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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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518 コット狩人組合に泊まる


 コーレスを出た僕らは噂が追いついてくるといけないので、先を急ぐ。人がいなければ駆け足、お昼寝やおやつが終わった後の休憩にはジェナとチルドレンを荷車に乗せ、ブランコが浮かせて引いて、距離を稼いだ。


 宿場町を通り越して夕方にコシ並の街の手前についた。あと2つこの大きさの街を過ぎると、エクバティア並の大きな街に到達ということになる。


 とりあえず街に入る列に並ぶ。夕方近くなので混んでいる。

 大分日が傾いてきたがやっと順番が来た。門番も早く終わりにしたいのか人数を確認したふりをしただけだった。


 観察ちゃんがもう遅いのでどこも宿は埋まっていると言っています。僕らは大勢だからね。なかなか宿は取れないだろう。どうするかな。こちらに来る途中、ぶつかってはねた獣がいた。裏通りで小さいのを荷車に乗せて、とりあえず街に詳しそうな狩人組合に行って聞いてみるか。


 コット狩人組合と看板がある。この前も組合の前についていた名前、コーレスが街の名だったから、この街の名はコットだろう。まだ狩人組合はやっていた。


 受付のお姉さん、ブランコを見ているぞ。ニコニコしている。では行ってもらおう。

 ブランコがカウンターに行った。

「獣を狩って来たのだけ買い取って欲しい」

「はい。組合員証はお持ちですか」

 ブランコがコーレス狩人組合の組合員証を出して買い取ってもらった。支払いは砂金だった。


 組合員証にはあらかじめ日付を書いた。日付は組合員証発行地のコーレスから通常の旅程でかかる日数を今日の日から引いた日付にした。観察ちゃんにその日付とシンと書いた紙を組合員証を発行してくれたおじさんに届けてもらった。意外と早く使う羽目になった。一年先に使い始めればそこから一年有効だったのだけどこれではコーレスで発行日を記入してもらっても良かった。おじさん笑っているかも。


 ブランコが受付嬢に続けて話しかける。

「今ついたばかりなんですが、どこか泊まれるところはないでしょうか」

「遅く戻ってくる狩人のために臨時の宿泊施設があります。狩人組合員だから利用できます。大部屋で寝具もありませんが料金は格安です」

「じゃあお願いします」


「何人でしょう」

 僕らはゾロゾロブランコのところに行く。

 お姉さんびっくりしている。

「ずいぶんの人数で」

「はい。皆家族です」

 ブランコが余計なことを言うからお姉さんのニコニコが減った。


「料金は塩で支払います」

 塩の小袋を見せると驚かれた。このへんに来てもまだ塩の品質は変わらないらしい。どこで混ぜ物をしているのだろう。

 三本セットの匙を出して来て、一番小さい匙一杯が宿泊料であった。

 別棟の2階に案内された。下は解体場である。あまりいたくはないがしょうがない。


 部屋は確かに何もない。だだっ広い部屋だ。窓はある。寝る時はテントでも張って寝たのか。まさかな。きっとごろっと横になるだけなのだろう。本当に臨時だ。相部屋だな。


 考えたがやはりテントを張った。窓際だ。テントには床もあるし、誰か来て相部屋になっても見えないからちょうどいい。

 僕らはテントの中で夕食。寝てしまった。


 夜中、下の方が騒がしい。誰か怪我をして運ばれて来たみたいだ。そういうものの対応は旧大陸では冒険者組合の十八番だったのだけど、ここは冒険者組合がないからな。獣だけだから、冒険者はいらないのだろう。怪我をするのは狩人だ。


 だれか階段を駆け上がってくる。ドアが勢いよく開かれた。テントにびっくりしている気配が伝わってくる。


「あのう、お休みのところすみませんが、どなたか傷の手当てが出来る方はいませんでしょうか」

 さっきの受付嬢だね。しょうがない。僕が出よう。


「どうなさいました?」

「さっきの若い方は?」

「いますが。ブランコに用でしょうか?」


 受付嬢は気がついたらしい。僕に話しかけて来た。

「今5人ほど狩人が怪我をして運ばれて来ました。傷口を急いで縫わなければなりませんが、人手が足りません。どなたか縫える人はいませんか」


 縫い物はオリメさんとアヤメさんが得意だろうけど。どうするかな。まあ門番も人数はよく数えてなかったからいいだろう。

 マリアさんが観察ちゃんと呼びに行ってくれた。


「じゃあ、縫い物が得意な人を連れて行きます。どこですか」

「一緒に来てください」


 テントからオリメさんとアヤメさんが出て来た。服の上に腕がついた貫頭衣のようなものを着て来た。頭はぴったりした帽子をかぶっている。似合っている。手袋はないけど汚れ飛んでけするからいいか。だいたい汚いものはついていない。

 僕とエスポーサ、オリメさんとアヤメさんでお姉さんの後をついていく。


 一階の解体場だ。傷ついた人が横になってうめいている。獣を解体する人が針と糸を用意している。それはさすがにまずかろう。


「解体場では治るものも治らなくなります。どこか場所はありませんか」

 僕が聞いた。

 なんだという顔をしてこちらを振り向いた人がいる。痩せて眼光の鋭い老人だ。この場の責任者なのだろう。


「もう一度言います。ここは汚い。綺麗なところでないと汚いものが体に入り治るものも治らなくなる」

 若い人は頷いている。わかっているのだろうけど、老人が頑ななのだろう。


「昔からこうやって来た。余所者が口を出すな」

「わかりました。そちらのご希望ですから引き上げます」

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