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ピクトの大冒険 〜扉の先は異世界でした〜  作者: ジルコ
第2章 異世界の街へ

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第16話 探し物

投稿が途切れてしまい申し訳ありませんでした。

 液体に満たされたカプセルの中で揺られ眠っている女たちの姿を眺めながら俺は発音の練習をしながら時間を潰していた。


「いつになったら起きるんだろうな?」


 ゴブリンに捕らわれ、耐えがたい体験したのであろう女たちは当初、薄汚れてやせ細り、悲惨という表現しか思いつかないような状態だった。

 だがカプセルの中で眠っているうちに少しずつ改善されていき、今では外見だけ見れば健康といっても過言ではない状態になっていた。

 だが目を覚ますことはない。


「肉体的に治っても心の傷が深そうだしなぁ。子供もいつの間にか消えてたし、こいつもよくわかんねえよな」


 こんこんっとカプセルを軽く叩くがもちろん中の女は反応などしない。

 カプセルに入ったとき、2人の女はお腹が大きい状態だった。しかし今カプセルの中でぷかぷかと浮かんでいる女たちはすっきりとしたお腹をしており妊娠している様子はない。


 液体の中で産まれたのかと思ったのだが、カプセルの中には女たち以外になにもないのだ。

 俺が見ていないうちにどこかに運ばれていったのかと思ったが病院内のどこを探してもいなかったし。

 やっぱり液体に溶けて……


「あー、やめやめ。この想像は怖すぎるからやめるって決めただろ」


 幾度となく浮かんではくるものの、考えれば考えるほど恐ろしい推測が導き出された結果、俺はこれ以上考えるのをやめたんだ。

 どうやっても現状で俺にそれを知る方法はないし、いつかわかる日がくるまで考えないほうが精神的に楽だしな。


「まあ起きたら起きたで問題はあるわけだが、そっちはどうするかなぁ」


 もし女たちが起きたらきっと混乱して取り乱すだろうから説明が必要だし、今後の身の振り方を考えてやる必要もある。

 もちろん相手も人間なんだからそれを望まない可能性もあるが、だとしてもぼろぼろの服のまま放り出すなんてことはできないだろう。


 おせっかいというわけではないが、縁あって保護したんだから幸せになってもらいたいと考えるのは自然なことだ。

 つらい目にあったんだし余計にな。

 まあそこまで立ち直るのにすごく時間がかかるかもしれないが、できる限りのことはしてやりたいとは思っている。


 そんなことを考えている俺の目の前で、音をたてずに扉が開いていく。

 そこからひょこっと顔を出したソフィアが、俺を手招いた。


「ピクト、ミアがそろそろ行くって」

「わかった。後は頼むな」


 女たちを治療してくれているカプセルたちにそう言い残し、俺は扉の外へ出ていく。

 当然ながら返事などあるはずがなく、生きていることを示すバイタルだけが規則正しく波形を繰り返していた。





 扉を出た俺たちはミアの先導で森を歩いていた。相変わらず俺には見分けがつかないのだが、ミアは迷うことなく進んでいく。


「なあミア。森の中で道なんてどうやって覚えるんだ?」

「んっ? どういうことだ?」

「いや、よく迷わないなって」

「ああ、そういうことか」


 俺の聞き方が悪かったのか最初はピンときていなかったミアだが、改めて聞き返したことで理解できたのか小さく笑う。

 そしてその尻尾を軽く左右に揺らしながら言葉を続けた。


「昔いたところにエルフがいてな。そいつに森の歩き方を教えてもらったんだ」

「へー、コツ的なものか? 後学のために聞いておきたいんだが」

「そんなに難しい話じゃないぞ。森に入った位置を覚えておくことと、そこを基準にして今自分がどこにいるのか常に考えておく。これが基本だ」

「頭の中で地図を作っていくってことか?」

「それに近いな」


 少し考え、頷き返したミアは続けて話を続ける。

 歩く時の視線の置き方、木の生え方、傾き、苔のつきかたなど様々な情報があったが、それらは全て自らのいる位置を知るための手段なのだそうだ。

 そこから頭の中の地図で今いる位置を補正し、現実とのずれを少なくしていく。そうすればおおよそ元の場所に戻ることができるらしい。

 うん、考え方は理解した。


「うーん」


 ミアの話を聞いた場所から歩いていた道のりをイメージして頭に思い描いていたんだが、障害物ばかりの森でまっすぐ歩くことは至難の業だ。

 必然的にじぐざぐに歩くことになるんだが、そうなるとこれ難しくねえか?

