誕生日
今月は私の誕生日だ。とっても憂鬱だ。この歳になると誕生日なんて嬉しくなかったし、キャバクラやってた時は命懸けだったからなあ。
あの頃の誕生日は、こうきが誕生日プレゼント用意してなくて一緒に買いに行ったけ。あの時もらった香水とっても甘ったるい今だと古い匂いだけど大事な日にはつけて願掛けみたいになってたんだよね。
あれ、たくまからは何をもらったんだろう。
4人で誕生日会楽しかったんだよなあ。懐かしいまた繰り返しなんだけどね。
「あとちょっとでゆりの誕生日なんだけど、誕生日会するよこうきの家で!」
「は!俺っちなのかよ。うみっちでいいじゃんか」
「私のうちは弟たちがいるからうるさいでしょ」
「まあまあ、いいじゃないか。こうきかわいいかわいいゆりちゃんのためだぞ」
「まぁいいけどさあ。お前ら何あげるの?」
「当日のお楽しみでーす!」
「かわいいゆりちゃんってところ無視するなよ」
「めんどっ」
「英語の小テスト難しすぎでしょ」
一応私人生2周目だよね?こんなに覚えてないことってあるの?
誕生日プレゼント何もらおっかなあ。うみはセンスがいいからいいとして、たくまにはそれとなく欲しいもの言っておこう。
「そーいえば、ゆり林間合宿の時はありがとね」
「んー?なにがー?」
「庇ってくれたでしょ。ゆりはそう言うこと言わない性格だったじゃん。だから私がしっかりしないととか思ってたんだけど、最近変わったよね」
「変わってなんかないよ。でも考えて動くようになったのかな。いつもうみに頼ってばっかじゃいられないしね」
「ゆりが巣立っちゃうみたいで私は寂しいよ〜。
最近こうきとはどうなの?」
この言葉に私はなにかが引っかかった。重たい何かが。
「もちろん、何にもないのだよ」
「ドヤるな」
あの頃の自分はくだらないことで悩んで笑って本当に楽しかったんだな。
「うみ、本当にいつもありがとうね」
「急にどうしたの」
私の真剣な顔を見て少し驚いた顔でうみは
「こちらこそだよ。ゆり誕生日あけときなさいよ〜」
「もちろん!楽しみにしてるぞ!」
「なんだそれ!」
こういう何気ない日常がいつまでも続けばいいのにね。
「「ゆり、誕生日おめでとう!!」」
クラッカーと共にケーキが出された。
「みんなありがとう」
なんか照れくさくて不思議な気持ちになった。
「恥ずかしいがらなくてもいいんだよ〜ゆりちゃん」
「恥ずかしがってないもん!嬉しいの」
そういい少しこうきの小指に触れた。
あ、やばい気まずい。でも男の子はこういうの好きなのよ。作戦のうちだよ。
そうするとこうきがトントンと、指を軽く叩いた。
「なんですか」
こうきの顔を覗き込むように顔をむすっとさせた。
「べつに。おめでと」
「ん。ありがとう」
たわいものない話で盛り上がって楽しい時間だった。
「ん、俺からプレゼントやる」
たくまが渡したメッセージカードサイズの紙が3枚。
「なんでもいうこと聞く券?」
「それ俺に渡したらなんでも聞いてやるよ」
「なにそれ!!」
「たくまやることかわいいじゃん〜私からは、リップとお揃いのヘアオイル、同じ匂いだよ!」
「小学生かよ俺からは何がいいかわからなかったので、一緒に買いに行きましょう」
あの頃と同じだ。すごく嬉しくて、楽しくて幸せな気持ちになった。
「本当にみんなありがとうだよ。こうき絶対いいもの買わせてやるからね!!」
「おーい勘弁してくれよ」
そうみんなで笑い合っていると、
「そーいえば、重大発表があります!私、付き合うことになりました」
そういううみの顔がとても嬉しそうだった。
横にいるこうきの顔を見ると悲しそうな上手く笑えていない顔で、
「よかったじゃん」
こうきのその顔をみて少し嬉しくなってしまった自分がいた。
「お待たせ〜」
「ゆり遅すぎだろ」
「たった15分でしょ。さあ私の誕生日プレゼントを買いに行きましょう!」
「そおだな。何が欲しいの?」
「ずっと考えてたけど香水かなあ、私っぽい匂い選んでよ!」
「むずかしそうだなあ」
誕生日会の日からずっと考えていた。こうきのあの顔をみて喜んでしまった罪悪感が拭えなかった。あの頃と同じことをしないといけない気がした。
「色々ありすぎるなあ」
「ほんとだね」
「あ!これにしよう」
「リリィ?」
「そう!ゆりは英語でリリーじゃん」
こうきが笑ってこっちをみた。
「じゃあ、それにする!!」
2人で歩いて帰りながら
「今日はありがとうね。そうだ少し寄り道しない?」
「おー。いいぞ。じゃあ少し公園行くか」
「すごーい聞きにくいんだけど、うみさんつきあったじゃん?もしかしてだけどうみのこと好きだった?」
「おい、唐突だな。そうだな、でも少し違うかもなんだよね。」
「え、どういうこと?」
少し悪そうな顔をしてニヤけながら
「どうでしょうね?」
「実は私のことも気になってたり??」
ふざけて言った言葉にこうきは、口を少し隠して照れて少し怒った顔で私の頬を摘んだ。
「ばかじゃねーの。そんな恥ずかしいこと言うな!」
この時気がついてしまった。この人は私に気があると、それを知って私の気持ちが複雑になったことも。
「こうきはどうしたいの?」
「どうしたいもないでしょ、おれはうみを応援したいし、何かあった時助けたい。うみだけじゃなくて、ゆりのこともたくまのこともだなあ」
「かっこつきますなあ。私は、自分がよくわかんないんだよね〜でも、私もこうきとおんなじ気持ちみんなが大事ずっと仲良くいたい」
あの頃の私もおんなじこと思ってたはずなのに、周りが見えなくてずっとうみが羨ましくてみにくかった気がするな。
「俺も自分がわかんないよ。でもやっぱおれはさ。ゆりもたくまもうみもみんな幸せになればいいと思ってるんだよ。でも恋愛って誰も悪くないから辛いんだよな。」
「おんなじようなこと2回も言ってるよ!」
心の中で私もだよ。と答えた。
「さあ、帰ろうか」