562 デモンストレーションの一日
宿の部屋に入ってすぐ森の中に転移。部屋の留守番は観察ちゃんがしてくれる。
スパ棟を出してのんびりだ。
ステファニーさん、オリメさんとアヤメさん、ティランママ、ティランサン、ローコーさん、ゴードンさん一家を呼んでやろう。別格バトルホース8頭とベーベーとベーベーマンも呼ぼう。それとバトルホースたちの世話に二百人衆を何人か呼ぼう。
みんなすぐ来た。
「楽しそうだな」
ローコーさんだ。
「はい。犯罪国家相手ですから楽しいです」
みんなには城門から入ってもらうことにした。
僕とアカとマリアさん、エリザベスさん、エスポーサ、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、ジェナとチルドレン、熱帯号、雪原号で城門を入ったところに転移。
門が騒がしい。大太刀を背負った大女と、太刀を背負った大女よりすこし背が低い男が怪物に乗って先導し何人も何頭もやってきた。
門番はもはや放心状態だ。
「通る」
入って来た。では行こう。
本日2回目のデモンストレーション。
先頭から順に、バトルホースに乗ったティランママ、ティランサン、僕とアカ、オリメさん、アヤメさん。リンに乗ったステファニーさんとマリアさん。ドラちゃん、ドラニちゃんが両脇。ジェナとチルドレンの乗った熱帯号と雪原号。バトルホースに乗ったローコーさん、エリザベスさん、ゴードンさん一家。ベーベー。殿はブランコに乗ったエスポーサ。小脇に薙刀を抱えている。
中央広場へ。皆仰天している。
奴隷街へ。また皆さんお出迎えしてくれる。お馴染みの奴隷商は腰を抜かしている。ディミーティスさん夫妻は相変わらず深くお辞儀をしている。
皇帝城の前を通って市場、市場の裏口を経て宿に戻る。
「もしもし。馬などを連れてきたのですが、厩舎はどこですか」
従業員が外に走って出た。そして腰を抜かした。二百人衆が行ってくれた。
「それからこちらが追加の人たちです。よろしく」
ドラちゃんとドラニちゃんが部屋に案内してくれる。もちろんすぐ森の中に転移だ。
二百人衆が戻ってきた。
「シン様、こちらの馬丁ではバトルホースとバトルベーベーは世話ができないようです」
「フロントマンさん、そういうことでこちらで面倒見ますので、厩舎の近くにテントを張っていいですか」
頷くフロントマン。
二百人衆が出ていった。
僕たちは部屋の中を通ってすぐ森の中へ転移。
「おい、行ったか」
「はい、部屋に向かいました」
「確実に何か起こるな」
「はい。確実に起こります」
「この宿を今月で引き払うことを条件に売り飛ばした。お前の分だ」
フロントマンに砂金大袋二つを渡した。
「ありがとうございます」
「歳をとるまで働いてもらいたかったがそういうわけにもいかなくなった。もう客は取らなくて良い。幸い予約もない。おれはみんなに砂金を配ってくる」
「わかりました」
「それから明日の朝一番で逃げろ。明日の朝の門番は俺の友達だ。通してくれるように話はしてある。厨房も閉鎖だ。食中毒が出たと言え。全従業員に逃げるのなら明日の朝と話してくる」
「支配人は?」
「俺は客がいなくなるまでいるさ」
「すみません」
奴隷商 ディミーティスの店。
「何か起こる。お前の親父さんから引き継いだ店だが店をたたむがいいか」
「そうしましょう。大変なことが起こりそうです」
「明日の朝逃げる。買い入れた者には幾許かの砂金を渡し好きにしてもらう。明日朝の門番は俺の友達だ。通してくれるように話はしてある」
買い集めた者を一室に集めた。
「明日日の出と共に商売をたたむ。みんなには砂金の中袋を進呈する。好きにして良い。ここから逃げるなら日の出と共に門を出てくれ。俺たち夫婦も出る。ここに止まっても良いが大変なことが起こる予感がする。それまでにこの国を出国した方が良い」
買い集めた者たちから発言があった。
「一緒に連れていってください。砂金はお返しします。他の国で旦那さんと普通の商売がしたいと思います」
みな一様に頷いた。
「そうか。すまない。古着だが用意してある。リュックも用意してある。中にいろいろ入れてある。確認してくれ。それじゃ古着に着替えて明日の朝を待ってくれ。日が出る前に店をでて日の出と共に門を通過したい」
森の中。自宅スパ棟。
勢揃いだな。
僕とアカ、ジェナ。マリアさん、ステファニーさん、オリメさんとアヤメさん、エスポーサ、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、リン、ティランママ、ティランサン、熱帯号、雪原号、チルドレン。エリザベスさん、ローコーさん、ゴードンさん一家。
二百人衆三人とバトルホース、ベーベーとベーベーマンは宿だ。
みんなで夕食。今までの経過を話した。明日から街中をぶらついてもらうと頼んだ。
楽しみだとみなさん。
観察ちゃんから報告があった。
宿は今月いっぱいで引き渡すという条件で売り飛ばして、支配人をのぞいて明日の朝退去する。奴隷商のディミーティスさんは店を畳んで買い入れた人たちとこちらも日の出とともに街を出る。
へえ。察しが良い人たちだ。見送りはしてやろう。
夕食にして、お風呂に入って、就寝。ジェナとチルドレン、熱帯号、雪原号は一部屋だ。
ゴードンさん一家はスパ棟脇にテントを張った。小さいながらも我が家なのだろう。
こちらは皇帝城
皇帝は機嫌が悪い。
妖精のようなものが現れたと市中に放っている密偵から報告があった。献上させよと命じたが、なかなか献上されない。
「どうなっている」
怒気を含んだ声で側近に言った。
側近は困った。情報がないのである。いや宿はわかったが、部屋の覗きはできない、部屋に立ち入れない、こっそりとも入れないと宿の支配人に情報提供を断られた。
そこに闇市場の会長がやってきた。
「陛下。お探しの妖精らしきものが闇市場に乗り込んできました」
「それで捕まえたのだろうな」
「それがーーー」
「なんだ」
「それが、周りにいた男女が大変強くて、こちらの手のものが手首を砕かれたり、切られたりしてとても捕まえることはできませんでした」
「どうしてすぐ兵に連絡しない」
「当国はやったもの勝ちですから、兵に連絡する理由がありません」
「ばかな。理屈はでっち上げればいい」
「怖くてできません。それともう一つ、その男たち、シン様という子供が主らしいですが、そのシン様から陛下に伝言があります」
「なんで様をつける」
「皇帝に伝えよ。悔い改めよ。さもなくば国ごと滅ばす。犯罪国家に存在意義はない。との事です」
会長は陛下の質問を無視した。
秘書が来客を告げた。奴隷組合の組合長が急用とのことだ。
組合長にも妖精のようなものを見かけたら、持ち主は直ちに奴隷化、妖精は生け捕って献上せよと命じてあった。
「通せ」
奴隷組合の組合長の顔色が悪い。
「どうした」
「妖精を連れた子供が部下らしいものと行進しました」
「それがどうした」
「連れていたものたちはいずれも見たこともない強者と見受けられ、魔物というかその」
「なんだ」
「神獣のようなものに乗っていたり、神獣が子供の周りを飛んでいたりして、隙が一切なく、何かあればたちまちにして命を失いそうで、みな手をこまねいて見ているだけでした」
「明日の朝食会で対策を練る。みんな下がって良い」
 




