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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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705 ローコー達はシルヴァ商業組合組合長と夕食 & 一夜明けた歓楽街のボスの屋敷

 広場で何食わぬ顔をして商売に勤しんで、日が陰るころ店をたたんで商業組合に行き、シルヴァ組合長と合流、宿に案内された。荷馬車は宿で預かってもらった。


 宿は表通りから離れたところだが、高級住宅街の中の落ち着いた宿だった。知る人ぞ知るという高級宿だ。


 部屋は豪華で寝室二つに居間がついていた。夕食は部屋に運んでもらった。

「今日はご活躍だったそうで」

 シルヴァが切り出す。

「いやなに。掃除を少し。寝室を除いて綺麗に掃き出しておいた」

 ローコーが答えた。


「そうですか。ありがとうございます。街のみんなも困っていたのですが、衛兵の数が少なく、相手の方が数が多く手がつけられなかったのが実情です」


「今度はそういう者達が集まり出した時に手を打った方がいいね」

「わかりました。この街の運営は各組合の代表が集まって運営しています。そのように話しておきます」


「この国は長いのかい?」

 ヴィーラントが聞いた。

「ああ、20年くらいだ。長いと疑われる。そろそろ潮時だな。この出兵騒動が終わったら国へ帰ろうと思う」


「そうか。もう人では引退時期だろう。それがいいだろうな」

「みんなは楽しそうだが何をやっているんだ」


「俺たちか。話は遡るが、このローザリンデが魔力がないことを悲観してな」

「待て、魔力はまれに見るほどあるぞ」


「もともと魔力があったのだが、シン様の説明だと魔力が滞っていて表に出てきていなかったらしい。それで魔力がないと思って国を出て行った」

「辛かったんだろうな」

「はい」


「それでエルフハンターに捕まってしまった」

「よく売られなかったな」


「山をいくつも越えた遠くからシン様が気づいて助けてくれた」

「さすが妖精王様だな。エルフハンターはどうしたのか。下手をすると国ごと引っ越すようになる」


「エルフハンターの記憶を消して、そのまま放置。彼らは探索を手がかりなしに終えて、雇い主の元に帰って、雇い主から病気をうつされて雇い主もろとも全員死亡した」

「なんと、出来すぎた話だ。妖精王様か」


「そうだ。エルフハンターは雇い主から病気をうつされ死亡した。探索との関連は何もない。疑いようがない。だから引っ越さなくて済んだ」


「俺の国にも魔力のないエルフがいる。もしかしたらローザリンデさんと同じかもしれない」

「私の娘以外にも何人か魔力がないと言われていた者がいて、シン様が治してくれた」


「俺の国にも妖精王様が来てくれないかな」

「頼んでみたら」

「妖精王様だぞ。頼めるのか」

「気さくな方だ。俺たちがこうして行商人をしているのも、生きていく意欲の減退、生きがいが無い俺たちを見かねてローコーさんから人の世界で働かないかと提案があってシン様がその構想を受け入れてくれたからだ。若者50人が応募した」


「人の世の中で50人もエルフがいて大丈夫なのか。寿命が違うだろう。すぐばれる。数が多ければさらにばれやすい。いても20年くらいがいいところだ」


「ところがな、ここにいる俺たちの雇い主のローコーさんもほとんど俺たちと同じ寿命だ。それより長いかもしれん。そういう人たちが多くいるので長命エルフがいても不思議がられない。耳は人の耳に偽装しておくが。それにいちどきに50人ではない。交代だ」


「俺たちと同じくらいの長寿の国があるのか」

「全員長寿ではない。シン様関係者だけだ。シン様の国の隣だ。准神国だろう」

「妖精王様の国があるのか」

「ある。俺はまだ行ったことはないが」


「妖精王様の国はどんな方が住んでいるのか」

「妖精王様と妖精女王様、そのご家族、眷属、仕えるもの達、慕う動物達だな。それにもちろん妖精様だ」


「妖精女王様もいらっしゃるのか」

「ああ。お二人と家族、眷属の皆さんのエネルギーが妖精様を生み出したみたいだぞ」

「本当の妖精王様、妖精女王様か」

「本物だ」


「来てもらいたいが敷居が高いな」

「シン様はここを通るだろうから頼んでみたらどうだ」

「そうしようかな」

「ああ、そうした方がいい。ローザリンデもそうだったが、魔力がないと肩身が狭い。それが一挙に解決するのだ。親も友達も本人も泣いたぞ。病気がローザリンデと同じならだが」


「夢のような話だな」

「現実です。生まれてからずっと魔力のなかった私がシン様にお会いして、アカ様、妖精女王様ですが、アカ様に治してもらい、すぐ魔力が発現しました。ほんの一瞬で治りました」


