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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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743 ラシード隊にコーヒーを紹介する

 ラシードさんにあれを飲んでみてもらおう。

「それとこれを飲んでみてくれますか」

 マリアさんがコーヒーを淹れてくれる。


「なにやらいい香りですね」

「はい、どうぞ」


「この白い四角のは?」

「甜菜糖を精製したものです。四角いから角砂糖と言います。入れる人と入れない人がいます」

「苦いな」


「はい。角砂糖を入れてみてください」

「苦味と甘味がある。多分角砂糖を入れない方が好みの人がいるかもしれない。これはもしかすると癖になるかもしれない。ちょっと香具師を呼んで来ます」

 ラシードさんが香具師さんを呼びに行った。直ぐ香具師さんを連れて戻って来た。


「なんでしょうか」

 香具師さんは警戒している。なんとなく先が読めるのだろう。


「この香りは干物じゃありませんね」

「コーヒーというんだそうだ」


「ああやっぱり初見の品物ですか。で売り込めばいいんでしょうか」

 香具師さんは諦めがいい。


「まずは飲んでもらうことから始めましょう。まずは飲ませて次に行った時に注文を取るなんてどうでしょうか」


「それでコーヒーというものはコーヒー豆を炒ってそれを挽いて粉にして湯を注いで作ります。エスポーサとエリザベスさんを呼びましょう」

 すぐエスポーサがエリザベスさんと転移して来た。


「こんにちは、ラシードさん、香具師さん」

 香具師さんはがっくりだ。名前はあるが誰からも香具師としか呼ばれていない。


「香具師さんにはコーヒー豆の挽き方、淹れ方を伝授しましょう。香具師あらためコーヒー伝導師になれるかもしれません」

 エリザベスさんに言われた。


「香具師より伝道師の方が聞こえがいいですね」

 香具師さんは開き直っている。


「では伝道師になるために豆の挽き方から伝授しましょう。豆は予め炒ってあります」

 エスポーサが小袋を三つ出した。

 それぞれ「熱帯号印 コーヒー豆 浅煎り 販売者 エチゼンヤ商会」、「熱帯号印 コーヒー豆 中煎り 販売者 エチゼンヤ商会」、「熱帯号印 コーヒー豆 深煎り 販売者 エチゼンヤ商会」とプリントしてある。


 ラシードさんが袋を見て

「熱帯号印というのはジュビアさんの?」

「そうです。ジュビアさんのところの特産です」

「なるほど」


 エスポーサとエリザベスさんは、ドリッパーとサーバー一体型のものを作って来た。フィルターもある。すげえ。


 エスポーサが解説しながら浅煎りの豆を挽いてコーヒーを淹れてくれた。

 香具師は慎重に飲んでいる。


「こういうのもある。これを入れると甘くなる」

 角砂糖を出した。


 香具師が角砂糖を入れて飲んでいる。


「さらにこういうのもある」

 白い粉だ。クリーミングパウダーか。地球の本に載っていたのだろう。材料はなんだろう。


「これはなんでしょうか」

 香具師は角砂糖は飲んでみたらわかったらしいが流石に白い粉はわからないらしい。


「魔牛の乳から作った粉だ。入れるとマイルドになる」

「魔牛ですか」

 香具師が入れて飲んでみる。


「確かにマイルドになります」

「だろう」


「しかし、だれも魔牛から乳を得られないと思いますが」

「そうだな。だから魔女印のクリーミングパウダーだな」

 僕が言うとエスポーサが嬉しそうだ。


 それから中煎りの豆でラシードさんが、深煎り豆で香具師がコーヒーを淹れてみた。


 エリザベスさんが大袋を出した。

 「熱帯号印 コーヒー豆 浅煎り 販売者 エチゼンヤ商会」、「熱帯号印 コーヒー豆 中煎り 販売者 エチゼンヤ商会」、「熱帯号印 コーヒー豆 深煎り 販売者 エチゼンヤ商会」の三袋だ。

 「魔女印 角砂糖 販売者 エチゼンヤ商会」、「魔女印 クリーミングパウダー 販売者 エチゼンヤ商会」もある。


 空の小袋多数。ちゃんと大袋と同じようにプリントしてある。

 それにコーヒーミル、ドリッパーとサーバー一体型のもの、フィルターを10セット。いずれもエチゼンヤ商会謹製だ。


「豆は湿気るといけないので線指輪に収納しておいてください。使う時には小袋に小分けしてください。最初から小袋に小分けしておいてもいいですが」


 ラシードさんが一式収納した。

「おい、香具師、これは儲かりそうだ。多分見本を配ったら癖になって次回は必ず購入するだろう。儲かるぞ」


「そうですね。禁断症状が出そうです」

 香具師が久しぶりにやる気になったようだ。


「足りなくなったら観察ちゃんに言ってください」

「承知した。値付けはどうしましょうか」


「まずは金持ち、美食家、好事家、蘊蓄野郎、高級宿、高級料亭に高値で売ったらいかがでしょうか」

「そうだな。それだと金があるやつしか飲めないが」


「普及品があります。これです」

 エリザベスさんが瓶入りの粉末コーヒーを取り出した。


「これは適量をカップに入れてお湯を注ぐだけで出来てしまいます」

 カップにスプーンで粉末コーヒーを入れ、お湯を注いでラシードさんと香具師の前に置いた。


「これは、ほとんど豆から淹れたコーヒーと同じ味だな」

「そうです。まずは高値で豆から淹れるコーヒーを普及させて、それからこの粉を売る。豆を挽いた方が新鮮な香りでしょうから上流の方々、高級料亭などは優越感、プレミアム感で引き続き豆を買うでしょう。豆の炒り方にもこだわり始めるかもしれません。炒ってない豆も引きがあるかもしれません」


「なるほど。こだわり始めると粉には見向きもしないか」

「はい。そうだと思います」


「シン様はこれからどちらに?」

「そうだね。山の中の道にするか、山裾の道にするかだけど、山の中を通る道にしてみようと思う」


「そうですか。おれたちはベーベーがいるのでいつも山裾で砂漠の端でもある道を進んでいます。二つの道は先の方で合流し、ランソーという街があります」


「合流するところは平地?」

「いや、まだ山の中ですが、山はだいぶ低くはなっています」


「まだまだ平野には到達しないの?」

「はい。ディースからここまでの距離を基準にすれば、ランソーからその距離の二倍強でやっと平野になります」


「先が楽しみだ」

「そういう人は珍しいです」

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