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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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583 旅を再開し、ワインの行商人に出会う

 朝。朝食後お狐さんは帰って行った。

 旅を再開しよう。


 僕とアカ、マリアさん、ジェナ、アーダ、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃん、ドラニちゃん、リン、観察ちゃんで泉の広場から出発だ。二百人衆が見送ってくれる。


 観察ちゃんがこっちこっちというから、転移。

 クエンヴェル王国のはずれだ。少し歩くと国境だ。平地にポツンと国境警備所がある。人はいない。確か見回りだけだと言っていたな。隣の国の国境警備所にも人はいない。何事もなく通過だ。


 誰もいないから転移と徒歩を組み合わせて先に進む。本当に誰もいない。

 あ、先の方に人を発見。もちろん僕らは歩いて行く。


 荷馬車に乗った行商人のようだ。護衛もいる。行商人二人、護衛三人、全部で五人だ。僕たちのいる方、つまりクエンヴェル王国方面に行くらしい。


「こんにちは」

「おう。珍しいな。人が歩いている。どこから来たんか?」

「クエンヴェル王国です」

「そうか。話を聞かせてくれんか」

「いいですよ。休みましょう」


 荷馬車を止めて、護衛の人が馬を荷馬車から外して草のある方に連れて行った。

 僕らはシートを出しておやつだ。

 行商人さんは初老の人だ。こっちにやってきた。


「お茶をどうぞ」

「これはすまないな」


「行商人さんは何を商っているのですか」

「ワインだよ」

「へえ。ワインだけ」

「そうだ。年代もののワインだけだ。ワインは重い。日常飲むのは消費地の近くで作ったワインだ。俺たちテラーサス王国のは高級品だ。時が磨き上げたワインだ。新興ワインには真似が出来ない」


「どこで売るんですか?」

「少しずつ売って来てクエンヴェル王国で大体売り切れる」


「帰りは何か仕入れるのですか」

「いや、これといった特産品はないから、そのまま帰ってくる。ワインが売れればいいのさ。昔は隊商を組んでワインを売りながらサルメウムまでいって塩を仕入れて戻って来たもんだ」


「今は行かないのですか?」

「ああ、サルメウムの手前のテッサニアが盗賊と魔物の巣になってしまって遠回りしなければならないから行かなくなった」


「塩はどうしているのです?」

「遠くの国から運ばれてくる塩を買っている。サルメウムの塩の2、3倍くらいの値段だ。足元を見られていてな。高い」


「テッサニアの盗賊と魔物は討伐されましたよ」

「本当か」

「はい。通って来ましたから」


「湖はどうなった?」

「湖の魔物も退治されていましたよ」


「そうか。湖が復活すれば俺たちも行ってもいいな。ただあそこまで行って何も仕入れないでは割が合わない。前はサルメウムまで行って塩を仕入れて帰って来た。ただ今はサルメウムも塩が枯渇しつつあると言う話だ。行っても仕入れられなければ損が生じる」


「サルメウムで新たな岩塩の鉱脈が近頃発見されたようですよ。埋蔵量も多いみたいです。間も無く生産開始となるでしょう」

「そうか。いいことを聞いた。少し足を伸ばして様子を見てみる。様子によっては次回から隊商を組んで塩を仕入れに行こう。ありがとうよ。それじゃ行ってみる」


 護衛が荷馬車に馬を繋いだ。


 行商人さんが護衛に樽を運ばせて来た。

「少しだが御礼だ」

 ワインの樽を置いて行った。


「そうそう。ヴィオレンシア帝国は滅びて、滅びの草原になっていて魔物の天下です。ただ、その草原からは魔物は外に出ません」

「そうか。悪の帝国だったからな。例の火球で滅びたか」

「はい」


「わかった。教えてくれてありがとうよ。私はホルストと言うが、お名前はなんとおっしゃいますか」

「シン」

「シン様ですか。他にいそうですね」

「ジュノ シンです」


 行商人さんは紙にサラサラと何か書いて封をした。

「もし私どもの国、テラーサス王国のロワール商会に行くことがありましたらこれを出してください。何かの役に立ちます」


 書き付けをもらってしまった。

 行商人さんは出発した。


「会長、良かったんですか?極上ワイン一樽をやって。それに紹介状まで」

「あの人は本物だ」

「ただの子供でしょう」

「護衛の皆さんはどう見た?」

「とても敵いません」

「そうだろうな。よく見た。極上ワイン一樽と紹介状など安いものだ。今にわかる。とりあえずサルメウムまで行ってみよう」

「遠いですよ」

「今までヴィオレンシア帝国のならず者と遭遇するのが嫌で離れたところを通って大回りしていたが、帝国が滅びて外に出ない魔物だらけになったのなら、元帝国の縁をまわっていける。だいぶ近くなる。テッサニアも湖あたりを迂回せざるを得なかったが、魔物も盗賊もいないのなら突っ切れる。塩が仕入れられれば足代など軽く出る。護衛の皆さんには追加料金をはずもう」

「承知しました。我々も新ルートをいち早く体験出来ればこの先護衛の仕事の売りになる。ぜひお願いしたい」

「よし。行こう」


 観察ちゃんから、さっきの行商人さんはサルメウムまで行くことにしたと報告がありました。

 なかなか冒険心があるね。観察ちゃんによれば、サルメウムでは新鉱脈から岩塩の採掘を始めたそうだから、岩塩を仕入れることが出来るだろう。


 僕らも出発だ。

 あれ、行商人さんに先の国の情報を聞いておくんだった。まあいいか。

 先に行こう。


 小さな街を幾つが過ぎるとやや大きな街がある。とりたてて何もないので串焼きを食べて通過。また小さな街をいくつか通過。

 あれ、もう国境がある。行ってみよう。

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