「一瞬で治るのか」

「はい。急に魔力が出現しましたので制御に苦労しました。制御に慣れるまではしばらくかかりました」


「魔力がありさえすれば制御を習得するまで時間がかかってもなんでもない。魔力がないと言われていた人たちが喜ぶな」

「はい。みんなお祝いをしました」


「俺も妖精王様に頼んでみる」

「是非そうした方がいい」


「わかった。貴重な話を聞かせてくれてすまなかった」

「同じエルフだ。いいってことよ」

 それからエルフ同士情報交換して夕食は終わった。


 翌朝のボスの家。

 隣に冷たくなった老人が寝ているのに気がついた女性の悲鳴が響き渡る。

 シーツを巻いて寝室から逃げ出てみたが誰もいない。家中探しても誰もいない。


 慌てて寝室に戻り、疲れて寝込んでいたご同業の人を起こした。

 寝ぼけ眼で起きたが、ベッドの上の痩せ衰えた骨と皮の老人の死体を見て、悲鳴を上げるのであった。

 最初に起きた女が

 「家の中に誰もいない」

 全員慌てて身支度をして、料金はもらわなくてはと金目のものを持って逃げた。


 朝、衛兵詰め所に投げ文があった。ならず者の家がおかしいと書いてあった。


 衛兵は困った。ならず者は衛兵より数が多い。うっかり行って騒動になると衛兵は全滅である。どうするか協議していると歓楽街から使いがあった。歓楽街から使いがあるのは初めてだった。


 使いの内容は、親分の家がシーンとして誰もいないようなので、見に来てくれとの依頼だった。

 しばらく協議したが、誰もいないようなら行ってみるかと、衛兵全員でボスの家に向かった。


 現場に着くと確かに物音ひとつしない。裏の通用口が開いたので、全員で入ってみる。表門に門番がいない。玄関で声をかけても誰も出てこない。おっかなびっくり玄関のドアを開けるが鍵はかかっていなかった。中をのぞいてみても誰もいない。全員で入ってあちこち部屋を見るが誰もいない。


 最後に寝室のドアを開けてみたが、部屋の中は御乱行の跡があり、ベッドの上に裸の骨と皮の男が死んでいた。


「おい。これは歓楽街のボスだ。骨に皮が張り付いているような男だったか?」

「いや。この間見かけた時は油ぎって太っていた」

「信じられん。数日でこうなったのか。わからんが死亡したのは事実だ。さんざ悪行を重ねて来たが最後はこれか」


「どうする?これはどうみても殺人ではなく、御乱行の果ての陰虚による死亡だろう。お相手は夜の街の女性だな。起きて慌てて逃げたのだろう。部屋が荒らされている」


「夜の相手は引っ括るか」

「いや。料金を持って行ったということでいいのではないか。御乱行の跡をみると相当料金をもらわなくては割に合わないだろう」

「そうだな。家族も使用人もいない。街の運営会議に報告しておしまいだな。今月の当番はどこだっけ」

「商業組合だ」

「では行こう」


 衛兵隊長と部下二人で商業組合を訪ねた。

 用件を受付に話すとすぐ組合長室に通された。

 組合長が待っていた。


「お揃いでどうなさいましたか」

「今朝、衛兵詰所に歓楽街のならず者の屋敷の様子がおかしいと投げ文があり、対応を協議していたところ、歓楽街から使いがあり、親分の家が誰もいないようだとのことでした。全員でボスの屋敷に行ってみると裏の通用口から入れたので入って、玄関で訪いを問うも誰も出て来ず、鍵は開いていてドアが開き、邸内には誰もいませんでした。最後に寝室を確認するとベッドの上に干からびたボスが死んでいました。御乱行の果てのようでした」


「歓楽街のボスの配下は少なくとも50人は居た。それが一人も見当たらないということは、干からびるまで励んでいるボスに嫌気がさして出て行ったのではないか」

「そうかもしれません」


「50人一度に殺せるかという問題もあるが、もし何者かが忍び入って50人殺害したとしたら、死体は必ず残る。50人の大人の死体はすぐには処分できないだろう」

「まことに」


「しばらく経って子分が出てこなければ逃げたのだろう」

「干からびたボスはどうしましょうか。外傷はどこにもありません」

「励みすぎたのだろう。自業自得だ。無縁墓地に葬ってやれ。しかし骨と皮ばかりになるまで励んだとはお相手した方もさぞかし大変だったろう」


「部屋の中の金目のものが消えていたのですが、料金として持ち去ったと思って捜査はしていません」

「それでいいだろう」

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