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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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534 テッサニア王国王都中央広場にて楽しむ

 王都の城壁が見えて来た。

 入場は特別な列に並んですぐ門を通過。中央広場に向かう。

 ジェナが串焼き、屋台とかいっている。


 リンが指示する。

「広場で待っているわ。ジュビアは残ってジェナたちの荷車を引いて、アイスマンは王宮までついて行って」

「行って来ます」

 アイスマンは荷車引をジュビアと替わって王宮まで離宮の荷車を護衛だ。


 広場のはずれに荷車を止めるところがあったので荷車を置いて全員で屋台巡りだ。

「早く、早く」

 ジェナとチルドレンが急ぐ。今度はドラちゃんも止めない。おねたんもソワソワなのであった。一緒になって走って行く。ジュビアもついて行く。リンはゆっくりだ。


 支払いは砂金か塩のようだ。

「砂金で支払ってね」

 リンがみんなに注意した。塩は高品質過ぎて屋台ではトラブルの元だ。


 ジェナたちは串焼きを頼んだ。

 子供だけと見て屋台のオヤジの悪い心が動いた。


「前金だよ」

 屋台は普通は品物と引き換えだ。


 ジェナはこれは楽しいと思って砂金の袋を出す。オヤジがひったくった。屋台の陰で大分砂金を掬ってジェナに袋を返した。


「おじさん、砂金を取りすぎ。返して」

 ジェナがほとんど空になった袋をオヤジに差し出した。


「そんなことはない。みんなも見ていたろう」

 隣のオヤジに聞く。


「ああ。見たぞ。その袋の中には最初から砂金はほとんど入ってなかった」

 隣のオヤジもグルのようだ。

 普通はここで泣き寝入りである。


「そう?ほんとにそうなの」

「そうだ」

「わかった」


 ジェナがオヤジの砂金袋から、オヤジが掬った倍くらいの砂金を自分の袋の中に転移させた。


「早く串焼き頂戴」

「おお、わかった」


 なんだかおかしいと思ながら、料金は確かにもらった。そこはとぼけられない。少し気がとがめて、多めに肉を刺して焼いて、ジェナとチルドレンに渡した。


 次の客は大人だ。砂金袋を突き出すので、つい前金で砂金をもらって袋に入れて気がついた。砂金が減っている。


「あ、やられた」

 おじさん、追いかけようとするがお客に止められた。


「お金を払ったのに、串焼きを渡さずに逃げるの?前金をもらって逃げる詐欺屋台かしら」

 お客が両隣のオヤジを睨む。


「みなさんも見ていたでしょう。前金にして、商品を渡さずに逃げかけたわ」

 怖い。全身から怒りが放出されているようだ。

「は、はい」


「何を見た?言ってみなさい」

「前金でお金をもらい、串焼きを渡さずに逃げようとしました」

「わかればいいのよ」


 オヤジは睨みつけられる。

「さっさと串焼きを焼きなさい」

 怖い。屋台のオヤジは肉を多めにして串焼きを一本焼いて渡した。


「衛兵に突き出さずに穏便に収めましょう。示談料が必要だわね」

 オヤジはもう一本焼いた。

「これで何とか」


 リンは、ジュビアを呼んで串焼きを渡した。

「では手打ちにしましょう」


 子供はずいぶん離れた屋台で何か買っている。こちらを見て手を振っている。女たちも手を振り返す。


 やられた。この女たちもグルだった。でも証拠がないし、横を見ると隣のオヤジが顔を背ける。周りも証言してくれそうもない。泣き寝入りである。


 「おほほ。美味しいわね」

 女たちが子どもの方に去っていく。


「ぶったくられた」

 オヤジがつぶやいた。


 こちらは王宮料理人に魔肉を渡した離宮の使用人とアイスマン。

「行きつけの店が広場に近くにあります。荷車も止められますから昼食はそこでいいでしょうか」

「店はおまかせします。広場で連れの者が屋台巡りをしていると思いますのでちょうどいいです」

