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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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519 コット狩人組合でオリメさんとアヤメさんが怪我人の傷を縫う

 怪我をした者の家族なのだろう。僕たちを追い返し怪我人を解体係に縫わせようとした老人を引き倒して猿轡を噛ませた。

「怪我人を一階の会議室に運べ。解体係に縫わせるな。兄ちゃん、すまねえが頼む」

「わかりました。行きましょう」


 怪我人は一階の会議室のテーブルの上に乗せられた。一人若い女性が顔を切られている。鋭い線が頬から首にかけて三本。並行に切られている。爪でやられたのだろう。もう少しで首の血管を切られるところだった。危なかった。あとは男だ。

 ちらっと見たら男はそんな傷でもない。女性が一番ひどいだろう。


 オリメさんが怪我人を運んできた男達に向かって言った。

「女性は私とアヤメで担当します。男の方はそちらでお願いします」

「おう。わかった。娘はお願いする」


 組合員は傷の縫合には慣れているのだろう。ただ女性の傷は深く、かつ顔に痕が残るので手が出しづらかったというところか。余所者なら後を引かないからほっとしている。

 それにしても解体作業員に縫わせるとは。治るものも治らない。


 オリメさんが16木乃伊の泉の水で傷口を洗った。少し考えてこちらを向くからいいよとサインを出した。

 魔の森の水を傷口の深いところにポタポタと垂らした。首の血管の周りの傷にも垂らした。


 アヤメさんが女性の髪の毛を抜いて魔の森の水であらって針に通してオリメさんに渡した。

「縫います」

 オリメさんが言って、オリメさんは皮膚の下から縫い始めた。糸で皮膚が引き攣らないように、切られた皮膚がぴったり合わさるように縫っている。アヤメさんもうまく抑えている。二人は縫い物の天才だな。多分、傷が治ってしばらくすればほぼわからなくなるのではないか。


 残りの2本の切り傷も同じように縫った。アヤメさんが持参の布で包帯をしておしまい。みんな唖然としている。今までなら治ってもボコボコになるのが普通だが、多分治ったら皮膚が平らになっているだろうとわかった。


「鋭い爪で切られたので助かりました。また腹部なら対処できませんでした。不幸中の幸いです。女性は今日は動かさないほうがいいでしょう。あとはよく養生してください。包帯はよく洗って煮て日に干した綺麗な布でお願いします。男の人は傷が浅い。動かして大丈夫です」


 女性の傷の深いところと首の血管の周りは魔の森の水の作用で治っているから大丈夫だろう。

 狩人が女性の乗っている机の両脇に机をつけた。転げ落ちないだろう。気が利く。


 老人を引き倒した男の人が涙を流している。娘なんだろうな。お礼を言われた。


「老人や解体する人は大丈夫なのですか?」

「組合長だが、俺の親だ。しばらく猿轡をして牢に入れておく。娘が治ったら牢から出してやる。解体係も本当は嫌だったのだが、バカ親父の命令で仕方なくやっていた。もちろん膿んだりしてよく治らなかった。死ぬ人も多かった。家族には恨まれていた。本人たちもほっとしているだろうよ」


 受付嬢がやって来た。部屋がとれたと男に言っている。

「宿の部屋がとれたから、そちらに移ってくれ。料金は支払い済みだ」

 大部屋を引き払って、受付嬢の先導で宿に移った。

 部屋はコーレスの宿とよく似ている。二間続きだ。


「今日はありがとうございました。おかげさまで妹を失わずにすみました」

「妹さんでしたか。どういたしまして」


「ところで二人増えたような気がしますが。門番も父も誰も気がつきません。私の見間違いです」

 受付嬢がニコッと笑った。油断も隙もあったものではない。なかなか優秀だ。

 受付嬢は帰って行った。


 オリメさんとアヤメさんは、エスポーサが滅びの草原のお得意さんに懇切丁寧に頼んで、お得意さんを切って、それを縫って練習したのだそうだ。

 最初は布と勝手が違うので戸惑ったそうだが、縫い跡がついてもエスポーサが綺麗にしてくれるので問題はなかったと言っています。

 すぐ上手になってエスポーサが手入れしなくても綺麗に治ったとエスポーサが言っています。縫い物はなんでもいいらしい。

 それにしてもお得意さんは骨を折られブランコに骨継ぎされたり、切られてオリメさんとアヤメさんに縫われたりいつも大変な目に遭うな。


 遅くなったから布団は敷いてあったので、すぐ横になる。お狐さんが来てお話をしてくれる。いい子いい子となでてやる。みんなすぐ眠りについた。


 宿で朝食をいただき寛いでいると昨日の受付嬢とその父親がやって来た。話があるというので食堂を出た。宿の会議室のようなところに案内された。


「頼みがある」

「なんでしょう」


「昨日娘達に傷を負わせた獣の討伐に行くのだが加わって欲しい」

「私達は狩の素人ですが」

「ご謙遜を。特級組合員証をお持ちの方は滅多にいない。当組合でも深傷を負った娘だけだ。それにシン組と書いてあった。特級組など噂には聞いたことがあるが見たことはない」

 あのたぬき親父、碌でもない組合員証をくれてくれたな。よく確認しなかったのが失敗の元だった。


「特級の娘と一級の仲間がやられてしまって後は一級が数人いるだけだ。娘のチームはうちで最高のチームだった。娘達をやった獣を倒さないと安心して狩ができない。頼む」

「わかりました。二人後を追って来ますのでその者達にやらせましょう」

 ティランママとティランサンは見るからに強そうだからね。狩人達も安心するだろう。


「シン様達は?」

 僕らはそうだな。参加しないとまずいか。

「大勢で行っても逃げてしまうでしょうから気づかれないように遠巻きについていきます」

 観察ちゃんが迎えに行ったので二人は今頃門に近づいているだろう。


「後からくる二人は今頃門に並んでいると思います。大太刀と太刀を背負っていますからすぐわかると思います。マルティナとサントスと言います。門を通してくれますか」

「わかった。迎えに行こう。すまないが支度をしたら組合まで来てくれ。マルティナさんとサントスさんも組合に案内する。ではよろしくお願いする」

 巻き込まれてしまった。まあいいか。


 部屋には何も置いてないからぶらぶら行きますか。

「この街もコーレスと同じような作りですね」

 マリアさんの感想だ。

「確かにそうだね。門から入ったところに狩人組合、食肉組合、商業組合などがあって街の真ん中に中央広場がある。同じような生活の仕組みなのだろう。狩が中心なんだろう」

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