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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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624 テッサニアの湖のほとりにジゼルさんを案内する

 では街道を進もう。僕とアカ、マリアさん、ドラちゃん、ドラニちゃんだ。少し寂しいけど。みんな頑張っているから我慢しよう。


 バトルホースを一頭呼ぼう。観察ちゃんが連れて来てくれた。僕とアカ、マリアさんが乗って、時々ドラちゃんとドラニちゃんも乗る。


 荷馬車隊に追いついてはいけないからゆっくり行こう。ポクポク歩く。ずうっと丘陵地帯の葡萄畑だ。所々丘陵の麓に泉があり小川が流れている。小川沿いに木が生えている。そういうところには集落がある。泉を見つけて住み始めたんだろう。


 夕方近くなって宿場町が見えて来た。ホルストさんの荷馬車隊は宿泊したと観察ちゃん。


 僕らはテッサニアの湖の奥に転移した。周回道路からだいぶ山側に入ったところにスパ棟と厩を出した。少し高いから湖がよく見える。

 湖の街道寄りには建物を建設しているようだ。そろそろ暗くなるから建築現場の人たちは引き上げたり、飯場らしい建物に入ったりしている。向こうからはこちらは全く見えないだろう。


 ジェナとチルドレン、熱帯号、雪原号が転移して来た。

「ご苦労さん。どうだった」


「踊る魔物を相手にしているよ。真っ直ぐかかってこないから大変だよ。前足をふりあげたら普通は振り下ろすからそれを避けるけど、魔物が途中で顔も体の向きも変えずに急に横に前足を動かして、ちょうど避けたところに前足が当たったりしている。魔物も勝手に足が動いてしまうのでびっくりしている」


 なるほど、訓練生は魔物の動きが読めないから大変なんだな。魔物自身も自分の動きがわからないから、困惑しているに違いない。さすがエスポーサ魔女のワンワン印(Ⅲ)ドリンクだ。


「それでね、ジェナたちは警備員を訓練しているの」

「夜もみんなに付き合って訓練かい?」

「夜は離宮の周りの警備だよ。また明日訓練に連れていく」


「怪我をしないか?」

「大丈夫。結構強いし、時々魔の森の泉の水を飲ませているから」

 何だか強くなりそうだ。


 お狐さんが来た。今日は少ないと言っている。

 お風呂と夕食にしてみんなと一緒に就寝。お狐さんの話を聞いて眠ってしまう。アーダはお狐さんが丸まった中だ。


 朝、日が昇ってしばらくすると湖の街道側では工事の人が働き出した。急ピッチに工事が進んでいる。

 朝食の後、ジェナたちは転移して行った。今日も警備員の訓練だ。


 ジゼルさんが観察ちゃんと転移して来た。

 マリアさんがスパ棟の脇にテーブルと椅子を出してくれる。


「おはようございます。ここは何処でしょうか」

「ここはテッサニアの湖です」


「来たことはありませんでした。広くて静か、綺麗な湖ですね。ここなら国王夫妻も退位後心静かに暮らせることと思います」

「ここは奥の方です。向こうで建設工事をしているあたりが入り口です」

「そうですか。賑わいそうですね」

「遠からず観光名所として復活するでしょう」


「湖が綺麗でご報告を忘れるところでした。昨日ジローが軍を率いて回り道をして気づかれないように現場に向かいました。明後日の朝には十分配置についていると思います」

「それは良かった。こちらはホルストさんの荷馬車は順調に進んでいます。ダミーの荷馬車は一日遅れの位置を保ってアンヌさんが付いて進んでいます」

「ありがとうございます」


「そうだ。偉いさんが茶店を出すと王妃に話してあります。土地も僕用に確保してありましたのでそこを使って下さい。王妃に話してくれればわかります」

「何から何まですみません」


「行ってみますか」

「はい。お願いします」


 バトルホースをもう一頭呼ぶ。ジゼルさんに乗ってもらう。

 スパ棟などを収納して僕とアカ、マリアさんでバトルホースにのる。二頭で工事している手前あたりまで駆け足。すぐ着く。そこからゆっくりポクポクだ。工事の人に混じって観光客らしい人もいる。賑やかになるのも近いだろう。


