648 エチゼンヤローコー・エリザベス夫妻は眷属となる
エルフ達はエルフの国に観察ちゃんが転移で戻した。
一晩ゆっくりしてもらって、明日の日の出にドラちゃんとエスポーサが迎えに行くことにした。
ゴードンさん達はエスポーサが連れて帰った。
僕らは一度神国に戻った。
スパ棟に入ってしばらくするとステファニーさん達も戻ってきた。
ジェナに熱帯号と雪原号を呼びに行ってもらった。ただお茶を飲むだけだけどね。
僕にアカ、アーダ、ブランコ、エスポーサ、ドラちゃん、ドラニちゃん、ティランママ、ティランサン、マリアさん、ステファニーさん、オリメさん、アヤメさん、ジェナ、チルドレン、熱帯号、雪原号。それにお狐さん。
みんな揃った。
オリメさんとアヤメさんはマノンさん達の訓練中だけど抜けてきたのだそうだ。
エチゼンヤ夫妻がやってきた。ステファニーさん、エスポーサと打ち合わせと言っているが打ち合わせをやる気配がない。お茶をのんびり飲んでいる。すでに打ち合わせは終わっているのだろう。いいですけど。
「明日はエスポーサとドラちゃんでエルフの里に53人を迎えに行ってください。向こうは日の出に出発です。エルフを乗せたら下から見えなくして高空に転移、僕らが辿ってきた道のりを空から逆に辿って二百人衆の漁村の上空を経由、こちらの大陸に着いたら、コシの上空を通って、スパエチゼンヤの管理棟前に着陸してください」
「ドラニちゃんも行くの?そうなの。行ってらっしゃい。研修の二日目あたりに、リンダを世界樹のもとに連れていきたい。みんなはどうする?」
全員、「行きます」だ。
『リンダともうエチゼンヤ夫妻も連れてきなさい。目立つといけないから、エチゼンヤ夫妻はバングルでなく今の線指輪でバングルと同じ機能にするといいわ』
世界樹が僕とアカに話しかけてくる。
『エチゼンヤ夫妻もいいの?』
『いいわ。現状でもほとんど眷属と変わらないけどね。巨樹の森に入れるかどうかだけよ』
『へえ、そうなの』
『あとはゴードンだけど家族もいるしまた後ね』
『そうだね。現状ほとんど眷属と変わらなければまた後でだね』
「ローコーさんにエリザベスさん。世界樹に会いに行きませんか?」
「いいのかい?」
「世界樹がいいと言っています。ただ、目立つといけないので、バングルとせずに、線指輪を機能アップして、バングルと同じ機能にします。一番目立つ機能アップは収納が無限になります。ただ公表はしませんのでよろしく」
「すまない。世界樹様に会えるなんて思っても見なかった」
「僕とアカの眷属になってしまいますがいいですか?」
「もちろん」
線指輪のパワーアップ版を作った。小さすぎて見えないだろうがちゃんと例の象形文字、“世界樹とシンとアカと共に生きん”も刻んである。
二人はすぐ指輪をした。古い線指輪は新しい線指輪に吸収された。何も変わっていないように見える。
「これは、すごい。収納の底がない」
「本当だわ」
二人とも跪いた。
「シン様。眷属に加えていただき誠にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。また眷属様におかれましてもこれまで同様よろしくお願いいたします」
ローコーさんが言って、二人ともすぐ立ち上がって椅子に座る。
「肩こったわ」
「そうだな。慣れないことをすると疲れる」
みんな笑っている。とうに仲間になっていたからね。
「オリメさんとアヤメさんは大丈夫?」
「訓練は順調です。二百人衆の奥さん連中に代わりを頼んで来ましたので大丈夫です」
「それじゃ明後日みんなで行こうね。台地の上で朝日を眺めよう。集合は魔の森の泉にしよう」
その日はそれで解散になった。ティランママ、ティランサン、熱帯号、雪原号は戻って行った。ジェナとドラちゃん、ドラニちゃんがチルドレンを送って行った。すぐ戻ってきた。
