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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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538 観光地であった湖に向かう

 神国の朝

 二百人衆が御者の馬車に乗ったステファニーさん、オリメさん、アヤメさん、バトルホースに乗ったティランママ、ティランサンがフィーニス近くまで転移して行った。

 僕らは離宮へ。あれ、そうすると今晩からは誰も眷属が神国にいなくなるのか。ま、いいか。二百人衆がいるから。


 離宮に戻って、朝食後、今日も出かけよう。

「クロエさん、出かけて来ます」

「どちらでしょうか」

「どこと決めていませんが、どこかいいところはありませんか」

「いいところ?」

「風光明媚なところとか」

「風光明媚?」

「眺めが良いところとか」


「湖がありますが、近づけません」

「なんででしょう」

「湖に魔物がいます」

「それは面白い。行ってみましょう。どこにあるのですか」

「サルメウムから王都までの街道がありますが、王都からその先へ馬車で2時間ほどです。街道から少し離れていますが道はあります」


「どうしようかな。馬車にするか、走って行くか」

 バトルホースもいるし、いつもの馬車でいいんじゃないとアカが申しています。

「馬車を持って来ます。エスポーサ、バトルホース2頭つれて馬車を取りに行こう。すぐ戻るからみんな待っていてね」


 玄関から出るとバトルホースが2頭待っていた。僕とアカ、エスポーサが乗って出発。しばらく行ったら森の中へ。馬車を出して、バトルホースを繋いで、エスポーサが御者、僕とアカが乗った。


 ええと、馬車には誰が乗るのかな。ジェナとチルドレン、お目付けにドラちゃん。御者はエスポーサで、道々アイスマンとジュビアに馬車の運転について教えてもらおう。バトルホースはあと4頭くらい呼んでおこうか。

 観察ちゃんが連れて来てくれた。


 では離宮へ。

 近くの森からだからすぐ着いた。みんな出て来た。クロエさんも馬車を用意している。ついて来るつもりのようだ。うちの馬車は普通の馬車だけど、存在感が違うな。

 クロエさんは馬車とバトルホースが増えたのにびっくりしている。


「これは王宮に行く時に使う馬車ですか?」

「違います。今日のような時に使う馬車です」

「・・・・」


「馬車には、ジェナとチルドレン、お目付けにドラちゃんが乗ってね。御者はエスポーサがアイスマンに馬車の運転を教える。アイスマンはジュビアと途中交代。二人ともよく覚えてね。バトルホースに騎乗するのは、僕とアカ、マリアさん、ブランコ、ドラニちゃん、リン、ジュビアだよ」


「クロエさん、道案内をお願いします」

「あのう。うちの馬は普通の馬なのでそんなに速度は出ませんし、王都から少し離れると道が悪く、途中休み休みになってそれも含めて2時間なのですが」


「わかりました。サルメウムから王都までと王都から離宮までは道が良かったですが」

「それは王妃様が自費でお嫁入りの時に王都まで工事をしてそれを維持しているからです。離宮までも同じです」


「それは大変な掛かりですね」

「はい。大変です」

 あまり費用のことは聞かないことにしよう。


 クロエさんの馬車は御者を使用人がやって先頭だ。僕らはあとからゆっくりついていく。

 離宮から街道までは順調。それから左に曲がってしばらく行くとなるほど道が悪くなる。大丈夫かクロエさん。馬車がグラグラ揺れているぞ。これでは馬に乗った方が楽だろう。がんばるねえ。


 馬車が道端に寄って止まった。休憩だろう。御者が道端にシートを敷いている。


「大丈夫ですか」

「ええ。なんとか」


「うちの馬車にしますか」

「それは」

「遠慮なさらずにどうぞ」


「すみません。まえはもっと楽だったのですが、通る人も少なくなってしまって、それに従って道が荒れてしまいました。しばらくぶりでしたがここまで酷いとは思ってもみませんでした」


「どうして通行量が減ったのでしょうか」

「以前はこれから行く湖が名所で、王都や、近隣諸国、それこそサルメウムやその先などからも人が来て、賑わっていました。王都も宿泊で賑わいました。それらの人の落とすお金で道路も整備していました。ところがあるとき、湖と周辺に魔物が棲みつき、最初はまだ良かったのですが魔物が増えて来て観光客が犠牲になるようになり、観光地としては成り立たなくなり、お金も落ちなくなりました。結局道路の整備もできなくなり、今は湖とその周辺は魔物と盗賊のすみかになってしまいました。国の経済も苦しくなりました」


 観光立国だったのね。観光がダメになると苦しいな。内情を言っていいのかね。クロエさん。


「盗賊は征伐していいでしょうか」

「もちろん。国は疲弊していますから、報奨金は出ません。褒状が出るだけです」


「魔物も減らしていいでしょうか」

「出来ればお願いします。魔物は足が速く腐ってしまうので王都に持ち込めず使い物にならないし、現物がないので褒状も出ないと思います」


 みんな喜んでいる。盗賊は征伐し放題。魔物は元々いなかった湖の魔物は撲滅、陸の魔物は少し残して退治。美味しそうな魔物は収納。


 ブランコは涎が出そうだ。あれ、アイスマンもジュビアもそうなの。ドラちゃんはもうすっかりその気になって、美味しい魔物がいそうなところを睨んでいる。


「馬車は盗賊や魔物が襲ってくると危ないので帰してください。アイスマンに護衛させます」

「すみません。こんなに酷いとは思ってもみませんでした。では王都あたりまでお願いします」


「それから討伐に時間がかかるかもしれません。泊まることになると思います。馬車と一緒に戻りますか?」

「いえ。他国の方が我が国のために討伐してくれるというのに帰るわけにはまいりません。王妃様宛の手紙を御者に持たせます」

 クロエさんは何やら手紙を書いて封印して御者に渡した。


「アイスマン、バトルホースに乗って・・まずいか。走って馬車についていって王都まで送って来て」

「承知しました」


「馬車に乗ってくださいと言いたいところですが、道が悪いですから離宮の入り口あたりから乗ってください」

「いや、馬車に乗るのは」

「遠慮なさらずに」

「それでは御者席に乗せていただきます」

「ぜひそうしてください」


 御者が馬車の向きを変え、アイスマンと一緒に戻って行った。

 アイスマンはすぐ戻って来るだろう。

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