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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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211/240

711 戦後処理 (上)

 敗残兵は、後ろから追いかけられる気がして谷道を急いだ。谷を出るとホッとしてもらった食糧を食べた。人心地がついて、最初の街に向かった。街はしっかり門が閉められていた。


「頼もう。頼もう」

 城壁の上から声がした。

「なんだ」

「我々軍は隣国に攻め入り負けた。兵200が全滅した。ベラトールの辺境伯の口上がある。王都に連絡してくれ」


 城壁の上から見回してみても、3人の兵しかいない。

「待ってろ。開ける」


 3人を中に入れたらすぐ門を閉めた。3人は確かに正規兵の服を着ている。

「政庁で話をしてくれ」

 政庁に案内した。


 政庁の会議室で兵が街衆に取り囲まれた。

「事情を聞こう」


 兵が話す。

「知っての通り我々兵200は、街の援助もなく、バーレスに侵攻した。谷道の国境を越え、辺境伯の砦を目の前にしたところで、バーレスの兵に襲われ全滅した。バーレスの兵は崖を駆け降りて来てその勢いのまま兵を斬り、止まらずに向かいの崖を登って行った。半数の兵が倒れた。さらにもう一回崖を走り降りて来た兵に斬りつけられ、全滅した。兵が突撃してくる合間には両方の崖から石礫が降って来た。倒れた兵もいる」


「あの急峻な崖を駆け降りて来たのか」

「ああ、信じられないがそうだ。長く伸びた兵列に横合いから斬り込まれた。向き直る暇もなく切られた。彼らは一回剣を振っただけで向かいの崖を登って行った。敵兵が駆け抜けたと思ったら斬られていた。前からは兵が押してくるし、前に気をとられると石が避けられない。そしてもう一度崖を駆け降りて来た兵に斬られてほとんど全滅した」


「それで俺たちは投降した。辺境伯の口上を預かって来た」

「聞こう」


「辺境伯はこう言った。貴国の兵は我が国に侵略し、我が国の領土内で戦死した。兵の遺体は国境まで運んでおく。遺体を貴国の領土に運び入れる際は貴国の領土に立ち入るが、速やかに引き上げる。我々は貴国を侵略することはない。安心して兵の遺体を引き取りに来るが良い」


「他にいうことはないか」

「食糧は持たせてくれた。おかげでここまで辿り着けた」

「わかった。休んでいてくれ」

 兵を休憩室に案内した。見張り付きだ。


「どう思う」

「兵は街からの補給がなく進軍して行った。相当疲弊していたはずだ。元気な兵に斬り込まれればひとたまりもなかろう」

「おれもそう思う」


「両隣の街と合同で情報収集隊を出そう」

「辺境伯の口上はどうする?」

「第一報として、聞き取った内容と、辺境伯の口上を書いて、兵3人に署名させて、飛脚便で王都に送っておこう」

「わかった。そうしよう」


 かくして飛脚便が王都に向かい、三つの街の合同情報収集隊が国境方面に出発した。

 合同情報収集隊はいつでも逃げられるように谷道を慎重に進んだ。やがて国境近くなり異臭が漂って来た。200近くの遺体が整然と並べられていた。みな国の正規軍の軍服を着ていた。


「大変だ。本当だ。すぐ戻るぞ」

 合同調査隊はすぐ戻って、各街に報告した。


 街では隣国が運んでくれ整然と安置してくれた自国民の遺体を放ってはおけず、軍を抜けて来た元軍人を中心に荷車を引いて現場に向かった。


 山の崖下は岩が多くとても遺体を埋める穴が掘れない。荼毘にするにしても遺体は200近くでとても薪がない。街衆が人を出して、谷の入り口に遺体を埋める穴を掘った。


 荷車が兵を運んでくる。身元がわかる者は墓の位置を記録し墓標に名前を書いた。また遺品も回収した。荷車は何往復もした。とても一日では終わりそうになかった。遺体は傷む。さらに近くの街に協力を依頼し、人海戦術でようやっと翌々日には遺体を全て埋葬できた。墓標が200近く立つ集団墓地ができた。


 エクシトゥスの謝罪の特使が街々に戦争は終わったと告げながら谷道の入り口まで着いた。

 そこには重苦しい雰囲気の集団墓地ができていた。特使一同は集団墓地に一礼して谷道に入る。


 国境近くの兵の遺体が並べられていたあたりは血が土に染み付いて異様な雰囲気があった。ここにも一礼して足早に通り過ぎる。やがて谷道がどす黒くなって来た。兵の血を吸ったのだろう。そこを抜けると辺境伯の砦の街は目前だ。

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