635 王宮に戻ったアンヌは出張報告をさせられる
王宮に戻ったアンヌ、廊下を歩っていたらジゼルと会った。
「ただ今です」
「これから行くの?」
「全部やって来ました」
「どうやって」
「ドラちゃんに乗って、ブランコさん、ドラニちゃん、ジェナちゃん、チルドレン、熱帯号と雪原号で行って来ました。楽しかったあ」
「こっちに来なさい」
アンヌは耳を引っ張られ会議室に連れて行かれた。
すぐ先の国王夫妻、現国王夫妻、ホルスト、ジロー、宰相が集まった。
「何をしたの?白状しなさい」
「白状って、ちゃんとやって来ましたよー」
「順番に話しなさい」
「ドラちゃんに乗って」
「その前は?」
「観察ちゃんにパレートまで送ってもらった」
「その前は」
「旅費を」
「それから」
「交際費など」
「全部いいなさい」
「ワイン一式と料理を」
「ふうん」
「でもそのおかげで、シン様関係者が頼んでいる大工さんと契約して、先発隊の宿舎も確保して、先発隊が行って打ち合わせをすればいいまでにして来ました。敷地の隣の人達とも仲良くなりました。テッサニア王国の国王、王妃、侍女長と仲良くなりました。国王様は極上ワインで落ちました。王妃様も初めて美味しいワインを口にしたそうです。高級、中級のみならず、一般のワインも好評でした。それからサルメウムのロッカさんと鉱夫さん、家族の皆さんと仲良くなり、下着は湖の売店で買ってくれと言っておきました。家族の皆さんに塩を荷馬車二台分くらい押しつけられました。それからクエンヴェル王国の王都プールクアに寄って、王宮で国王夫妻や侍従、侍女達、シャルル王子、ノエル、アンリ姉弟と仲良くなりました。国王一家、貴族のみなさんにワインの隊商に是非下着も持たせて来てくれと頼まれました。あと、湖でブランコさん、ドラちゃん、ドラニちゃん、ジェナちゃん、チルドレン、熱帯号、雪原号と楽しく遊びました」
しばらく沈黙の皆さんであった。
先の国王が口を開く。
「ジゼル、まあいいんじゃないか」
「そうね。まあいいか」
「それで先発隊を送ればいいんだな」
「はい。街道から湖に入るところに宿屋風のしっかりした建物があります。そこを宿舎にしてください。料金は先発隊と相談ということで借りる約束をしてあります。国王様の茶屋の隣が観光馬車屋さんのディミーティスさんですがその方の持ち物で、馬車屋さん達と馬車屋さんの隣の宿のヘレンテさん達が住んでいます。観光馬車屋さんにはシン様から頼まれてボートを届けました。大工さんは観光馬車屋と隣の宿を建築している人です。概要は話してありますので案を考えてくれているはずです。街道脇の宿舎はその大工さんが建てたものでシン様が手を入れました。そうそう、これが大工さんからの手付の領収書です。皆さん何らかの関係がシン様とあります」
やっぱりトンデモ娘だと一同の感想である。
「報告書を」
「はいはい」
一部を宰相に、一部をジゼルに渡した。
「写しかしら」
「ジェナちゃんに作ってもらいました。両方とも本物だそうです」
もはや呆れて何も言えない一同であった。
「塩は下着とドラちゃん縫いぐるみを気に入ってもらって、ロッカさんの奥さんや鉱夫の奥さん達に押しつけられましたので、オリメ商会に渡しておきます」
「ドラちゃん縫いぐるみとは?」
王妃の御下問である。
「これです」
「まあ可愛い」
「差し上げます」
「ありがとう」
「ではこれでお役御免で」
「待て待て。あの辞令はそのままで良い」
先の国王である。
「そう言えば急いでいたので任期の記載を忘れていました」
宰相である。二人ともニヤッと笑っている。
やっぱり国そのものがトンデモ国であった。
「そういうことだ。国のため、国民のため肩書きはうまく使ってくれ」
「そんなあ」
と言いながらアンヌは観察ちゃんと転移して行った。
「トンデモをつけてトンデモ臨時渉外担当大臣だわね」
「個人的に仲良くなってくるのだから大したものだ。仲良くなるだけでなく、きちんと仕事もしてくる。湖のテッサニア王国の国王から隣近所まで良好な関係を構築して来た。湖畔の茶屋でも安心だ。どんな外交官でもこれ以上の成果はあげられまい。シン様、眷属様とも仲が良いようだ。とんでもアンヌだな」
先の国王である。ひとしきり笑い合った。
「宰相、先発隊の人選はすんでいるか?」
先の国王が聞いた。
「はい。三人」
「とんでもアンヌのようにシン様眷属に送ってもらう訳にはいかないので明日の朝出発させよ」
「わかりました。報告書の内容はよく説明しておきます」
「頼んだ」
会議は終わった。