 ずいぶん湖の入り口まである。周囲40キロのうち半分使って20キロ、街道から湖までの連絡道路が中心なら片方10キロだ。今はそんなに使われていないがあちこちに名札は立っている。権利は確保したのだろう。工事中のところは合わせて1キロもない。徐々に様子を見ながら建てるのだろう。


 深々とお辞儀をしている人がいる。

 バトルホースから降りる。


「シン様。その節は大変お世話になりました」

 元奴隷商さんだ。


「元気だったかい?」

「はい、整った書類のおかげで無事出国できこの国に帰化もできました。ここで観光馬車屋を始めることにしました」

「そうか。それはよかった。遠からずこの湖も賑わうようになるだろう」


 建築中の建物から、支配人とフロントマンが出てきた。走り寄ってくる。


「シン様。その節はありがとうございました。おかげさまでみんなで脱出でき、観光馬車屋の隣で宿を始められることになりました」

「だいぶできたね。楽しみだ。今度の花の季節には間に合うだろう」


「こちらにおいでの節はぜひお泊りください。今度はネズミは絶対に出ません」

「それは残念だな。ネズミ退治の妙薬がたくさんあるのだが。いるかい?」

「滅相もありません。誠実に宿をやらせていただきます」

 宿の人は苦笑いだ。目が痒くなった人もいる。元気そうだ。


「今日は何しに?」

「ちょっと知り合いが僕に確保してもらっている土地に茶屋を開くかもしれないので下見に来た」


「御用地でしょうか」

 馬車屋の隣に目立たないがしっかりした看板が立っている。「シン様御用地」だ。へえ。

「ここだね」


 茶屋と倉庫などを建て、住居、家臣の家を建ててもなお余るな。間口も奥も広い。奥にスパ棟、厩、車庫、宿舎を出しても十分だ。湖の奥で自由もいいがみんなで花見をしにくる時は利用させてもらおう。


 石碑を見ていたジゼルさんがやってきた。

「シン様。こんな素晴らしい場所を」

「いいって。こちらは知り合いの観光馬車屋さんとその隣りの宿の主人だ」

「ジゼルと申します。本決まりになりましたら改めてご挨拶にあがらせていただきます」

 挨拶を交わしている。


 御用地の周回道路に面したところは低木を植えてベンチを並べて公園にしておこう。無料休憩所だ。東屋も作っておこう。


 茶屋は公園の奥、少し高くなったところに作ればいい。眺めはいいし。とりあえず茶屋予定地から奥には立入できないようにしておこう。茶屋のお客さんは公園の中を通って行けばいいね。


 周回道路から公園、茶屋の脇を通って奥に入る道も作っておこう。茶屋から先は立ち入り禁止。よし。作った。工事人がびっくりしている。


 あれ、高級路線になってしまった。公園の中に小さな茶店、売店を作ってもいいし、その辺は自由だ。元国王がやるにしてもオリメ商会が出資してもいいな。そうすれば安全だ。観光馬車発着所寄りに場所を確保しておく。


 観光馬車屋さんと宿の主人に話しておこう。

「ここは皆さんで自由に休憩に使ってください。公園です。誰かに聞かれたらそう話してください。奥には入れませんけど」

「ありがとうございます」


「これからどちらへ」

「街道に出て少しコーリス方面に行って転移だな」

「街道を出たところに私どもが買った宿があります。今は宿舎として使っています。ぜひお立ち寄りください」

「そうなの。行ってみます」


 バトルホースに乗って、ドラちゃんとドラニちゃん、アーダが周りを飛び、もう一頭にジゼルさんが乗って街道方面へと歩いて行く。湖を見に行く人だろう。子供連れで歩いて行く。何組かにあった。帰りは観光馬車かな。


