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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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701 ローコー一行、行商をしながら進む

「尾行班が心配するといけないからそろそろ行きましょうか」

 ユリアーナが言ってみんなでかまどなどを片付けた。


「王都までどのくらいか聞くのを忘れたな」

 観察ちゃんが教えてくれます。馬で一日、徒歩で一日半。


「ゆっくり行こう。行商をして行くぞ。儲けるぞ。しかし、自白剤は売れないな」

「そうですね。あれでは神薬です。もう少し効き目を落として、少し自白するくらいなら自白薬は売れるかも知れませんね。記憶喪失薬は神薬で危ないでしょう」


「まあ、効き目が少なければ無理に薬を多量に飲ませて中毒を起こすかもしれん。やめておこう。やっぱり薬はあれに限る。そうだ。思い出した。男ばかりではいけないから、女性用高級化粧品を作る予定で器をデザインしてもらいたい」


「どんな化粧品でしょうか」

「一つは、いわゆる白粉だ。今我が国では禁止しているが、今までの白粉は白くてのりがいいので使われていたが、やがて顔が黒くなる。毒だ。魔女が毒のない白粉を開発中だ。まずは王妃連中に売り込む。そのため高級容器が必要だ」

「なるほど。そんなものですか」


「ヴィーラント、白粉は危険を犯しても人の世の女性は使っています。我々は魔法もあり使いませんが」

 ユリアーナが人の世の解説をする。


「するとユリアーナの顔色は魔法を解くと顔色が悪いのか?」

 余計なことを言うヴィーラントである。

 ユリアーナの手から炎が噴き出す。


「あち、あち。すまん、すまん。素顔も顔色は良い。リンダ頼む、宥めてくれ」

「今のはご主人が悪いので出来ません」


「ローザリンデ、頼む」

「お母さん、炎はかまどに火をつけるだけでなくそうやって使うのでしょうか」

「覚えなくていいのよ。おほほほ」


「ヴィーラントさん、だめそうだな。諦めな。女性にとって顔はこのように大切なものだ。大切なもののための金持ち用化粧品には高級容器が必要だ。それと口に紅をさすが、それの高級容器のデザインもお願いする。作るのはエチゼンヤの工房で作らせよう。待て待て、エリザベスとイサベル用のは作ってくれ。うるさくてかなわん。ご機嫌を取っておこう。ユリアーナさんとローザリンデ、リンダの分も罪滅ぼしで作った方がいいな」


「わかりました。ユリアーナとローザリンデの意見をよく聞いて考えてみます。それと品物がどんなものになるのかエスポーサ様から聞いてみます」

「おう、頼まあ。急がなくていいぞ。普及品はヴィーラントの容器を見てそれらしく値段との兼ね合いを考えて作ろう」


「普及品も作るので?」

「当たり前だ。普及品は香りとか高級品のために添加したものは除いて安く作る。しかし基本的な成分は同じだ」


「それでは安いものでも効果は同じなので?」

「人は高級品を手にすると満足感、優越感に浸る。付加価値に目を取られ基本的成分が同じ普及品など一顧だにしないものだ。高級品は利幅が大きい。金持ち、見栄っ張りには高級品を売りつけて儲ける。基本的成分が同じで安い製品も作ってお金がない人にも手に入りやすいようにする。全女性が健康で美しく過ごして欲しい。それがエチゼンヤの願いだ」


「ははあ、なるほど。安い化粧品はエチゼンヤさんの良心というわけですか」

 感心するエルフの皆さん。


「毒の白粉は駆逐しなければならない。毒が入ってなければ真似して作るのは構わない。むしろ作ってもらって、こちらは忙しくない程度に作ればいい。こっちは女神印だからブランド力が違う。開発元、安心、安全の女神印だ。まあ多少高くても買うだろう。普及品を中級品の値段で売れる。儲かる」


 ヴィーラント達は結局美談が儲け話になった。だが毒の白粉がエチゼンヤの高級品、中級品、模倣の普及品で駆逐されるのも事実だろう。儲けてなお目的を達する、流石エチゼンヤと感心するのであった。


「それで小さい集落が見えて来た。何を売るんだ」

「あの規模だと生活必需品でしょうか。しかし買えるかどうか」

「確かにな。声だけかけて通過するか」


 集落に入った。広場というほどのことでもないが細い木が一本生えていて少し広いところに荷車を止めた。荷車の幌をめくって、商品が見えるようにして集落の端から端まで声をかけて回った。十数軒だからすぐ終わった。物珍しさもあるのだろう。奥さん連中が見に来た。みんな買う気はないように見える。一人熱心に包丁を見ている。


「あのう、この包丁は高いんでしょうか」

「それは普通品だからそんなでもないが長持ちするように作ってあるからやや高いと思うかも知れない」

「砂金も塩もないのですが麦でいいかね」

「いいぞ」


 奥さん家に帰って小麦一袋を担いできた。

「これでいいかね」

「なかなかいい小麦だ。半分でいい」

「そうかい。すまないね。それじゃ包丁をお願いする」


 ユリアーナが荷馬車から袋を出したふりをして収納から出して袋を持ってきて、小麦を半分入れた。

「毎度あり」

 ヴィーラントが包丁を渡した。奥さんはお辞儀をして大事そうに持って帰った。


「あのう、まだ包丁はあるかね」

「あるよ」

「同じものをおらにも小麦で売ってくれるかね」

「いいよ」


 奥さんがすぐ小麦の袋を担いできた。今度は半分だ。

 小麦の品質を確認して小麦と引き換えに包丁を渡した。


 結局包丁が5本売れた。

 もう買う人はいそうもない。

「では行くか」


 荷馬車の幌を下ろして、小麦はユリアーナが収納して出発した。

 最初に包丁を買った奥さんが道に出てきた。

「ありがとう、ありがとう。あんな切れる包丁は初めてだで。今までは新品でも切れなかった」

「そうかい。大事に使ってくれ」

 さっき包丁を買った人たちが出てきて口々にお礼を言われた。


「しょうがない。砥石はおまけだ。切れなくなったら研いで使ってくれ」

 砥石を出して包丁を買った人に渡した。

「ありがとう、ありがとう」


 何だか物を売って恩人のように言われてしまった。

 集落を出た。


「どん詰まりの集落だ。悪徳商人がおそらくバッタもんなどを高い値で売りつけていたんだろうな」

「本物を見たことがないのでしょうね」

「そうだろうな。鈍包丁を包丁と思っていればうちの包丁は異次元の切れ味だろう。普通品でもランクは低いが鋼だからな」


 商売をしながらいくつかの集落をすぎて、街が見えてきた。城壁で囲まれた街だ。

 門番がいて身分証明書を求められた。ティランランドの身分証明書を出した。何かあればいいらしい。何も言われずに入れた。

 街の人口は1000人にも達しないだろう。田舎の街としてはまずまずの大きさだ。すでに夕方に近いが街は突っ切ることにした。野宿の方が気が楽である。中央広場を経由して入って来た門と反対側の門から出た。夕暮れまで前進。街道から外れて野宿だ。


 夕食は言わずと知れたローコーさんの線指輪から出したスパエチゼンヤ高級旅館謹製夕食だ。誰もいないからかまども作らない。

「美味しいです」

 ローザリンデの感想。


「そうだわね。おちびさん三人に食べさせてあげたかったわね」

 ついジゼルさんに引き取ってもらった三女児のことを思い出してしまったユリアーナである。

 「どうしているかな」

 しんみりしてしまったユリアーナとローザリンデである。

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