 そもそも数時間くらいならなんとかなるかもしれないが、深い森を何日も歩いていたらどんだけ位置を確認していても迷う気がする。


「うーん、やっぱスライム式が最強な気がするな」

「スライム式ってなに?」

「いや、俺が編み出したスライムを使った森の歩き方なんだがな……」


 興味を示したソフィアに、俺が崖の上であみだしたスライムを使った歩き方を教えていく。

 最初は笑いながら聞いていたソフィアだったが、俺が説明を続けるにしたがってその表情が真剣なものに変わっていった。

 そして俺が説明を終えると、ソフィアはミアのほうを向いて首を傾げる。


「ミア、知ってる?」

「いや、知らないな。そもそもスライムをそんな風に使おうと思ったことなどなかった。モンスターは倒すものだからな」

「まあ確かにそうなんだろうが、でも性質を調べたりするのって面白いだろ?」


 同意が得られると思って聞き返したのだが、2人ともどこか微妙な顔をするだけだった。

 命のやり取りとか余裕のない場合ならわからなくもないが、不可思議な生態をした生き物がいたら観察したくなるだろ。

 ああ、違うか。俺にとって不可思議でも2人にとっては普通にいる生き物だもんな。


 ミアに言葉が正にそれを表している。

 この世界の人間にとってモンスターは『倒すもの』なのだ。もちろん研究は行われているんだろうが、それはあくまで倒す役に立つ情報を得る目的でしかないのだ。

 突けば倒せるスライムのようなモンスターについて、その性質について調べようなんて考えるのはどこか変わった奴、まあこの世界にいるかはわからないが研究者くらいだろう。


「私はあまり面白みはわからないが、この発見はすごいな。例えば森の外の地面に魔石を埋めて円形の容器にスライムの体を入れておけば、帰り道がわかるということだろう?」

「そうだな。その場合はスライムが向かっている方向に進んでやればいいだけだし」

「売る、のは無理だね。すぐ真似されるだけだし」

「まあ物を見りゃ、わかる奴にはすぐわかるだろうしな」


 なにせこれはモンスターの特性を利用しただけのもので、特殊な技術なんか必要のないものなんだ。

 入れ物を工夫するなどしてわかりにくくすることはできるだろうが、それが金になるとわかったら分解する奴は出てくるだろうし。


「ソフィア。『特許』ってあるのか?」

「うーん、たぶんないと思う。技術や発想に権利をつけて利用したい人からお金をとるなんて私は聞いたことがないよ。商人や職人の世界にそこまで詳しいわけじゃあないから何とも言えないけれど」

「私もないな。考えとしてそれは面白いと思うが、少なくとも国家クラスか、商人ギルドのような広域な影響力を持つ組織が関わらなければ成り立たないだろう」

「となると金にするのは無理だな」

「だが、恩を売ることならできるかもしれない」


 前を歩いていたミアがこちらを振り返りニヤリと笑みを浮かべる。

 恩? 誰に? と考える俺に、ミアは自分を指差してみせた。

 なんで森の中で位置のわかるミアが助かるんだ? いや確かに楽にはなるだろうが。そんな風に不思議に思っていると、俺の姿を見てくすくすとミアが笑う。


「恩を売るのは冒険者ギルドにだ。これがあれば森に入る冒険者たちの助けになるだろう?」

「まあそうだが……でも冒険者って森に入ってるよな?」

「ああ。だがあくまで冒険者たちが入るのは自身が探索できる範囲の話だ。これがあればより範囲を広げることができる。そうなれば素材の入手が増えるだろう。まあ森に特化してこれまで稼いでいた者からすれば反発は起きるだろうが、ギルドとしては全体量が増えるほうが利益はあるからな」

「世知辛いねぇ」


 俺の言いようが面白かったのか、ソフィアが少し噴き出す。

 たしかにスライムの体の部分をいくつかに分解すれば、1匹のスライムだけで数人の冒険者たちの帰路を示すことができる。

 崖の上ほどではないがこの森でもスライムは探せば見つかるし、案外悪くないアイディアのような気がするな。

 冒険者ギルドに恩は売っておいて損はないだろうし、本当にそうしてみるか?


「なあ、ミア。どうせなら……」

「ちょっと待て。見つけた」

「おっ、いたか!?」


 俺の言葉を止めたミアが前方を指差す。その視線の先では、少し盛り上がった土がゆっくりとうごめいていた。

4月から異動になりかなり忙しい部署に配属になってしまったため更新が途絶えてしまいました。

申し訳ありません。


しばらくは更新が不定期になる可能性がありますが、なるべく土日だけでも更新を続けていこうと思いますので気長にお待ちいただけると幸いです。


落ち着いたら毎日更新に戻せる……といいなぁ。

とりあえず頑張ります。

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