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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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544 名誉国民証の授与式、食事会、ダンスパーティー (下)

「アロガン、何を馬鹿な事を言っているのだ。控えよ」

 侍従長がムッとしたらしい。


「国王陛下騙されてはいけません。私の手のものが王妃の出身のサルメウムの弟の鉱山監督人頭 ロッカから征服のための進軍の密書が届いているのを見つけました。密書の内容は、こうです。時候の挨拶があり、塩を高値にしてテッサニア王国を疲弊させる。疲弊したところに王妃が塩の財で侵略のために整備した道路を使って強襲し、征服する。機は熟した。姉様はシンを離宮から進撃させてほしい。では数日のうちに進発するのでよろしく。挨拶があって日付とロッカの署名がありました」

 会場がざわつく。


「本当かね」

「本当です。今証拠の密書を持って来ます」

 女官がお盆の上に手紙を乗せて入って来る。


「お前は?」

「謀反人の王妃に使われている者です。この密書を王妃が読んで、やっとと言って隠しました。私は厳重に封がしてあった封書でしたのでおかしいと思い、王妃の目を盗んで写しを作り、忠臣のアロガン様に届けました。密書は元に戻し、動かせばわかるように細工しました。動かされておりませんでした。謀反の証拠の品です」


 侍従に密書を渡し、侍従長が国王に渡した。

 国王が読んだ。

「これが密書なのか?」


「そうです。間違いありません。謀反の証拠です」

「そうか。読んで見よ」

 侍従長に渡し、侍従長が読み上げる。


 姉様

 いかがお過ごしですか。

 今日は良い話をお届けできます。

 塩の件です。

 塩の坑道が深くなり採掘に難儀して、塩の値段が上がってしまって申し訳ありませんでした。

 しかし、シン様が新たに地表近くに岩塩の厚い層を発見してくれました。まもなくそこから塩を生産できるようになり、テッサニア王国にも従前より安く送れるようになります。テッサニア王国国民のみなさんに安い塩を提供できます。すこしでもお役にたてればと思います。

 姉さんが整備してくれた我が国からテッサニア王都へ通じる街道があるので楽に塩を運べます。結果的にテッサニアに安く塩を送ることができます。あの道路は、テッサニア国と我が国の友好の証の道路です。これからも整備を続けてほしい。そうすれば輸送コストを抑えられその分塩を安く提供できます。

 姉様は両国の大事な架け橋です。どうかお身体を大切に時々離宮で休養してください。

 では旬日のうちに安い塩を荷車に満載した塩商人が向かいますのでご期待ください。

 くれぐれもお身体を大切に

  ○年○月○

   サルメウム

     あなたの弟 鉱山監督人頭 ロッカ


「これの何処が密書なのかね。シン様という人が岩塩を新たに発見し、王妃が整備した道を使って我が国にも安く塩を供給してもらえるという話ではないか。謀反人はお前ではないか?」

「そんな馬鹿な。確かにちゃんと謀反の謀が書いてあり、ロッカの署名まであった。何かの間違いだ」


「お前はロッカ様の署名を見たのか」

「確かにこの目で見た。本文もロッカの筆跡で署名もロッカの署名だった」

「さっきの話ではお前が見たのはお前の手先の女官が作った写しという事であった。おかしいではないか。いつ本物を見たのだ」

「あっ」


「語るに落ちたな。お前が後宮に入れた女が余の子を産んだと吹聴しているようだが、面白いからそのままにしておいた。誰の子なのか。知っていそうだね。それでこういうことになったのか。なるほどね」

 おやおや、凡庸と言われた国王はどうも昼行燈を演じていたらしいね。


「アロガンの貴族籍は今をもって剥奪。アロガンの女とその子もとらえよ。処分は追って沙汰する。国家転覆罪となろう。覚悟して待て。引っ立てろ」

 アロガンが引き立てられていく。


「陛下・・・」

「どうだ。惚れ直したか。あはははは」

「はい」


「それとだ。俺の手のものが今朝報告して来た。湖に通じる街道の傍に人の頭が100ほど積んであって、手配中の盗賊の頭もあったということで今調べている。それと道が整備されていておかしいと辿って行ったら、湖に出た。驚くべきことに湖は澄み切って、魔物の気配はない。昔の湖に戻ったようだと、急いで戻って知らせて来た。何か知っていそうだが」


「はい。シン様が片付けてくれました」

「そうか。やはりな。シン様が滞在していた離宮に俺の手のものが見にいったが、魔物が警備していて近づけなかったというおかしな報告だ。それとシン様の馬車の紋章にクラウンとティアラがあしらってあって今は滅びた国の伝説のクラウンとティアラのようだと報告があった」


