596 見せ塩輸送隊襲われる (上)
翌朝、朝食は屋敷に行って食べた。美味しいよ。
ジェナとチルドレン、熱帯号、雪原号はどこかに遊びに行った。観察ちゃんがついているだろう。
エリザベスさんとイサベルさん、オリメさん、アヤメさんは工房に行っている。ちょっと手伝ってやろう。
行ってみる。
建物が手抜きで脆弱だ。建物を持ち上げて床下の地盤から改良して、建物も修理、補強した。安全だ。
図面が完成していたから工房部分をさっさと改修した。店舗の部分は地元の大工さんに任せよう。建物全体を補強したから店舗部分も丈夫だ。内装をいじってもらっても建物自体はびくともしないぞ。
ジゼルさんと支店長さんが棟梁さんを連れてきた。
「工房の方は僕が改修しました」
棟梁さんはびっくりしている。
「これは、すごい。内装もそうだが建物も堅牢になったようだ。この建物は少し何かあれば倒れるかもしれないと前を通るたびに思っていたが、これはすごい。外見は見た目は同じだが全く違う。俺たちにはできない。新築で作ってもこれまでのものは出来ない」
なかなかの棟梁さんだ。
「店舗の部分の改修はお願いします」
「わかった。一生懸命やらせてもらう。若い奴に工房を見させたいがいいかい?」
「どうぞ。午前中ならいいですよ。午後から仕事の準備を始めます」
オリメさんが頷いている。それでいいらしい。
「承知」
棟梁さんはすぐ出て行った。しばらくして弟子を引き連れてきた。まだ今日の仕事には行ってなかったらしい。
「みんな、よく見ろ。そして研究しろ。どうやっても近づけないかもしれないが一歩でも近づけるように考えろ」
「触っていいかね」
「どうぞ。叩いてもいいですよ」
あちこち触ったり叩いたりのぞいたりしている。放っておこう。
オリメさんは宿舎のホールで新採用の10人を集めて講義を始めた。目を輝かして聞いている。テーブルと椅子を出してやろう。
実技まではなかなかいかないようだ。素人相手だからね。頑張ってもらおう。
昼食は二百人衆の縫い子さんと10人で屋敷から運んで宿舎のホールで食べたようだ。
僕らは屋敷だ。
ジェナたちはちゃんと昼食前に帰ってきた。食いしん坊だから忘れない。
昼食後ジェナたちは昼寝。
観察ちゃんから連絡が入る。見せ塩輸送隊の前方に襲撃者あり、30人はいるそうだ。
ふうん。商業組合から情報が漏れているね。護衛10人の三倍揃えたね。護衛の他は商業組合の組合長と組合員兼御者だから彼らは戦力にはならないだろう。30人対10人だな。
何人か倒れても目的を絶対果たすとの意気込みだ。装備も良いし、士気は高い。やはり盗賊ではないな。
目的はなんだろうね。単純に塩が欲しい。または遠国の塩商人とつるんでいるとかだな。
ティランママとティランサンにバトルホースに乗ってもらって、荷馬車と賊の前後に陣取ってもらおう。偉そうなのは二、三人生捕りだ。頼んだ。
ティランママとティランサンはすぐ神国に転移、二百人衆が用意したバトルホースに乗って配置についた。ティランママは荷馬車の後ろだ。
少し護衛のお手並みを拝見してから行ってもらおう。楽しいなあ。
「おとたん。何か楽しんでいる」
いけない。ジェナが起きてしまった。
「盗賊が出ただけだよ。チルドレンと寝てな」
「ふううん」
信用してないな。
「眠いだろう」
「十分寝た」
「チルドレンは寝てるだろう」
「大丈夫。ムジンボーケンと囁けばすぐ起きる」
「ティランママとティランサンを派遣済みだから」
『シン様。シン様。遠くで首尾を確認している男が3人いるよ』
ちょうどいい。
「それじゃあ、遠くで見張っている男たちを捕まえてくれるかい?生捕りだよ。多少怪我があってもいいけど。ティランママとティランサンの仕事が終わってからだよ」
「わかったー」
すぐ部屋に走り込んだ。
「ムジンボーケン隊、出動だー」
チルドレンは、ほんとに起きたよ。目はぱっちりだ。やる気満々。
「こら、熱帯号、雪原号、起きろ。緊急出動だ」
慌てて起きる熱帯号と雪原号。緊急出動モードになった。つまり大きくなった。
ジェナとチルドレンを乗せて、転移して行った。場所?観察ちゃんが一緒に行った。
さて、僕らも行こう。
あれ、みんな行くの?
オリメさんとアヤメさんは残念そうな顔をしている。今日は指導が忙しいからね。
マリアさんがすぐオリメさんとアヤメさんを除いて出てくると侍女さんに伝えに行ってくれた。細かい話はしない方がいいだろう。
ブランコにエスポーサが、リンにステファニーさんとマリアさん、僕とアカはバトルホース。エリザベスさん、イサベルさんも行く気満々。しょうがないバトルホース。あれ、一頭余ってしまう。それじゃあ僕とアカが分かれて一頭ずつ。ドラちゃん、ドラニちゃんが僕たちの周りに浮いている。スパ棟前からティランママの後方に転移した。
ジェナたちも布陣完了だ。
能天気な襲撃者たち、絶対勝てると踏んでいる。装備はいいから、これは楽しいぞ。