エチゼンヤ夫妻はもちろんスパ棟の自室です。スパ棟に自室ができた時点でほぼ眷属になったということだろう。
翌日、エスポーサとドラちゃん、ドラニちゃんでエルフの里に迎えに行った。オリメさんとアヤメさんはマノンさん達のところだ。観察ちゃんが送って行った。訓練が終わったらマノンさん達はオリメ商会の本店に行ってみないとね。
残った僕らはスパエチゼンヤの管理棟前に転移。管理棟でお茶を飲んでいるとエスポーサとエルフ達がやって来た。
すぐステファニーさんが講義室に連れて行った。エリザベスさんももちろんついて行く。講師はエリザベスさんの実家の元国王夫妻、元宰相夫妻だ。人間の国の常識などをやるらしいよ。
僕とアカ、アーダはローコーさんとドラちゃんに乗って王宮へ。ドラニちゃんも勿論一緒。ブランコも一緒だ。久しぶりだな、リュディア王国の王宮。
王宮前広場に着陸。
王宮の門を守っている近衛兵が奥へ走って行く。
ドラちゃんとドラニちゃんはスルスルと小さくなってブランコの背中。
宰相執務室。
宰相はこの頃ドラゴンもローコーも来ないのでのんびり仕事をしている。陽が一瞬翳った。なんだろう、雲か。まさかあれではあるまい。
廊下をかけてくる足音がする。こっちに来る。秘書室に入った。事件かそれとも。
「宰相、大変です」
「ノックぐらいしろ」
「それが巨大ドラゴンが二頭、王宮前広場に降り立ちました」
お先真っ暗になった宰相。
「それで」
「今のは第一報です」
またかけて来る足音がする。
秘書がドアを勢いよく開けた。
「宰相、ドラゴン二頭が王宮前広場に着陸」
秘書が一息ついた。
「それは聞いた。次を早く言わんか」
「シン様とアカ様、御ローコー様とミニドラゴンを二頭乗せた白い大きな狼のような方、それに何やら虫のようなものが飛んでいてこちらに向かっています」
「ドアを開けとけ。ぶち抜かれたのではかなわん」
慌ててドアを開放する秘書。
「よう。しばらくぶりだな。元気か?」
「・・・なんの用だ?用でしょうか?」
「まあそう焦るな。ゆっくりお茶でも飲もう。おーい、お茶」
すぐ秘書がお茶とお茶菓子を持って来る。充分学んだので上等のお茶と菓子だ。
「アーダの分、アーダの分」
「おい、足りないではないか」
手のひらサイズの羽が生えた人型美人が、「喋った」。
「アーダ、空気の悪いところ嫌い」
透明な羽をパタパタすると窓と壁が吹っ飛んだ。
「窓と壁が・・・」
「新しいパターンだな。この頃壊れなかったろうから予算が余っているだろう」
秘書が追加のお茶とお菓子を持ってきて目を見開いている。ハッと気がついてお茶と菓子を置いてすぐ出ていってしまった。
アーダが菓子を世界樹の小枝でスパッと。勢い余って皿とテーブルが真っ二つに。菓子の切れ端が宙に浮いたのを捕まえた。
「アーダ、ここ嫌い」
アーダが転移していった。魔の森の泉だろう。しょうがない。行ってやろう。アカと転移する。
「おい、飛んでいるのが消えたぞ。なんなんだ。シン様とアカ様も消えた」
「見ればわかっただろう。妖精様だ。うっかりな対応をするとこうなる」
「妖精がいるなどと聞いたことはない」
「よく知っているな。この世界が出来て一人目だ。シン様とアカ様の子供、眷属の妹だから、小さいからと侮るとこうなる」
侮ったわけではないが、また危ないのが増えたと宰相殿。
「それでどこにいったのだ」
「さあな。シン様とアカ様がついていったから大丈夫だ。その辺を壊し回るなどはしない。しかし、世界で一人目は流石に強いな。小さい羽を軽くパタパタするだけで窓と壁が吹っ飛んだ」
「二度と連れてくるな」
「妖精様だからな。そういうものには縛られない」




