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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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689 ローコーはエスポーサ魔女が作った傷薬とあれを国王に売り込む

 宮廷

 侍従長の元に暗部が戻って来る。なんと爺さんを見失ったという報告である。

 怪しい爺さんではあるが、なにしろ効果抜群の傷薬である。多少の怪しさには目を瞑ることにした。


 国王の執務室に急ぐ。

「おい、なんだその顔は、頭は、首は。治っているじゃないか」

 国王は椅子から立ち上がった。

「痛い、痛い」

「無理をしないほうが。私は治りました」

 その場でポンポンと飛び上がって見せる。


「どうしたのだ」

「爺さんが薬を売りにきましてね。高かったですが効果覿面。すぐ治りました」


「いくらだ」

「容器ひとつで砂金大袋一つです」

「それでいいのか」

「それが、面積とか、傷の状態とかで使用量が変わるらしく、私の場合全部で容器6個使いました」

「それで治ったのか」

「はい。ご覧の通り全く傷はありません」


「治れば砂金大袋6袋など安いものだ。余の分はどうした」

「午後一番で持って来ることになっています。それから何やらあれに効くドリンクもあるとか、新製品もあると言って出ていきました」


「あれとはあれに効くのか」

「はい。瓶にラベルが貼ってあって赤い丸の中で青毒蛇が雄々しく頭を持ち上げていました。いついかなる時でも飲めば一晩中元気で愛人によし、その手の店でもよし、古女房でも良し、三方、いや八方良しの青毒蛇ドリンクで各国の上層部、豪商などが密かに愛用と言っていました」

「効きそうだな。いくらだ」


「それはうっかりしました。値段は聞きそびれてしまいました」

「高いのだろうな。しかし話通りだと高くても売れそうだ。来たら買おう」


 午後になった。ローコーは律儀に暗部が見失った森から出てきた。若い立派な体格の男を二人連れている。暗部がついていく。


 爺さんは城門で門番に書類を見せている。門番が敬礼した。爺さんは街に入っていく。


「おい。あの爺さんは何を見せた」

「侍従長発行の通行証です」

「なるほど」


 暗部は爺さんたちを追っていく。爺さんたちは王宮に入って行った。もちろん侍従長発行の通行証を使って。


 爺さん一行は侍従に案内されて侍従長の執務室に。

「よく来てくれたな。実は陛下も同じ怪我で、すまないが陛下のところまで御同道願いたい」

「わかりました。こちらは手代二人です。連れて行きますが」

「結構だ」


 国王の執務室に案内された。

「陛下、傷薬の薬師一同を連れて参りました」


「そうか。早速だがみてくれ」

 侍従が頭、顔、首に巻いてある布を解いていく。


「傷を拝見しましょう。これはひどいことをされましたな。切られ与三郎ですな。普通の薬では治っても傷が残ります。この傷薬なら跡形もなく治ります。頭、顔、首で3個です。傷薬は砂金と引き換えになります」

