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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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745 ラピスラズリの村 (2)

 しばらく歩いて行くとなるほど村がある。谷間の村だ。村というか集落だな。数十軒しか家がない。

 もちろん村を囲む壁もない。門もない。

 魔物もいない。盗賊も盗るものがない。だから壁はいらないんだろう。


 村に入る。老人がいた。

「こんにちは」

「ああ。どこに行く」

「この先に行って見ようと思いまして」


「よそ者はめったに通らない。この頃ではお前さんたちが初めてだ」

「そうですか。そういえば若者二人に会いましたよ」

「村の若い者だ」


「ラピスラズリを売りに行くと言っていました」

「ラピスラズリとはなんだ?」

「青い石です」


「あれはラピスラズリというのか」

「はい。宝石です。見せてもらいましたが大変品質が良く高価で取引される品物です」


「そんなことは知らん」

「僕の知り合いの隊商を紹介しました。今までだいぶ買いたたかれていたようですが、世間相場で買い取ってもらえると思います」

「余計なことをするな。ずっと取引していた。よそ者が口を出すな」

 だいぶ村の人が出てきた。


「ほとんど屑石の値段で売っているようですが、あの宝石、ラピスラズリと言いますが、高品質です。今の何十倍の値段がつきます」

「昔からのつきあいのある店で買ってもらっている。それで生活できている。余計なことをするな」


「良い石を一つ売れば一年は暮らせるようになりますよ。今のままでは石を一つ売って、雑貨を買ってお終いでしょう」

「うるさい。よそ者が口を出すな」


「まて、爺さん。おれたちは石の値段を知らなかった。この人が言う通りならおれたちはだまされていたんだ」


「昔からつきあいのある店だ。だまされていたことはない」

「昔からだましていたんではないか」


「何を言う、先祖代々つきあいのあるあの店がそんなことをするはずがない」

「先祖代々だまされていたんじゃないか。旅の人、おれたちの石を見てくれるか」

「拝見しましょう」


「よそ者が口を出すな」

「爺さんは黙っていろ。おれたちの村の将来にかかわる。なんならおれたちはこの旅人の話を聞くが、爺さんは今まで通り屑石の値段で買い取ってもらえばいい」


「そんなことをすれば仕返しが」

「ああ、心配ないですよ。仕返しをすれば潰すように手配してあります」

「旅のおまえたちに何が出来る」


「ジェナ、警備員を連れてきて」

「わかったー」


 ジェナが転移して、すぐ黄色いスカーフを首に巻いた馬形魔物15頭を連れてきた。大きさは馬の何倍もある。村人は腰を抜かした。


「仕返しをすれば店ごと殲滅するように手配してあります。誰が殲滅したかわからないから村に嫌疑は及びませんよ。迷惑はかけません。安心してください」

 爺さんは口が利けなくなったようだ。口を開いたり閉じたりしている。


 ジェナが警備員の馬形魔物を戻した。


 村人は立ち上がって、家にラピスラズリを取りに行った。

 次々に石を持ってやってきた。


「拝見しましょう」

 すべてが良い石というわけではない。上中下にわけた。それでも上が3割くらいあった。中が4割、3割が下だ。


「上は大変よいラピスラズリです。間違いなく高価買い取りになります。王侯貴族、金持ち向けです。中は普通品。それでも宝石の部類に入ります。庶民が努力すれば手に入る宝石ですね。下は、まあ品質が悪いですが、それでも今買い取ってもらっているより良い値段で引き取ってもらえると思います。庶民が普段遣いできる宝石といえばいいでしょうか」


「本当か」

「はい。本当です」


「おれたちはだまされていた」

「この村はよそとつきあいがないようですので、石がラピスラズリという宝石ということを知らず、世間相場も知らず、ずっと屑石の下の価格で買い取られていたのだと思います。店はだいぶ儲かったでしょう」

「知らなかった」


「若い人は街の市場であれこれ見た方がいいです。幸いここから街までは魔物も盗賊も出ないようですので行ってみたらどうでしょうか。朝早く出れば夕方には戻ってこられるでしょう」

「わかりました」


「ただ、豊かになればなったで今度は盗賊の心配も出てきます。もう少し村の警備に力を入れたら良いと思います」


「そうか。豊かになれば狙われるか」

「はい。良いことばかりではありません」


「難しいな。貧乏では病気になれば薬も買えない。寝ていて死ぬだけだ」


 村人の主だった人との会話を聞いていた村人が発言した。

「それでもおれたちは食うや食わずから脱出したい。今のままでは遠からず村がなくなってしまう。もう少し村人を増やしてここに住み続けられる村にしたい」


「すこし剣の稽古をつけましょうか」

「いいのか」

「はい」


「いくらだ」

「そうですね。ただと言いたいところですが、ラピスラズリ一ついただきましょうか。訓練の後で結構です」


「それは一人一個か」

「いいえ。村人の訓練希望者全員で一つです。剣もないでしょうから差し上げます」


 爺さんが回復したようだ。

「だまされるな」


「後払いだからだまされようがない」

「くそ」


「若い人は明日には帰ってくるでしょうから明日皆さんが揃ったら始めましょうか。今日は僕たちは村外れにテントを張って野宿します。テントは張っていいでしょうか」


「いいぞ。おれはフォディオと言う」

「シンといいます。それと一つ言っておきます。ラピスラズリが出るということは話さないほうがいいです。現状場所を知っているのは皆さんだけと思いますが、話さないほうがいいです。ラシードさんはよくわかっていますから話すことはないです」


「公になれば大きな組織が独り占めに乗り出してきます。今まで取引していた店も場所までは知らないでしょう。長く自分たちで儲けを独占しようとしたはずです。売るにしても目立たないようにディースあたりまで行ってすこしづつ売っていたに違いありません。ラシードさんは隊商ですからさらに遠くの大きな街で売るはずです。ここまで足がつきません。大きな組織に独占されないように気をつけてください」


「そ、そうか」

「大変な宝物ですよ」

「わかった。みんないいな」

「何があっても黙っている」

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