654 エルフとマノン達 スパエチゼンヤを見学する (上)
ダンスとマナーから解放されてぐっすり寝られたエルフ。結構早起きしてしまった。
テントから出るとジェナとチルドレン、熱帯号と雪原号に捕まった。
「おじさん、おばさん、一緒に走ろう。気持ちいいよ」
おじさん、おばさんとは誰だと一瞬思ったが諦めたエルフ達。
「おう、走ろう」
大通りを門まで走って行った。
子供を連れた女性たちが門の外から入って来る。
「おはようございます。精が出ますね」
「あ、ああ。おはよう。早いですね」
「ええ、早番なので」
「お子さんは?」
「シン様のお陰で働いている間預かってもらえるんです。色々教えてもらっているらしく私の知らないことも知っていたりするんですよ」
「お母さん、早く行こう」
「はいはい。それでは失礼します」
「おじさん、バイバイ」
またおじさんである。がっかりするエルフ達であったが、子供は珍しい。子供に手を振った。
「おい、早番とはなんだ」
「さあ、聞いたことはないな。早く番をする?」
「走って番をする?でも門から入ってきたぞ」
「おじさん、早い時間から働いて早く帰るんだよ。反対が遅番」
「なるほど。早いと遅いか」
「そうだよ。もう戻らないと朝食がないよ」
走ったのでお腹が空いたエルフ達。
「よし、走って戻ろう」
「じゃあおじさん、おばさん、ヨーイドン」
あっというまに走り去るジェナとチルドレン。幼児に負けてはならぬと走り出すエルフ達。
大差で負けてしまった。自信がまた崩れるのであった。
エスポーサとマノン達が待っていた。
「はい、みなさん。朝から頑張っていますね。ではマナーの講習です。昨日の会議室に行きましょう」
途端に食欲が減退するエルフ達。
朝食は簡単なものだった。流石に朝からフルコースでは無かった。安心したらお腹が空いた。よく食べた。
「ではみなさん、今日は楽しいスパエチゼンヤ見学です。まずはエチゼンヤ支店に行きましょう。駆け足です」
朝走ったと思ったエルフ達であったが、エスポーサさんがブランコに乗って先に行ってしまったので走って行く。
意外と長距離なのである。
エチゼンヤの近くでエスポーサさんが待っていた。
「まだエチゼンヤは開いていませんので、児童公園を見てみましょう」
ゲートを開けて中に入る。
滑り台、鉄棒、雲梯、ジャングルジム、シーソー、ブランコ、登り棒がある。
「これは何をするんで?」
「遊ぶのよ」
ジェナとチルドレンが遊び出した。
「遊ぶから遊具という。シン様が作ったものだから大人が遊んでもびくともしないわよ」
マノン達が遊び始めた。
「なるほど面白そうだ」
エルフ達も結構楽しそうにシーソーをやっていたり、登り棒をチルドレンと競ったり始めた。
しばらくしたらエチゼンヤの前に人が集まり出した。開店時刻である。
店が開くと同時に集まっていた人が店に雪崩れ込んだ。
狐面を被った店員が必死に捌いている。大変そうだ。
「はい。ではエチゼンヤ支店に行きましょう」
支店に近づくと入店者を捌いている店員は人形だった。警備君一号と名札が付いている。エスポーサさんに敬礼をしている。
「おい、あれは人形だぞ。人形が勝手に動いて警備をしている」
「本当だ。人形が動くのは初めて見た。人の世では人形が働いているのか?」
「シン様関連施設だけです。食事もしないでよく働いてくれます」
わけがわからんと思う見学者達である。
「何か買い物をして貰ってもいいですよ」
マノン達は勿論下着売り場だ。縫い目などを確認している。
「同業者の方ですか?」
売り子さんに声をかけられた。
エスポーサが「新しく出来た支店の子達よ。よく教えてあげて。昼食どきには下の公園の巨木のところまでね」。
「これはエスポーサ様。そうですか。失礼しました。どうぞこちらへ」
マノンさん達を奥に案内して行った。こちらは最低でも午前中はかかるだろう。
エルフ達は品物の多さにびっくりしている。
「こんなに人の世は品物の種類と数があるのか。知らなかった」
「全くだわ」
こちらも時間がかかるだろう。
「ゆっくりみてくださいね。購入してもいいですよ。下着の予備なんかどうでしょうか。午前中はここで時間をとりましょう。終わったら下の公園の巨木のところまで来てください」
エスポーサが声をかける。
ブランコら三人組とジェナとチルドレン、熱帯号、雪原号はとっくにどっかに行ってしまった。昼時には戻ってくるだろう。暇になったエスポーサは後を観察ちゃんに頼んで旅館に戻った。僕とアカとアーダも一緒に戻った。
ちょうど半日ほど時間があるから、エリザベスさん、イサベルさん、ステファニーさん、エスポーサ、マリアさん、オリメさんでオリメ商会運営会議だ。いない人は呼んだ。
アカは解決できないような問題がない限り出ないよ。




