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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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531 テッサニアの王宮で王妃と会う

 テッサニアに行く道々塩商人が話してくれる。

「昔は良かったんだが、坑道が深くなるに従って余裕がなくなり、無理やり鉱夫を集めるようになった。良くなってくれると良いが」


「穴をほったらすぐ岩塩の層になったよ。かなり厚かった」

 ブランコが教えてやる。観察ちゃんは気づいて掘る地点を選んだようだ。地中レーダーだな。偉い偉い。荷車の上で尻尾を振って喜んでいる。


「浅いところから岩塩の層が厚くありました。引き上げられた男たちが気づいているでしょう。しばらくすれば地表に近いところから岩塩を採掘出来るようになるでしょう」

「ほんとか。それは良かった」

 半日かけて国境に着いた。


 国境の警備所では岩塩を王宮に納品に行くと言って、手紙の宛名を見せたらすぐ通してくれた。


 国境のそばで一泊。それから一日進んだ。緩やかな下り坂だったから塩を積んでいても楽だった。大きな街に着いた。リュディア王国王都エクバティア並だ。


 城門の門番にも手紙の宛名を見せて無事通過。王宮すぐ近くまで着いた。夕方行ってもしょうがないので裏の方に回って小さい広場で野宿。


 翌日朝、すぐ王宮に着く。王宮の門番に手紙を見せる。すぐ奥に走っていって、役人が出てきて通用門から中に入れてくれた。


「ではここでお別れです。食事と水は美味しかったです。誰にも話しません。ごちそうさまでした」

 塩商人達は積荷を下ろす倉庫に案内されていった。振り返り振り返り行く塩商人も馬も寂しそうだ。二泊三日の旅だったけど話しながら旅をしたからね。


 塩商人と分かれ、僕らは王宮内に案内された。人数が多いから会議室のようなところだ。


 女性が出てきた。やや年配の人だ。

「オフェリア王妃陛下だ」

 役人が偉そうに言う。

 僕らは‘へえそう’なのだ。

「良い。下がっていなさい」

 役人が下がっていく。


「テッサニア王国にようこそ。早速ですが、手紙を読みました。この度は弟のロッカを助けていただき、また他国のことながら多くの人命を救っていただき、感謝の念に堪えません」


「鉱山監督人頭のロッカさんは弟さんでしたか。たまたま通りかかったときに落磐が起きたものですから」


「超人的な働きとか。なかなか出来るものではありません。弟からというか、シン様からと書いてありましたが、大量の塩をいただきました。我が国では貴重品です。名誉国民の資格は十分満たされています。賂ではなく挨拶と書いてありましたが挨拶にしては少し多いような。今、名誉国民の手続きをしています。すみませんが、代表の方のお名前をお願いします」


 紙をすべらせてくるので、僕とアカの名前を書いた。

「ジュノ シン様とアカ様ですね。その一族と。あとはご出身はどちらでしょうか」

「この大陸ではありません」


「昔、エチデンヤさんという商会の方が隣の大陸から来たという話が伝わっていますが、その大陸でしょうか」

「はい。エチデンヤは正しくはエチゼンヤです」


「お国は?」

「エチゼンヤさんはリュディア王国。僕らはシン国で、リュディア王国の隣です」

「そうですか。神国と」


「ご職業は何でしょう」

「王をやっています」

「王ですか」

「王です」

 神とは言えないからね。王はこの間二百人衆の王になったから本当のことだ。


「まあお飾りですから、お飾りシンか貴族とでも書いておいてください」

「では貴族で」

「それで結構です」

 子供が王?おかしな方だが尋常ではない方のように思える。一応神国高位貴族とでもしておこう。


「名誉国民のお披露目会がありますがよろしくお願いします」

「はい。わかりました」

 本当にわかっているのでしょうか。一応言っておこう。


「名誉国民証の授与式の後、食事会があり、その後ダンスパーティーがあります。ダンスパーティーは正装となります」

「はい。いつでしょうか」

「10日後です」

「そうですか。別々に来ている者がいますが僕の仲間です。出ていいでしょうか」

「どうぞ」


「それまでどこかテントを張れるところをお貸し願いたい」

「私の離宮をお使いください。私の股肱の臣が守っています。外に何も漏れません。お世話は侍女長にさせます。クロエと言います」

「そうですか。お願いします」


「ところでこの国では馬車は使うのでしょうか」

「使いますよ。行事の時は馬車で王宮に来ます」

「そうですか。それじゃお披露目会には馬車で来ます。2台かな。あとは馬か」


 荷車を引いて来たというけど、ほんとかしらねと思う王妃。

「どうぞ。馬車と馬でお越しください」


 ぽんぽんと王妃が手を叩いた。

 すぐ中年の女性がやって来た。


「クロエ侍女長と申します。お世話させていただきます」

「よろしくお願いします」


「離宮には馬車で移動しますが、荷車はどうしましょうか」

「大丈夫です。子供を乗せて引いていきます。馬車に乗るのは4人で結構です」


 馬車の台数が一台で済むだろうから助かることは助かるとクロエ侍女長だが一応聞いてみる。

「他の方はどうするのでしょうか」

「走って行きます」


 馬車の後を走ってくるような人が正装なんて持っているのかしらと王妃は思うが、弟の手紙の落磐事故の救出方法も前代未聞で、二人だけで深い坑道まで穴を掘ったと書いてあった。信じられない。更に岩塩も発見したという。もしかするともしかするので黙っている。


「では失礼します」

 クロエとシン様と言う人とそのお仲間が出ていった。


 王妃がふと窓の外をみると小動物が木の実を両手で持って齧ってこちらを見ている。初めてみる動物だ。可愛い。またおいでと心の中で言うと、首をコクリとしたような気がする。

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