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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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659 エルフとマノン達 中央広場に向かう

「今度は中央広場です。いろいろな人がいますので気をつけてください。ひったくり、誘拐、ぼったくり、さまざまです。六十人くらいの集団では襲う方も気後れしてしまいます。5−6人でグループを作ってください。縫い子さんと売り子さんは適当におじさん、おばさんのグループに入ってください」

「では別れてください」


 歩きながらなんとなくグループを作った。俺のところは、ユリアーナ、ローザリンデ、マノンさんだ。リンダが黒猫姿で転移してきた。抱っこする。毛並みが大変よろしい。最強グループだろう。


「別れたようですね。では買い物はシン様からいただいたお小遣いでお願いします。集合時間は、日が翳り始めた頃、場所は、広場に面してエチゼンヤ本店がありますからエチゼンヤ本店に集合してください。話はしておきます。では真っ直ぐ行ったところが中央広場です。トラブルに巻き込まれないよう、くれぐれもお気をつけて」


 エスポーサ様、マルティナさん、サントスさんは先に行ってしまった。野放しである。ツアコンさんというのはいつも一緒にいるとは限らないのか。さっきの口ぶりからトラブルを期待しているように思える。


「しょうがない。行くか。ひったくり、誘拐、ぼったくり、さまざまと言っていたが、どれかに当たりそうだな。頑張ろう」

グループごとに少し離れて歩いていく。


王宮

 執務室で窓から空を見てドラゴンが飛んでいない事を確認して、今日も天下泰平と仕事をしている宰相。

 ドアがノックされる。ノックされる時は大した用ではない。機嫌良く言った。

「入れ」


 秘書官が困惑した様子だ。

「どうした」

「それがハミルトン公爵家のウォーレン執事長がお見えで」

 天下泰平はハミルトンの乱で終わりになった。


「何の用だ」

「エスポーサ様の用らしいです」

 ハミルトンの乱は晴天の霹靂に移ったらしい。

「・・・通せ」


 宰相に押しつけて安堵した秘書官が出て行く。入れ替わりにウォーレン執事長が入って来た。

「これは宰相どの、今日は空にドラゴンも見えず、窓も壁も無事で何よりですな」

「何の用でしょうか」


「ティランランドからおいでの方々とエチゼンヤ支店の方々の話はご存知ですね」

「ああ」

 ヤバい奴らだ。


「その方々、七十名ほどが食事するわけですが、予約なくその人数を受け入れられるところはほとんどありません。王都に不案内のティランランドとエチゼンヤ支店の方々をあちこち分散させて食事をしてもらうわけにもいかず」

 なんとなく筋書きが読めて来たが何故ハミルトン公爵家が関与している。


「エスポーサ様と公爵が話をなさいまして」

 エスポーサ様にトドメを刺された。断る訳にもいかなくなった。


「昼食は我が公爵家で、夕食は王宮でいかがかということになりました。今頃昼食が終わって中央広場の見学に向かっていることでしょう。なお、ご一行にはマルティナ様、サントス様もご一緒とか。トラブルがなければいいですが。両断死体がゴロゴロと」


 くそ、トラブルが起こりそうだ。いや確実に起こる。秘書に目配せする。急いで出て行った。衛兵を集中的に広場に投入するだろう。


「それで王宮も準備の都合があろうかとお知らせに参った次第です。もっとも既に宰相どのが手配りされた方より報告が来ているでしょうが」


 まだ来ていないと宰相。それにしても返事はした覚えはないが既に王宮で夕食を出すという前提の話だ。断れば宰相のドケチとドラゴンの声が王都中に響く。やむを得ない。

「夕食の件、承知した」


 秘書がまた一人出て行く。料理長のところに行ったに違いない。

 天気晴朗なれど波高しだ。


「そうですか。皆さんお強くて公爵のお孫さんも手もなく捻り潰されたとか。中央広場が楽しみですな。公爵もああ見えて物見高いですから今頃はバーサ侍女長と向かっていることでしょう。主人が行ったのなら私も行かねばなりません」


 執事長は留守番だろう普通はと思ったが、次代を育てるには留守の方がいいかと思い直した宰相。秘書を見るとまた急いで出て行った。近衛兵も派遣しなければならない。

 陛下が面倒を見ろと言ったのはこのことか。のほほんとしているが優秀なのかも知れない。


 秘書が顔を出した。大事な用だと顔に書いてある。

「なんだ」

「それが」

 これ以上のことはあるまい。

「いい。言って見ろ」

「王妃様と先の王妃様が」

「待て待てそっちに行く」


 秘書室に出た。

「どうした」

「街娘に変装して先の王妃の侍女と三人で中央広場に出かけたそうです」


 のほほん国王は優秀というのは取り消しだ。ただののほほんだ。娘だと、おばさんだろうと思ったが確かに若く見える。それは今は置いておこう。


「おい、近衛兵は何人出した」

「数人」

「まずいぞ。近衛隊長と二十人投入だ。十人は私服で王妃様達に付け」


「でもお強いですが」

「悪人を王妃様や先の王妃様に握り潰されたら困るだろうが」

「そっちの心配ですか。流石宰相」

「早く手配しろ」

 両断死体に挫滅手首か。厄日だ。


「何やら楽しそうですな。こういう時はハビエル神父様がいると八方丸く収まりそうですが」

 全くそうだが何故知っている。こいつも食わせ者だと思う。


「どれ、それがしも広場に行って見ましょう。ご一緒しますか」

 大混乱の予感だ。行かねばなるまい。

「行きましょう」


 執事長と王宮を出た。すでに近衛隊長達は出たと門番から聞いた。

 公爵家の馬車で中央広場に向かう。


「楽しみですな。もう始まっている頃合いですな」


 公爵家は中央広場の治安に責任がないから物見遊山だろう。演劇鑑賞と間違えてもらっても困る。


「そういえば昨日スパエチゼンヤの野外劇場に、エ、遠来の客が見えていたそうですな」

 こいつワザと‘エ、遠来の客’と言ったな。面白がっている。

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