 使用人とアイスマン、任務終了なので心も軽く中央広場へ。


 なにやら広場の外れのほうに人が群がっている。

「行ってみましょう」

 使用人さんも野次馬根性があるらしい。アイスマンも面白そうだから二人で行く。


 見覚えのある荷車の車輪に男が轢かれている。助けてくれと言っていて、みんなが荷車を持ち上げようとするがびくともしない。


 荷車を止めたリンたちがやって来た。

「あら、大変。もしもし、うちの荷車で何をしているのですか?」


「お前の荷車か。早くどかせ」

 荷車の下になった男が怒鳴る。


「どかせとは穏やかではありませんね。勝手に車輪の下に入ったのでしょう。止めておいただけで、馬も人も引いていませんよ。怪しいですね」


 今まで手伝っていた男たちは、よく考えればそれはそうだと思った。

 風向きが変わってしまった。男から手を離し観客に回る。


「おおかた盗もうと引こうとして転んで下敷きになったのでしょう。違いますか」

 男は黙ってしまった。


 何かトラブルだろうと衛兵が近づいて来る。

「衛兵さんも歩いて来ますよ。自分で罪を申告すると罪が軽くなる国もあるそうですが、この国はどうですか」

 男は黙ったままだ。

 衛兵が到着した。


「集まって何をやっている」

「私どもが荷車を止めて屋台に行っている間に、この方が荷車の下敷きになっていたのです。帰ろうと思うのに困りました」


「お前は何んで荷車の下にいるのだ」

 男は答えられない。


「答えられないようですよ。おおかた盗もうと思って荷車を引いたら転んで下敷きになったというところでしょうか」

「そうなのか?」

 男は黙秘だ。


「荷車の持ち主はあんたか」

「主の持ち物です」

「この国の者ではないようだがどこに泊まっている?」

「王妃様の離宮です」

 リンが答えた。


「王妃様のお客様です」

 離宮の使用人が追加する。王妃様は最重要人物なので離宮に働く人の顔もしっかり頭に入っている衛兵である。まさしく王妃様の使用人である。


「これは王妃様のお客人の荷車でしたか」

 にわかに慌てる衛兵と荷車泥棒。


 王妃関係の品物と知って窃盗に及べば死刑、衛兵も広場の監視不行き届きで良くて懲戒解雇だ。


「王妃様関係者の荷車とはつゆしらず、良い荷車なのでつい触ってしまったところ転んでしまってこうなりました」

 焦った泥棒、言い訳を考えた。


「余罪があるだろう。よく調べたほうがいい」

 使用人のお言葉である。


「承知しました。徹底的に調べます」

 とりあえず死刑は回避できたが前途多難な泥棒である。


 リンがながえを片手で持ち荷車を持ち上げた。荷車全体を持ち上げたのである。

 泥棒も衛兵も使用人も観客も仰天した。怪力である。人のできることではない。そして頑丈な荷車である。


「どかないと下ろしますよ」

 慌てて退く泥棒。衛兵がすぐ身柄を確保した。

 衛兵も泥棒もペコペコして衛兵詰所に向かっていった。


「何だかお昼を食べ損ねたわね」

 リンが使用人に向かって言った。


「屋台で食べて戻りましょう」

 使用人が提案する。


「向こうにサービスの良い串焼き屋台があります」

 リンが応える。


 今日は串焼き屋受難の日である。ゾロゾロとお妃様お客人の一行がやって来る。さっきのぶったくり姐さんがいる。なんとお妃様お客人であった。

 串焼き2本づつお買い上げだ。


「ここ、肉が多いのよね。ね」

 お妃様のお客人とは知らなかった串焼き屋。さっきの件が衛兵に知れると、牢獄である。最悪死刑である。肉が多いとぶったくり姐さんに念を押され、肉を多めに串に刺し、お客人の分を焼くのであった。


 ふと見るとお客人御一行の他にたくさんお客が並んでいる。肉の量が多いと話しながら楽しそうに並んでいる。急に肉の量を元に戻すとまたトラブルだ。泣く泣く肉多めの串を大量に焼くのであった。


「おじさん、頑張って」

 あのガキに声をかけられてしまった。

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