同族嫌悪
「林間合宿!!」
黒板に書かれた文字を見て、学校ぽっい!!
いつのまにか忘れてしまった行事だぁ。
楽しかったな。と目をキラキラ輝かせた。
4人の班を作って2泊3日の合宿だった。
「ゆり、楽しみすぎてはしゃぎすぎんなよ」
「そんなことしません。とってもいい子にしますー。たくまこそどうなんですか」
「はぁ?いつもお前をなだめてる側なんだよ」
そんな言い合いを横目に
「今日も平和ですなぁ」
「ほんとだねぇ」
「「老夫婦か!!」」
たくまと声がハモってしまった。
「お前らも仲良しじゃねーか」
やばい。我ながら楽しみすぎて寝れなかった。
あくびをしながら山で薪拾いをしていると、
クラスの女子数人が話しているのを耳にした。
「うみちゃんって絶対男好きだよね」
「それ、わかる」
嫌なことを聞いた。
確かにうみは、可愛くて男の子に人気ではあった。明るくて誤解されやすい性格でもある。
「ねぇ、それって僻みだよね」
つい口走っていた。悪口で盛り上がっていた女子が、私を睨み走って行った。
うわぁ。やっちゃった。ヒエラルキーすごいことになっちゃうじゃん。考えて行動するべきだった。
「かっこいいじゃん」
木の枝で頭を軽く叩かれた。
「イタッ」振り向くとこうきが立っていた。
「それ、褒めてる?」
「褒めてる。そーゆうとこが好きだな」
えっまって好きだって。こーゆう期待させるようなやつだった。この人。あの頃の私一喜一憂してたなあ。
「そんなこと言っちゃうと私勘違いしちゃうけどいいの?」
こーやっていうと大体の男の人は逆に気になっちゃうのよ。さぁ、意識するんだ。あの時とは一味違うのよ。
「お前、大丈夫か?」
少し馬鹿にするような笑いをして歩いて行ってしまった。
ん?思ってたのと違うなあ。
「なぁ、ゆり少し大人っぽくなったよな」
「盗み聞きしてたのか」
「こうきはさ、ゆりの気持ち気づいてるんだろ」
「そんなの本人から聞いてないからわからん」
「じゃあさ、俺とゆりが付き合っても文句ないよね」
こうきの顔が少し険しくなり
「たくまそーゆうの面白くないぞ」
たくまがそんなこと言うなんて思っていなくて、あの時俺は冗談半分で茶化されたと思っていた。
「はぁ眠たい」
「流石に朝早すぎだよね」
「本当だよ7時からご飯だよ?ヘアセットもあるのに」
「ゆり前まで髪型とかあんまり気にしなかったのに最近洒落てるよね」
確かに、あの頃の私はただの元気っ子みたいな感じだったんだよな。
あんまり覚えてないけど。とあくびをしながら
歩いていると、
「ポニーテールかわいいじゃん」
といいたくまが髪を撫でた。いつも見せない表情でわたしの顔が赤らんだ。
「同族嫌悪」
たくまとわたしは似てるんだ。たくまは相手をその気にさせるのが上手で期待させるタイプだ。たくまは何を考えているか分からなくて、ちょっぴり嫌悪感すらあった。わたしみたいで嫌だった。でもそれ以上に心地が良いこともあった。わたしがわたしに1番嫌悪感を抱いている。
「ちょっとそれ悪口じゃん!」
「違う褒めてるの」
2人で笑いながら山頂へ走った。
「完全に忘れられてるね私たち」
「確かにな」
「なーに?その顔、拗ねてるみたい」
「別に」
まてまて、わたしの目標はこうきを振り向かせることなのに…
「こうき、何か怒ってるの?」
「別に」
すごい拗ねてる、と言うか冷たい。わたしに何かしたっけ。
「誰にでもあんな顔見せるんだな」
顔を逸らしながらそう言った顔が少し拗ねていて恥ずかしそうだった。少し気まずくなってわたしは下を向いてこうきの服の袖を軽く引っ張った。
「そんなことない…かもです」
そう言うわたしに大きい声で笑った。
「ゆりって大人っぽかったり子供ぽかったり最近不思議だな」
そう言うこうきに私はこの人のこと好きだなあとまた思ってしまった。
帰りのバスの中隣に座ったこうきの寝顔を窓越しに見て私は少し頬が緩んでしまった。
それに気づいたこうきが私の肩に頭を置いた。
「盗み見してんじゃねぇ」
「バレた?気持ちよさそうな顔だったから見惚れちゃった」
「はいはい」といいまた眠りにつく顔を見てこう言うのも悪くないもんだねとおもった。