671 ジゼルさんにテッサニアで働く貴族の子弟の研修を頼まれる
ロワール商会に着いた。
「あれ、ジスランさんを置いて来てしまった」
「ジスランは顧問になりました。国王は補佐をお願いしたいようでしたが固辞して顧問に落ち着きました。国王直属の調査機関があるのですが、国王がこっそりジスランにつけてしまいました。ジスランは今頃3人の対応にあたっているでしょう」
へえ。エチゼンヤのようなものか。
王都にいるとうるさそうだ。
「パレートの支店に行きませんか」
「はい。わかりました」
ジゼルさんが店の人に行き先を伝えて、ジゼルさんを連れてパレート支店に転移する。
すぐアンヌさんがやって来た。
「シン様〜、スパ棟はいつものところに出してください」
はいはい。
スパ棟を出した。一応支店に顔を出そう。みんなに挨拶。
そうそう。オリメ商会の支店にも顔を出さなくちゃね。
裏口から入る。マノンさんと縫い子さんと売り子さんが迎えてくれる。
「どう?」
「はい。留守の間もきちんと仕事がなされていて、何も問題はありません」
「それは良かった。何かあったら観察ちゃんに言ってね」
「わかりました」
「それじゃよろしく」
僕らはスパ棟だ。
ジゼルさんと一緒にスパ棟の中へ。ドラちゃん達は戻って来ていておやつにしている。アンヌさんが世話してくれていた。あれ、いつの間に。
アンヌさんがお茶を淹れてくれる。どこに何があるか知っているようだ。ジゼルさんが呆れている。
「だって、お客さんにお茶を淹れてもらうわけにはいきませんから」
ジゼルは、それはそうだが、ここはスパ棟だからお客はこちらではないかと思う。それに呆れたのはそこではないがアカ様とマリアさんもいいみたいだから諦めたジゼルであった。
「それで何の用でしょうか」
「はい。前国王についていく人選を行いました。すでに家督を倅に譲って引退していた老臣夫婦、貴族の次男以下の若い者10人です。いずれも商売の経験がありません。若い者は私どものロワール商会で預かって商売のイロハを学んでもらおうと思いましたが、どうしても自国の貴族の子弟では店の者に遠慮が出てしまいます。そこでエチゼンヤさんで教育していただけないかと思った次第です。研修費用は国が出します」
「若い人中心なのですね」
「はい。一つは、貴族の次男以下はどうしても進路が限られてしまいます。今回テッサニア行きの人を募集しましたが、数十人応募があり、十人に絞りました。貴族の次男以下は先が見えないのでしっかりした役割がある今回の仕事は魅力があったようです。それにもう一つは、他国ですから、なるべくその国に馴染めるよう、独身としました。その地の人を娶ってもらってテッサニアの人になって根付いてもらうのが、テッサニアとわが国双方にとって良いことと思いました」
そうだね。なかなかよく考えた。テッサニアも安心だろう。
「話はわかりました。エチゼンヤ夫婦とイサベルさんを呼びましょう。ドラちゃん連れて来てくれる?」
「わかったー。みんな行くよ」
ブランコ、ドラニちゃん、ジェナ、チルドレン、熱帯号と雪原号、それにジネットちゃんも連れて転移して行った。
お茶を飲んでいるうちに戻って来た。
「お久しぶり」
「ご無沙汰しています」
「現地の娘さんを娶るなんて面白いわね」
エリザベスさんとイサベルさんは興味津々のようだ。おばさん連中よ、相談はそこではないのだが。
「そうだな。研修はスパエチゼンヤ支店がいいか」
本店も支店も裏の仕事があるからね。ローコーさんはきちんと考えてくれたようだ。
「トラヴィスの野郎に教えてやろう。エチゼンヤの門前のテントの詰所をちゃんとした建物にするようだ。人件費もかかる。トラヴィスが悩むぞ。面白い」
そっちだったか。
「老臣夫婦にはアンヌがついてテッサニア国内の挨拶回りをしてもらいます」
「えええ、私?」
「そうです。臨時渉外担当大臣だからね。ああ出世したわよ。臨時が取れて渉外担当大臣(非常勤)になったわ。はい辞令」
「そんなあ」
「気持ちよく働いてもらおうと思ってね」
何だかみんなに嵌められた気がするアンヌであった。
「とりあえず、面接させていただきましょう」
エリザベスさんの現実的な提案だ。
「わかりました。よろしくお願いいたします」
「それからテッサニアのいい娘を」
ちょっと面接の内容が違うような気がする。
昼食は食堂で食べてもらった。もちろん二百人衆の給仕付きだ。
面接は明日ロワール商会本店で行うことにした。
ジェナたちはお昼寝、ジゼルさんはジネットちゃんをつれて観察ちゃんと王都に戻った。明日の手配をしなくてはいけないからね。ローコーさんは観察ちゃんがスパエチゼンヤまで送って行った。
午後はエリザベスさんとイサベルさんは、オリメ商会パレート支店を見に行った。
ジェナたちは遊びに行った。ブランコたちは見回り。どこに行っているんだろうね。
僕とアカとマリアさんはテッサニア王国の湖を見に行った。湖の奥に転移。湖の周りは建物が続々完成、観光客も多くなった。




