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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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688 ローコーはエスポーサ魔女が作った傷薬を侍従長に売り込む

 王宮

 侍従長に来客の取次があった。取り次いだのは侍従である。

「なんだ。アポがない奴には会わんぞ」


「ものすごく効く傷薬を持っていまして」

「紛い物だろう」

「それが試してみようと言ってナイフでそれがしの手の甲を切られました」

「どうした」

「傷薬を塗られたらあっという間に傷が無くなりました」

 甲を見ると確かに傷はない。


「夢でも見たのではないか」

「もう一人侍従がその場にいてその侍従も傷が消えたことを確認しました」

「まあいい。会ってみよう」


 侍従が侍従長の執務室に爺さんを連れて来た。

「これは侍従長様、お初にお目にかかります。旅の薬師でローコーと申します。私どもは主にこれを扱っています」


 取り出した瓶にはラベルが貼ってあって、赤い丸の中に青毒蛇が雄々しく頭を持ち上げている絵が描いてある。その上に白い狼が描かれている。


「いついかなる時でもこれを飲めば一晩中元気で愛人によし、その手の店でもよし、古女房でも良し、三方、いや八方良しの青毒蛇ドリンクで各国の上層部、豪商などが密かに愛用しております。一本行きますか?」

 確かに効きそうではある。


「いや、今はちと怪我をしていて」

「そうそう、傷薬でしたな。これは遠国の深い森の奥に生息しているガマからとった成分が主成分で、致命傷以外の傷ならたちどころに治ってしまいます。試してみましょう。お顔が傷でしょうか。少し布を失礼して」

 爺さんが手際よく顔の布を取り除いた。


「これはだいぶひどいですな。試しに片方の頬に少し塗ってみましょう」

 爺さんが塗るとたちどころに傷がなくなった。侍従長は治らなかったら捕まえて死刑だと思ったが全く傷がなく治ってしまった。

「買おう」


「この容器に入った分で両頬は治ります。砂金大袋一袋になります」

「わかった。後で侍従から貰ってくれ。それからもっとあるか?」

 侍従長は薬の容器に手を伸ばしながら言った。爺さんはサッと容器を手元に引き寄せた。


「夜の商品を扱っておりましてな。色々ありまして現金と引き換えで取引しております。それにしても首の傷は血脈スレスレですな。何かぶつかると血が吹き出して終わりですな」


「首の分と頭であと幾つ用か」

「首で一つ、頭頂で一つですな」

「とりあえず首から上の部分用の3個買おう」

「毎度あり」


 侍従が三人で砂金大袋三つを持って来た。確認して爺さんが傷薬の入った容器三つを侍従長に渡した。爺さんは大きな袋に砂金三袋を入れた。


 侍従長は早速傷薬を塗り始めた。みるみるうちに傷が治っていく。


「お湯と拭き布を持ってこい」

 侍従がすぐ持って来た。お湯を浸した拭き布で顔を拭うと、傷は全くなくなっていた。侍従長は顔を叩いたりつねったりしたが全く異常は無い。


「効いた」

 侍従がポツリと言った。


「実は股間にも傷があるのだが何個使うようか?」

「それはみてみないとなんとも言えません。面積、傷の深さ、皮膚の丈夫さなど色々ありましてな。一概には言えません。」


「ちょっと向こうを向いていろ」

 侍従に言ってズボンを下ろして股間に巻いてある布を解いた。


「爺さん、見てくれ」

「拝見。これはひどくやられましたな。もう少しで竿がちぎれるところですな。よく血が止まりましたな。なかなかの金創医ですな。おや、両方の玉が傷ついておりますな。これは治さないと夜にお相手に愛想をつかれますな。3個あれば何とか」


 侍従が走っていく。砂金の大袋3個を三人で担いできた。すぐ薬と交換した。

「少し待ってくれ」

 向こうを向いてゴソゴソやっている。

「おお、治った」


「無理をすると傷口が開くことがありますのでお気をつけて下さい。ではそれがしはこれで」

 爺さん、どこからか棒を出した。棒の両端に砂金の大袋を入れた袋をくくりつけ、棒を肩で担いで軽々と持ち上げた。

「凄い」

 侍従が驚く。

「何のこれしき」


「待ってくれ。薬はまだあるか」

「テントにありますが。必要ならお持ちしましょう」


「是非来てくれ。午後一番でお願いする。門番にはこれを出してくれ」

 通行証の様なものらしい。ローコーが受け取る。


「今度は手代も連れて来ましょう。すっかり治れば青毒蛇ドリンクが使えるようになりますからな。それと新製品もありますからそれもお持ちしてみましょう」

「うむ」


 爺さんは信じられないことに砂金大袋六袋をホイホイと担いで出て行った。

「後をつけろ」

 暗部が追った。


 爺さんは棒のしなりに調子を合わせながらホイホイと砂金を担いで城門に向かう。城門を出てさらに快調にホイホイ進む。手ぶらな暗部が必死にならないと置いて行かれそうだ。やがて街道をそれ森の中に入って後を追うのが困難になって見失った。暗部は呆然である。今まで尾行に失敗したことはなかったのである。


 元宰相の家

 ローコーが観察ちゃんと戻ってきた。観察ちゃんの中継を見ていたので、みんなニコニコしている。


「儲けた。儲けた。午後また一儲けだ。手代としてブランコとアイスマンについてきてもらおう」


 砂金は、ステファニーさん2袋、薬の開発者の魔女2袋、エチゼンヤ2袋である。みんなニンマリだ。


「しかし、よく効く薬ですね。一般に売れば儲かりそうです」

 オリメさんが聞いた。


「あれは失敗作なのよね。治ったように見えるけど治っていない」

 魔女が作ってローコーが売るので何かあると思ったみんなであるが予想は当たった。


「治っていないとは」

「10日程度で薬の効果が切れるのよ」


「どうなるんでしょうか」

「傷は元の通りよ。売ったら10日経たないうちに逃げるのよ」

「売り逃げだ」

 ローコーさんが笑っている。


 やっぱり魔女の薬だと一同思った。それを平然と売りつけるローコーさんも魔女の一味だと思った。魔男では字が違うまおとこを思い出すから悪魔か。悪魔はまずいだろう、やはり魔男か、マダンと言えばいいのかと悩む眷属一同であった。

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