長に見ていただきたく思います。

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