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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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580 侯爵の爵位継承披露パーティーを企画する

「侯爵の爵位継承披露パーティーをしなければなりませんね」

 エリザベス臨時執事長が申しております。


「はい。そうするのが慣習ですが・・・」

「大丈夫です。このエリザベス臨時執事長にお任せください。招待者名簿を作っていただければあとはやっておきます」

 へえへえ。面白いぞ。エリザベス臨時執事長。


「まずは会場ね。こういう場合は侯爵邸なのでしょうね」

「はい、そうです」


 会場予定のホールを見に行くエリザベス臨時執事長。

「少し手入れが必要だわね。すぐやりましょう」

 こちらを向くからすぐやりました。床は傷ひとつなく綺麗だ。壁もシミもなくこちらも新品同様。天井の埃もなくくすんでいた天井画もくすみなく今書き上げたような状態だ。


 ノエルさんとアンリちゃん、いやアンリ侯爵は驚いている。


「次は控え室ね。王家は招待するのでしょうか」

「はい」

 行ってみる。


「国王夫妻と王子は一緒でいいわね」

 部屋が綺麗になる。

「次は公爵はいるのかしら」

「今はいません」


「侯爵は?」

「アンリを除くと一人です」

「じゃ侯爵の控え室」

 はい、新品同様。


「あとは格下ね。大部屋ね」

 大部屋も新品同様。


「ホールと廊下ね」

 はい。綺麗になりました。


「あとは台所ね。綺麗でないと美味しいものはできないわ」

 台所も新品同様。料理人がびっくりしている。


「みんなの住むところも綺麗な方がいいわね」

 綺麗になった。働いている人の部屋も綺麗だ。


「外側も見ましょう。少し汚れているわね」

 綺麗になった。


「植木も少し伸びているわね」

 手入れをしました。


「厩舎に行ってみましょう」

 綺麗になった。


「馬車を止めておくところね。御者の控え室」

 駐車する場所は草もなく、控え室も綺麗になった。


 結局屋敷全体が新築同様になった。


「こんなところね。あとは早く招待者名簿を作ってね。プリシラさんを呼びましょう。彼女は字がとても上手だわ」


 はいはい。ステファニーさんと観察ちゃんに迎えに行ってもらいました。

 プリシラさんはニコニコとやってきました。


「今回はこっちはないのですか」

 剣を振る格好をしている。

 みんな期待をしているが、相手次第だ。


「王家と日程を調整しなくてはね。あとはもう一人の侯爵に話しておこう」

 エリザベス臨時執事長が王宮に行った。


 王宮で侍従長を捕まえて、日程を協議、10日後とした。文字通り捕まえたらしい。面白いねえ。


 ノエルさんが急いで招待者名簿を作った。


 エリザベスさんが帰ってきてすぐプリシラさんが招待状の作成に入った。


 エリザベスさんはもう一人の侯爵の執事長に話をするため屋敷に出かけた。


 観察ちゃんは名簿をみて分裂して出て行った。招待者の屋敷の場所を確認しに行ったらしい。


 プリシラさんは字が上手だねえ。書家だよ。受け取った方はびっくりするぞ。


 多いのか少ないのかわからないが招待者は40人くらいだそうだよ。夫婦で来るだろうから80人程度だろう。


 プリシラさんは夕方までには招待状を書き終わった。明日朝から配ることにした。観察ちゃんも次から次へと帰って来て合体している。全員の頭に地図が送られてきた。招待者の屋敷入り王都地図だ。


 朝が来て、エリザベス臨時執事長は王宮へ招待状を届けに行った。

 二百人衆は臨時執事長補佐となって、侯爵家の馬車2台で招待状を配って歩いた。貴族街だからね。効率は良い。昼までには配り終えた。


 もちろんゲルバー伯爵にもね。ブランコ臨時執事長補佐がお届けにあがった。門番が気絶したそうだ。


 貴族街は大騒ぎである。後継のアンリ様は殺されるかゲルバー伯爵の傀儡侯爵にされて食い物になってしまうのではないかと思っていたが、素早く爵位継承披露パーティーの招待状が届いた。


 招待状の筆跡はこの国では見た事がないほど美しい。大陸一と言っても過言ではない。

 それに執事服を着て招待状を届けに来た男。礼法正しく、所作が美しい。しかもうちに強さを秘めている。何処の貴族の家の執事長でも敵わない、宮廷の侍従長でも敵わないとの評価である。


 勿論継承披露パーティーにはぜひ出席しなければと思う貴族達である。伯爵派の貴族達も今更ノエル様が王子の妃になると言う事はまずないだろうと思うが招待状と配ってきた執事を見て一抹の不安が生じ、万一を考えて出席希望である。


 伯爵は不機嫌である。自派の貴族に継承披露パーティーには出ないだろうなと言っても言を左右にして出ないとは言わない。


 王宮侍従長に陛下夫妻と王子の不参加をそれとなく要請したが、「斯様なことは出席が慣例です」と軽く躱された。随分侍従長に贈り物をし、融通をきかせてもらっていたが、侍従長も日和見を決め込んだのではないかと疑う伯爵であった。

 賂の甘い汁の誘惑よりもエリザベス臨時執事長の方が怖い侍従長であった。

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