「私とマリアの故国です。国は滅びましたが、クラウンとティアラを私たちのために守り通して、待っていてくれたものがいて失わずにすみました」

 ステファニーさんが発言した。


 国王は椅子から降りて跪いた。王妃も出席者も跪く。

「シン様。この度は我が国の国家転覆の謀を明らかにしていただきありがとうございました。また、我が国の収入源であった湖観光が復活できる道をつけていただきました。我が国の危機を二度救っていただき深謝いたします」


「ご希望通り踊ったまでですよ。王妃も孤立無縁と思ってずっと過ごしていたんだろう。これからは仲良くね」

「やっぱりおわかりでしたか。申し訳ありませんでした。我が国も色々あり、ここまでやっと漕ぎ着けました。王妃を巻き込むわけにはいかず、心寂しい思いをさせてしまいました。神様とは存じ上げず、湖は想定外でした。これは普段使いの名誉国民証です。それともう一枚ありますがダンスパーティーの席上、皆が揃った時に贈らせていただきます。隣に食事が用意してあります。どうぞ会場にお運び願います」

 侍従が扉を開けた。侍従長が先導してくれる。


 授与式と食事会は主だった貴族が出席らしいよ。アロガンは下級貴族だけど、監察官だから呼ばれたらしい。どうも国家転覆劇をやらせたかったらしい。


 国王のお仲間の侍従長がもっともらしい顔をしているが口角がほんの少し上がっている。食えない人たちだ。みんな国王の手のひらの上で踊らされた。僕は知ってたからいいけど、王妃は知らなかったから大変だったろう。惚れ直したらしいからいいか。


 食事会が終わって少し休憩。僕らもダンスパーティー用に着替える。僕もアカも大人だ。ダンスパーティーは貴族全員と国民の主だった人たちが参加するらしい。

 侍従長が呼びに来た。


 僕とアカを見て平伏した。

「数々のご無礼お許しください。この首一つでどうかおおさめください」

「いいよ。僕らは知っていて、楽しんで踊らせてもらったけど、気をつけたほうがいいかもね。うっかりすると国が滅びるよ」

「はは。以後気をつけます」


「なかなか面白かったな。時々離宮や湖に遊びに来ると思うけどよろしくね。また離宮の警備員も大切にしてね」

「はは。承知いたしました。それがしの命に替えても必ずやお心に沿うよう取り計います」

 大袈裟だけどまあいいや。


 案内されてダンスパーティーの会場へ。

 会場が静まり返った。こうなるよね。

 国王が真っ青になって平伏した。王妃さんも皆さんも平伏した。

 まさか本物の神とは思わなかったらしい。


「誠に、誠に申し訳ありませんでした。神様を利用してしまう形になり万死に値します。この首一つでどうかお許しを」

「良い。これから気をつけるように。王妃、クロエ侍女長これへ」


 王妃とクロエ侍女長が来た。

「この度の事はひとえにそちたちの働きの賜物である。その方たちのこの国を、国民を思う真情がなければ我らは盗賊の討伐、魔物の間引き、湖の浄化は行わなかった。褒美を取らす」


 アカがコップと線指輪の乗ったお盆を取り出す。

 水の入ったコップを差し出すと、王妃が飲む。体が光る。

 会場がどよめく。

 線指輪をすると再度体が光る。

 どよめきが止まらない。

 クロエ侍女長も水を飲み同じように体が光った。

 線指輪を渡し、指にはめると体が光る。

 王妃とクロエ侍女長の指で線指輪がこの世のものとは思えない輝きを放出する。


 王妃とクロエの頭の中に神様の声が流れてくる。

『その指輪は僕の関係者の印だ。外せば僕のところに戻って来る。不可視と思えば見えなくすることができる。一辺100メートルの立方体の収納になっている。ショートソード、ナイフ、冷たい水の入った竹水筒が入っている。有効に使うと良い。僕に用があれば観察ちゃんを呼んで伝えれば良い。時々ジェナとチルドレンが警備員と遊ぶために離宮を訪れると思う。また我々も時たま湖に遊びに行くかもしれない。よろしくね。返事は頭の中ですれば良い』

『承知しました。いつでもおいでください。私どもと離宮に勤めるもの一同、部屋を空けてお待ちしています』

 どよめきもおさまった。


 国王が口を開いた。

「せめてものお詫びに名誉貴」

「陛下こちらでございます」

「名誉王族証」

 すり替えた。まことに食えない侍従長だ。


 気を取り直した国王。

「この証を受け取っていただけますでしょうか」

「何かあったら使わせていただこう」

「名誉なことでございます」


「我らは王妃がいなければこの国に関わることはなかった。今日あるは全て王妃とクロエ侍女長のおかげと知るが良い。嫌疑をかけられた王妃とその弟を大事にすることだ。この国のことを日夜気にかけていた王妃に感謝すると良い。さらばだ」

 ゆらめきの中に神様一行が消えてゆく。


 あ、ダンスはしなかった。

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