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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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641 エルフの国にて (1)

 森に囲まれた平地が開けている。人の世界なら街くらいの広さだな。木で作られた家があちこちに建っている。大木のうろに住んでいるわけではなさそうだ。

 窓の隙間とか家の影とか、あちこちからこちらを見ている。


《長にあってくれるか》

《いいですよ》

《真ん中にある家だ》


 一キロくらいあるかな。家の前に女性が出てきた。両脇に人がついている。真ん中が長なのだろう。

 目があったら向こうがお辞儀をした。


 見張り人がびっくりしている。

 通り過ぎると家の中から、影から人が出てきて後をついてくる。

 四方から長の家の周りに集まってくる。


 長の家の前に着いた。

 長が跪いた。


《世界樹の御子よ。ようこそおいでくださいました》

《通りがかりに困っている人がいたのでね。助けて連れてきました》

《ありがとうございます。中で事情をお聞かせください》

《いいですよ》


《皆のもの、このお二方は世界樹の御子様だ。それに眷属様だ。徒や疎かにしてはならぬ。夕方全員宴を広場で開く。準備せよ》


《中へどうぞ》

 家の中に招じ入れられる。主だったものだろう。数人後をついてきた。


 木を使った普通の家だ。特に変わったことはない。

 応接室に通された。


《私はこの里の長をしておりますユリアーナと申します》

《僕はシン、隣がアカ。飛んでいるのがアーダ。マリアさん、リン、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん、ジェナとチルドレンです》


《この度は私の娘、ローザリンデを救っていただきありがとうございました》

《娘さんでしたか。姉妹のような》

 喜んでいるよ。ユリアーナさん。


《それでどうしてローザリンデさんは国の外にいたんですか?》

《娘は魔力がごく少なく、魔法がほとんど使えません。なまじ長の娘だったものですから、気にして出て行ったのでしょう》


 ローザリンデさんは下を向いている。そうなるよね。

 だがよく見ると魔力は十分ある。ただそれが滞っているだけだ。


《魔力は十分あります。それが滞っているだけです。治しましょう》

 アカが手をかざす。魔力が流れるのがわかる。


《あ、魔力が》

 ローザリンデさんの毛が逆立つ。


《制御しなさい》

 アカに言われて慌てて制御しようとする。うまくいかないがアカが手伝った。制御は初めての経験だろう。


 親子共に涙を流している。


《ありがとうございます》

《魔力はないものだと思っていました》


《お母さんと同じくらいかそれ以上の魔力があります。制御をお母さんによく教わってゆっくり使い始めなさい》

 アカが教えてやった。


《わかりました。きちんと制御して魔法が使えるようにします》


 取り巻きの人もローザリンデさんの魔力の大きさにびっくりしている。つい先程まで魔力がほとんどなかったのに今やこの国?村?一だ。


《見たところ何人か同じ症状の方がいます。後で治しましょう》

《ありがとうございます。皆肩身の狭い思いをして暮らして来ました。よろしくお願いいたします》


 お茶を入れ替えてくれた。

 みんなでゆっくりお茶を飲む。


 長のユリアーナさんが話し始めた。

《昔はエルフと人が共存していました。エルフは長命でそのため数は大変少なかったです。今も少ないですが。当時は人と行き来がありました》


 なるほど。それでローコーさんと出会って商業組合の組合員の申請をしたけど書類の欄に種族欄があったのはそういうことか。今時エルフは申請しないだろうに昔からの伝統を引き継いでいるのか。


 ユリアーナさんが続ける。

《まれに人とエルフが混血しました。今も人の中に長命な方がいると思いますが、エルフの血が入っています》

 へえ、それでマリアさんが長命だったのか。


《そちらの方は、今は微かな痕跡しかありませんが、エルフの血が入っていると思います》

 マリアさんを見て言っている。


《そうですね。僕の眷属になってから体の組成が変更になっていますが、確かにそれ以前はあなた方と共通の部分が色濃くありました》


《やっぱり。同胞の子孫でしたか》

《そうなんですか》

 マリアさんも知らなかったようだ。


《どうして人と交流しなくなったのですか》

《人の社会が変わって行って、権力者が出現しました。権力者は自分の権力をいつまでも保ちたいと思い、我々を捕らえて色々と実験を始めました。我々は人がそういう気持ちを持っているとは思わずに仲良く食事と思ったら毒を盛られて捕らえられました。それから我々は魔法を使い、仲間を取り戻しました。一部は殺されてしまっていました》

 なるほど。そういうことがあったのか。


《我々エルフも一枚岩ではありませんでしたが、これに関しては一致して人と交わることを拒否しました。耳の尖っていないエルフは見かけでは人とほとんど変わりませんが我々に同調してくれました》

 そうだろうね。


《今も一部権力者が諦めきれず我々を探しています。ローザリンデを捕まえたのもそういう人たちに売りつけようと長年探し歩いている人たちでしょう》


《連中は、記憶を改変し、探したけど見つからなかったことにしました。今処分すると手がかりを残してしまうので、国に帰ったら目立たないように処分します》

《お願いいたします。我々は長い間に何回か近くまで探索の手が及びその度ごとに引越しをしました。長く住んでいたところを捨てるのは辛いものがありました》


《他のエルフの方達と交流はあるのですか?》

《日常的な交流はありません。ただ若い者が相手を求めて他のエルフの里に行くことはあります。他の里から来る事もあります》


《場所は分かるのですか?》

《はい。魔力を辿って行きます》


《途中は危なくないですか?》

《狩人の格好をして山伝いに行きますし、耳を含めた顔つき、背格好は魔法で人にしていきます。人が見てもわからないです。でも人がいれば回避します》


《隣の大陸のエルフとは交流がないのですか?》

《昔は隣の世界樹の大陸と陸続きでした。今は別れてしまいましたが、一箇所寒い地方に島が飛び飛びに隣の大陸と続いている場所があります。海が凍った時に島を伝って渡ってはいけるようですが、もう行き来はありません》

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