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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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210/235

710 既にして戦端は開かれた

 国境は谷道の中間だ。大きな岩に国境線が刻まれているだけだ。ただ両国とも谷道の中間に国境警備所を作るのでは補給が大変なのでそれぞれ谷の入り口に警備所を作っている。バーレス側は砦の街付きだ。


 エレーネさんの兵隊と訓練を終わった辺境伯ベラトールが率いる軍が交代した。双方とも砦前に集合。整列してベラトール辺境伯がお礼を述べ、エレーネさんが応える。ベラトールの軍が敬礼して、エレーネ女王の軍が転移して行く。


「今日から我らが国境警備にあたる。すぐ隣国の兵が押し寄せてくるだろう。作戦通り直ちに配置につけ」

 辺境伯の言葉を受けて、軍が別れて進軍して行く。


 ついでに国境に看板を設置しておく。

「警告 ここからはバーレス国である 我が国に入った侵略軍は殲滅する 引き返せば追走しない バーレス国」


 街の警備 正規軍100 家族軍300

 山地戦  正規軍200 家族軍500

 谷道   正規軍200

 補給   家族軍200と子供達、集団指導体制のメンバー5人。


 山地戦グループは、急峻な山の両脇の崖に布陣。

 谷道グループは砦から1キロくらいの位置に布陣。


 補給部隊は山地戦グループと谷道の軍に食事を運ぶ。


「おい、大変だな」

 代表が貴族3人と商業組合組合長に話しかける。


「そうですね。これが戦争なのでしょうね」

「戦争の実態は知らなかった」

「まだ戦が始まっていないのに補給だけでこんなに大変だとはな」


 食糧を担いだ5人は山の中腹の道がないところを木に捕まりながら滑り落ちないように歩いて、ところどころに固まっている味方に食糧を配って歩いた。


「しかし、図上であれこれ話し合っても、全く実態はわからないな。今回はいい経験になった」

「ああ、おれは貴族でこういう前線のことはまるで知らなかった」

「まったくだ」


「こういう働きをしている人がいるんだな」

「こういう働きがあって中央でぬくぬくしていられると思うとなんだか申し訳ないな」

 背負った食糧を配り終わって山の中腹を戻って行く。何回も砦と山の中腹を往復して食料を配る。


 観察ちゃんから、隣国の兵200が国境を越えて進軍してくると連絡があった。まもなく接敵である。


 敵国の兵がベラトール辺境伯側の谷道の兵に近接した。矢の応酬があって、敵国の兵が押してくる。少し揉み合い、ベラトール側の兵は徐々に下がる。

「敵が下がるぞ。攻めろ」

 隣国の兵がかかってくる。さらにベラトールの兵が下がる。隣国の兵は狭い谷道に長く伸びている。


 砦まで数百メートルになった時、甲高い笛の音が谷に響いた。家族兵が一斉に投石紐で石を投げる。

「おい。石飛礫の時間だ。俺たちもやるか」


 谷の中腹にいた5人、懐から投石紐を取り出した。

 紐の片方を手首に巻き付け真ん中に石を挟んで反対側の紐を握りぐるぐる振り回す。木の間を狙って勢いがついたら紐を離す。石が当たった。木の幹の端にあたった。失敗と思ったら思わぬ方向に石の軌道が曲がり、谷道へ飛んでいって隣国の兵の後頭部に当たった。

「当たった」

「まぐれだ」


自信がない貴族、石を上に放り投げた。敵の頭上に落とす作戦である。見事に放り投げられた石。落ちてくる。自分たちの頭上に。かろうじて避けた。

「危ねえ。お前のところには2割り増しで物を売る」

 商業組合の組合長だ。


 言いながら組合長が投げる。紐を離すタイミングが悪かった。先ほどの貴族の方に飛んでいく。危うく避けた。

「おい。前に投げろ。さっきの割り増し分は無しだ」

「すまん」


 代表が投げる。木の間をすり抜けて飛んでいく。落ちた。敵兵の手前だ。

「おしい」

 本人はそう言っているが誰もそうだとは思わない。


 敵国の兵に一斉に山の斜面から石が飛んでくる。あるは直接兵に飛んできて当たり、あるは上から落ちてくる。前からはベラトールの兵が一転攻勢に出てくる。隣国の兵は大混乱した。


 また甲高い笛が谷底に響く。

 石が止んだと思ったら、谷道の崖から兵が駆け降りてきた。

 駆け降りてきた勢いのままに谷道に沿って長く伸びた隣国の兵の間合に入ると抜刀、抜刀の勢いのまま斬って納刀、止まらずに川を渡り反対側の崖を登って行った。

 あっという間に隣国の兵は半減した。ベラトール側からは無傷の兵が谷道を押し出してくる。


 笛が響き渡る。

 混乱している隣国の兵に石があたる。集団指導体制5人組も上達したようだ。上に投げても、木の梢を越えて谷道の兵に当たるようになった。両側の切り立った崖から石が降ってくる。逃げ惑う兵。当たりどころが悪ければ戦死だ。


 笛が鳴って石がやんだら山をベラトールの兵が駆け降りてくる。第二波だ。斬り込んで川を渡って山肌を登って行く。隣国の兵はほぼ全滅した。

 生き残った数人は投降した。


 辺境伯が投降兵に告げる。

「国に帰って報告せよ。貴国の兵は我が国に侵略し、我が国の領土内で戦死した。兵の遺体は国境まで運んでおく。遺体を貴国の領土に運び入れる際は貴国の領土に立ち入るが、速やかに引き上げる。我々は帰国を侵略することはない。安心して兵の遺体を引き取りに来るが良い」

 数人の兵に食糧を持たせて放してやった。


「ものども我々は勝った」

「おーーーー」

「敵とは言え家族もおろう。遺体は国境まで運んで整列させろ」

「おーーーー」

 兵は砦からありったけの荷車を持ち出して、兵の遺体を谷道の中間点の国境まで運んで隣国側に整然と並べておいた。

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