628 テッサニアの湖で遊び水泳講習を企画する
巨木タグの密造者も滅びの草原に消えてしまったし、また暇になった。
テッサニアの湖に行ってみようかね。
この間と同じ湖の奥に転移した。スパ棟と厩を出す。
湖にボートを三艘出す。細長いやつだ。うちは皆力が強いから櫂は左右の手に一本づつだ。一人で2本だ。
ジェナとチルドレン。ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん。熱帯号、雪原号で競うらしい。皆人化した。
湖を往復する気らしいよ。ヨーイドンと言ったら一斉に漕ぎ出した。
僕とアカ、マリアさんはバトルホースにのって奥の方へ周回道路をポクポク。
ボートは、石碑の方までいってターンして、先行したブランコたち、アイスマンたちのボートがひっくり返る。工事の人や観光客がびっくりしている。
ブランコ、アイスマンたちがひっくり返っているそばをスピードを落としてジェナたちがターン、そのままスピードを上げて漕いでいく。ブランコ、アイスマンたちは慌ててボートを起こして、猛然と追い上げる。
湖尻まで行って、またターンでブランコとアイスマンたちのボートがひっくり返る。ポクポク歩くバトルホースの近くまできてゴール。同着である。よしよし、みんな良い子だ。
「おとたん、面白い」
それはよかった。
ボートは収納し、スパ棟に戻ってボート選手たちはお風呂。
お風呂から出たら、スパ棟の外にシートを敷いて昼食、ジェナたちはお昼寝。
湖を渡ってくる風が心地よい。ついうとうとしてしまう。
アカとマリアさんが何か話している。耳に心地よい声だ。
ジェナたちが起きる。もちろん僕も。
午後はもう一度ボートだ。今度は僕らもボート。競走用のボートではない。ゆっくり漕ぐボート。四艘出す。
僕とアカとマリアさん。
ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃん。
ジェナ、プリメーラ、フロランスちゃん、ジュビア。
プリメーロ、リオンちゃん、アイスマン。
そういう組み合わせで四艘。
「競走じゃないから、ゆっくり漕ぐんだよ」
それでも時々早くなってしまう。
バトルホースは湖に飛び込んで泳いで後をついてくる。
「石碑のあたりにつけるよ」
石碑のあたりは波打ち際が遠浅になっていてボートを乗りつけた。
観光馬車屋さんがやって来た。
「シン様。それは船でしょうか」
「船といえば船だけど。ボートだよ。みんなで遊ぶ船だ。乗ってみるかい」
観光馬車屋さんが奥さんと乗り込んだ。ちょっと湖に押してやる。岸から離れたらブランコとジェナたちが漕ぎ方を教えている。みんな楽しそうだ。
プリメーロの乗って来たボートに支配人さんとフロントマンが乗った。
「おい。向こうは夫婦でいいな」
「今度は宿から時々呼びましょう」
観光客も興味津々だ。
観光馬車屋さん、支配人さんが戻って来たので観光客が乗って漕ぎ出した。
交代で次々乗っている。今まで乗ったことがないのだろう。楽しそうだ。
ボートは観光馬車屋さんに進呈しよう。観光客の楽しんでいるのを見ると賑わいそうだ。
マリアさんが気がついた。
「ところでどなたか泳げますか?」
みんな首を振っている。
「ボートは船ですから転覆することがあります。泳げにいけないと助けられません」
ホルストさんが王都に着くのは明後日だから明日特訓しよう。ジェナ湖に連れて行こう。水はあるかな。
「おとたん。水はあるよ。減っていないよ。この間行って来た。警備員を特訓して泳げるようにした」
「行ったのね。ありがとうね」
だんだん警備員もオールマイティーになって来たのではないか。
「もしよければ、水泳の特訓用にちょうど良い浅い湖があるのでそこで水泳の特訓をしませんか」
ワンワン印(改)を使えば一日で十分だ。いやいやそれはまずいだろう。二日くらいやるか。
「シン様、お呼びですか」
エスポーサが来てしまった。
「ちょいとね。水泳の訓練をしようと思って」
「ここはちょっと初心者には深すぎますね。ジェナ湖がいいでしょう。水温もいいし」
「それでここにいらっしゃる方でしょうか。ボートの管理人さん?」
観光馬車屋さんに聞いてみる。
「観光馬車とボートの管理人さんでどうでしょうか」
「ぜひやらせてください。観光馬車だけでは人数が余ってしまうと思っていたところです」
「支配人さんたちも目の前が湖ですから泳げたほうがいいでしょう」
支配人さん、フロントマン、目の痒かった人たちは諦めがいい。
「よろしくお願いします」
ふふふ、全員参加だ。
もちろんテッサニアのオフェリア王妃さんとクロエさんは参加しなければならないな。自国の湖だから。
ロッカさん、シャルルさん、ノエルさん、アンリちゃん、ジネットちゃんにも声をかけよう。