「おい」

 侍従が出て行った。三人で砂金大袋一つづつ担いできた。へたり込んでしまった。


 侍従長が陛下の頭、顔、首に傷薬を塗った。

 すぐ侍従がタライにお湯を入れて持ってきた。

「どうだ」

 侍従が布をお湯に浸して拭うと全く傷の跡もなくきれいであった。

「きれいに治りました」


 国王は顔と首を撫で頭に手をやる。

「痛くもない。傷が盛り上がったところもない。全く前と同じだ。いくらか皺もなくなったようだ。素晴らしい効果だ。みんな向こうを向いていろ」

 国王はズボンを下ろし股間に巻いた布を解いた。


「爺さんみてくれ」

「これはまたひどい有様ですな。侍医の腕はなかなかですな。竿が切れてしまうところをよく治療してあります。切られ与三郎もここまでひどくはないでしょうな」


「切られ与三郎とは何だ」

「色男の与三郎が女をめぐって切られる話です」

「色男なのか」

「はい。陛下のように色男です」

「うむ。そうか」


「侍従長は3個で済みましたが、陛下のは立派ですからもう一つ追加しませんと」

「そ、そうか。おい。砂金大袋4つ持って来い」


 下を向いている爺さん、俺にニヤッとした。俺の方が立派だという顔をしている。俺も陛下にわからないように頷いた。


 陛下のは粗チンだ。爺さん口先だけで儲けたなと思ったが、陛下は喜んでいるから、砂金大袋は安いものだと思った。しかし、癇癪持ちで狭量、暗愚な陛下を掌の上で転がすとはなかなかこの爺さんも曲者だと思うのであった。俺も転がされたが。


 陛下は向こうを向いて股間に薬を塗り出した。流石に股間では自分で塗っている。

「おお、おお。治る。治る」

 ズボンを引き上げて玉座に座った。


「久しぶりの座り心地だ。褒美を取らす」

 砂金大袋一袋追加になった。


「ところであれもお持ちだとか」

 やれやれ陛下の言葉が丁寧になってしまったと侍従長。

「これですな」

 白狼印の青毒蛇ドリンクを手代が爺さんに渡す。


「これはお聞き及びでしょうが、一本で一晩おさまりません」

「すごいな。いくらだ」


「砂金大袋一袋です。闇の市場ではそれがしが砂金大袋一袋で売ったものが砂金大袋3袋で競り落とされたりしています。私は製造元直販ですから一袋です。それと陛下、新製品があるのですが」


「それはどのような」

「これです。まだラベルを作っていないのですが、雪原号印の滋養強壮剤があるのですが。一応滋養強壮と誰が聞いても良いような名前をつけてありますが、滋養強精剤です。これには15粒入っています。一日一粒で徐々に滋養の効果が出てきて、10日くらい続けて飲むとはっきり強精の効果が出てきます。こちらは一晩中とはいきませんが、いつでも行けるようになります。しかも薬を飲んでいる間は気が向けば確実にそのような状態になります」


「なんと。それは素晴らしいな。たとえば朝一錠毎日飲んでおけば、夜催した場合、効果発揮だな」

「はい。こちらは一晩二、三回は行けるかと。青毒蛇は一晩中ですが人によっては数ヶ月休む必要があります。こちらは滋養成分も入っていますので連日可能です。こちらは大袋二袋になります」


「いや、二、三回で十分だろう。一日二、三回毎日と一晩中だな。飲み始めて10日くらいから効果発揮だな。珍しいものを手に入れたら青毒蛇で一晩中がいいか。でもその後休憩期間があるか。悩むな。両方買おう」


「毎度ありがとうございます。それから治ったばかりですからくれぐれも無理はなさらぬように。青毒蛇はやめて下さい。傷が開いてしまいます」

「それはそうだろうな。わかった」


 陛下は結局、青毒蛇を3本、錠剤を一瓶買った。青毒蛇は一本御下賜された。ありがたい。

「爺さん。それがしにも錠剤を一瓶お願いする」

「はいはい」


 砂金大袋は全部で幾つになった。陛下の傷薬で7、ドリンクが3、錠剤が2、褒美が1、それに俺の錠剤2。計砂金大袋15だ。すごいな。闇に流すと二、三倍になるのか。大変な爺さんだ。


 これをどうやって持っていくのかと見ていたら、若い方の手代がどこからか棒を出して、振り分けにして天秤棒方式で担いだ。半端な一袋はもう一人の手代がひょいと担いだ。

「それではまたのご利用をお待ちしています」

「連絡はどうしたらいいのだ」

「時々寄りましょう」

「そうか」


 三人が軽い足取りで去っていく。砂金大袋14袋担いでも軽やかな歩みだ。化け物連中だな。


 侍従がこちらを見るから首を振った。これだけの薬を持ってきた爺さんだ。後をつけて機嫌を損ねては、陛下の機嫌も悪くなる。多少の怪しさは薬の効果を考えればやむを得ない。

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