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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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674 テラーサス王国の貴族の子弟はスパエチゼンヤに到着する

「いらっしゃい。エチゼンヤのエリザベスです。今日は疲れたでしょう。皆さんの宿舎はシン様が用意してくれていますので、どうぞ宿舎でお休みください。今こちらに歩いてくる二百人衆に宿舎を案内してもらいます。二区画を使ってください。家族用ですから、一区画5人は余裕です。使い方も人の世の設備とは隔絶していますのでよく聞いてください。今日の昼食と夕食は仕出し弁当になります。宿舎で食べてください。昼食後、スパエチゼンヤを一回り見てもらいます。ツアコンエスポーサさんという者が案内します。昼食後ここに来てください。エスポーサさんは巨木が描かれた旗を持って待っていますからすぐわかります」

 エリザベスが一気に話した。


「エチゼンヤのイサベルです。明日からの研修ですが、まず朝は日の出と共にここに集まってください。基礎体力がありませんので、ここから大手門まで走って行って帰って来てください。さらにもう一度大手門に向かって走って行って、銭湯の営業開始の手伝いをしてもらいます。それが終わったら銭湯で汗を流してください。銭湯のある建物に食堂がありますので、朝食となります。朝食後、スパエチゼンヤ支店に行ってください。商売のイロハの研修になります。昼食は銭湯内の食堂で食べてください。昼食後再びスパエチゼンヤ支店で研修。夕食は銭湯内食堂。全て賄い食ですので負担はありません。夕食後少し休んで、走って宿舎まで戻って来てください。一日の研修は終わりです。あとは自由時間です」

 イサベルの解説が続いた。


 何だかきつそうだ。俺たちは貴族だと思うが、鼻っ柱は折られっぱなしなので逆らう気も起きない。


「そうそう。ここと大手門の駆け足は親切なシン様の眷属か、二百人衆がついてくれます」

 エリザベスが追加する。

 さぼれないということだろう。


「走る時は全力で走った方がいいですよ。あまりゆっくりだと、エスポーサさんが特製のワンワン印ドリンクを持って来ます」


「ワンワン印ドリンクというのはなんでしょうか?」

「さあ、私もわからないのよね。エスポーサさんが魔の森で鍋に薬草とか色々なものを入れてグツグツと煮て作っているらしいのよ。いままで死んだ人はいないわ。大丈夫よ。みんな元気になって走るだけだから」


 みんな魔女を想像してしまった。老婆がヒッヒッヒと笑いながら得体の知れない毒草や魔物の臓物を鍋に投げ入れてかき回している姿がありありと目に浮かんでくるのである。


「はーい。呼んだ。ツアコンエスポーサです。ワンワン印のドリンクのご希望でしょうか」

 白い狼に跨った若奥さん風美女が現れた。今まではいなかった。転移というのであろう。


「エスポーサ様とブランコさんです」

 エリザベスさんが教えてくれたが、エスポーサ魔と聞こえてしまったのはなぜだろう。わざと様をつけたのか。


「あの、まだいりません」

「そう。残念ね。訓練生には今まで全員に飲んでもらって好評だったけど、今回は走るくらいで訓練はないのかしらね」


「そうねえ。シン様から何も言われていないけど、湖の傍だから水練は必要ね。主人を暴漢から守る訓練も必要。魔物から守る訓練も必要ね。頭と体を鍛えなくてはね。嫁さんも探さなくてはならないからナンパ術も訓練が必要かしら」


「ナンパ術の講師は誰からしら。シン様では軒並み女性の方から勝手になびいてしまうからダメね。ゴードンさんかトラヴィスさんなんてどう」

「妖魔に魅入られたり美人局に引っかかったりしているからダメよ」


 エリザベスさんとイサベルさんのおばさん同士の話が始まってしまった。真面目なのか不真面目なのかわからない。


「私のような美女を手に入れられたのだから旦那はどうかしら」

「ダメよ。エスポーサ命だから」

 エスポーサ様が嬉しそうだ。


「いざとなれば青毒蛇ドリンクで」

「それはダメよ。相手が承知していなくては犯罪になってしまう」

 青毒蛇ドリンクというのはよほどの劇薬らしい。堂々としたブランコ様が心なしか後退りしている。


「あのそろそろ宿舎に案内したいのですが」

 二百人衆という人が恐る恐る切り出した。

「忘れてた。じゃ案内してくれる。宿舎への登録はエスポーサさんがやってくれたので大丈夫」


 エリザベスさん、イサベルさん、エスポーサ様、ブランコ様は森の中に歩いていく。何か施設があるのだろう。


 二百人衆に聞いてみる。

「あの方々はどういう方なのでしょうか」

「エリザベス様、イサベル様はエチゼンヤの実質的な経営者です。エスポーサ様とブランコ様はシン様の眷属です」


「経営者にしては剣の達人のように見受けられますが」

「お二方の本来の得物は鞭です。世に知られ神聖鞭と呼ばれています。剣は片手間です」

「剣聖かと思いましたが」

「人の剣聖ではとても敵いません。我々でも勝てません。負けないかもしれませんが」


「鞭では」

「とてもとても。手も足も出ないです」

「人外なのでしょうか」

「人の人外ではないです」

「人外の上ということでしょうか」

「さあ」

 人外の上らしい。逆らうのはやめにしよう。

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