ホルストさん、ジスランさん、ジゼルさん、アンヌさんは流石に忙しいだろう。彼らは泳げなくても水の中に突き落としても浮いてくるだろう。
観察ちゃんが宿にいた人のデータはとってあるというので、オリメさんに水着を頼んだ。もちろん他の参加者の水着も。今日中に出来るそうだ。
マリアさんとエスポーサでオフェリア王妃、クロエさん、ロッカさん、シャルルさん、ノエルさん、アンリちゃん、ジネットちゃんに明日から二日間水泳訓練をどう?と話をしに行った。
参加の場合は明日日の出に迎えに行く、今回水着、食事はこちらで用意とした。
そうだ。明日はオリメ支店を臨時休業として、縫い子さんと売り子さんを連れて行こう。慰労だ。彼女たちは泳がなくてもいい。
オリメさんに連絡を取ったら是非とのことであった。観察ちゃんに頼んでオリメさんから話をしてもらった。
マリアさんとエスポーサはすぐ戻って来た。みんな参加とのことであった。
あとはええと、宿の従業員が20人くらい、ほとんど夫婦で働いているから家族を入れて50人程度、観光馬車屋さんが20人、王妃さんたちを入れて80人程度だな。
女性が多いな。
女性指導員は、ステファニーさん、マリアさん、オリメさん、アヤメさん、エスポーサ、ドラちゃん、ドラニちゃん、リン、ティランママ、ジュビア。
男性指導員は、ブランコ、ティランサン、アイスマン。
監視員は、ジェナ、チルドレン、警備員。
男性指導員が足りないな。ゴードンさんと三馬鹿を呼ぼう。
女性指導員のうち、ステファニーさんは多分1日だろう。オリメさん、アヤメさんも忙しい。1日だろう。ロシータさん、リリアナちゃん、プリシラさんを加えてどうだ。
アカがそれでいいと言っています。
アカとマリアさんで頼みに行ってくれた。
ジェナとチルドレンは警備員を明日から二日間水泳の監視員だよと動員しに行った。
あれよあれよと話が進むので、観光馬車屋さんと支配人一行はあわてて宿へ戻って行った。日の出前宿に迎えに行くと話しておいた。
観光客のボート経験も終わったようなので一応ボートは収納しておこう。見ていないところで乗り出して転覆したら大変だからね。
僕らは湖の奥のスパ棟前に転移。
リンとティランママ、ティランサンが来る。ゴードンさん一家とプリシラさん、三馬鹿が来る。ローコーさんとエリザベスさんもアカとマリアさんとやって来た。
競技用と家族用ボートを出しておく。
早速三馬鹿が競技用に乗り込んだ。
ローコーさんとゴードンさんも別の競技用ボートに乗り込んだ。三対二だけど構わないらしい。
エリザベスさんとリンは家族用ボートだ。エリザベスさんがローコーさんを見てバカねえという顔をしている。
バカの乗り込んだ二艘は、ヨーイドンで漕ぎ出してすぐスピードに乗ってあっという間に石碑前に到着。高速ターンで二艘ひっくり返る。急いでボートを起こして乗り込んで再び高速で進む。すごいねえ。建築屋さんもびっくりだな。
やがて、湖尻に着いて高速ターン。体と艇を傾けて櫂を上手に使ってボートを水の上でドリフトさせながら回った。大したもんだね。長い競技用ボートがドリフトするのを初めて見たよ。普通なら艇がバラバラになりそうだ。僕の船は壊れないからいいけど。ジェナ、チルドレン、ブランコ、ドラちゃん、ドラニちゃんがじっと見ていた。
二艘が同着。
すぐジェナとチルドレン、三人組が乗り込む。
ヨーイドンで水面をほとんど飛ぶ勢いで進む。石碑前で高速ターン、二艘ともドリフトして曲がった。建築屋さんはもはや手が止まってしまった。あっという間に二艘が小さくなって、信じられないと首を振って仕事を再開した。
湖尻で、二艘が高速ドリフトターン、圧倒的な馬力の三人組が優勝。
ジェナはぷんぷんしている。
「おにたん、おねたん。ジェナとチルドレン相手に本気出した」
ブランコたちは、あ、まずいという顔をしている。
「たまにはいいさ。力の差を身をもって体験することもいいことだ」
「そうか」
ジェナは物分かりがいいのであった。ブランコたちもホッとしている。
遊んでいると日が落ちて行く。
テーブルを出してみんなで夕食だ。
ゴットハルトさんが初めて気がついた。
「ところでここはどこなんです?」
やっぱり三馬鹿であった。
「この間火球で滅ぼした国から東へ二つ行った国だよ。テッサニア王国という」
「隣の大陸でしたか」
あれ、初めて聞いたという顔をしている人たちがいる。まあいいか。
それからサルメウム、テッサニア王国、クエンヴェル王国、ドンドコ、テラーサス王国の話などをして夕食は終わった。
夜はゴードンさんは一家でテント、三馬鹿もテント、プリシラさんはジェナとチルドレンとテント、ティランママとティランサン、熱帯号と雪原号でテントであった。
ローコーさんとエリザベスさんは当然スパ棟の自分の部屋。お狐さんが今日は賑やかとやって来た。みんなでお風呂に入って就寝。