「いい湖ですね。シン様湖と石碑にありましたが」

「この国の王妃さんと知り合いでね」


 また国を助けたのだろうとジゼルは思う。一方で何かあればヴィオレンシア帝国のように国民ごと滅ぼしてしまう。シン様は優しくて恐ろしい、まことに神だと思うのであった。


 すぐ街道に突き当たった。コーリスは左だ。道普請は終わったらしい。道路が綺麗に均してある。これなら馬車で楽に来られるだろう。


「あれか」

 確かに宿屋風の建物がある。寄ってみる。


「こんにちは」

「はーい」

 奥から観光馬車屋さんの奥さんが出てきた。


「あら、シン様。どうぞ中へ。皆さんもどうぞ」


「ちょっと湖に来たものですから。旦那さんと、支配人さん、フロントマンさんと会ってきました」


「どうぞどうぞ」

 応接室に案内されてしまった。


「命の恩人なのに私どもはお礼にも伺えずどうしたものかと思っていました」

「皆さんが元気に生活してくれることがお礼ですよ。十分お礼はいただきました」


「申し訳ありません。出国してからここまで辿り着き、廃業寸前のこの宿屋を購入してみんなで住んでいます。私どもが観光馬車、支配人さんたちが宿屋をやることにして、いま湖畔に建設しています」

「いい場所が契約できましね。誠実にやれば繁盛間違いなしでしょう」


 お茶とお茶菓子を出してくれる。自家製の菓子みたいだ。宿の厨房の人が作ったのだろう。ドラちゃんとドラニちゃんは美味しくいただいている。アーダはマリアさんに貰っている。


 少し話をしてから宿を出た。


 皆さん総出で見送ってくれた。

 振り向くと建物は床下の束が何本か腐っている。根太、土台も傷んでいるところがある。多分安いのはそのせいだ。売主はよくわかっていたのだろう。このままだと遠からず大修理になると思って売ったのだろうな。腐るのは、街道より低いからだね。少し街道より高くしてやろう。しっかり床下を固め高くする。版築というやつだ。腐ったり傷んだりしている束と根太、土台を交換しておいてやろう。今度は腐らないぞ。屋根はスレートだ。葺き直しておく。屋根が重いな。構造を補強しておこう。壁も丈夫にしておこう。地震が来てもスレートも落ちないし建物も倒れないぞ。


 みんなが手を振ってくれる中、転移した。

 僕たちは昨日到達した地点へ。ジゼルさんは王都に送った。


「行ってしまった」

 一抹の寂しさを感じながら振り返ると宿の建物の存在感が増している。よく見ると宿が立っている地面が高くなっている。


「何て事だ」

 一同言葉が続かない。シン様一行が消えたあたりに深くお辞儀をした。


 それから数日して束を取り替えに来た棟梁。発した言葉は、

「何て事だ」


 弟子は何の事かわからない。

 棟梁は急いで中に入って床下に潜った。

「何て事だ」

 床下から大声が聞こえた。

 床下から出て来た。


 弟子に梯子と怒鳴っている。

 屋根に登った棟梁。

「何て事だ」

 スレートが綺麗に重なって見事に葺き替えてある。一分の狂いもない。


 棟梁が屋根から降りて来た。

「すまない。この間束だけだと言ったが、弟子が見誤ったようだ。自分で確認しなかった俺が悪い。弟子のせいではない」


「束のほかに悪いところがあったのでしょうか」

 観光馬車の奥さんが聞いた。


「床下に潜ってみたら束、根太、土台、一部の柱が交換してある。これらは傷んでいたのだろう」

「さらには柱が増えている。筋交も増えている。屋根はスレートがすっかり綺麗に葺き替えてある。壁もどうやったのかわからないが丈夫な見たことがない材質になっている。建物は頑丈になった。俺にはどうやって修理したかわからない。俺がやるとしたら、解体して部材を取り替え、柱や筋交を増やすしか方法が思いつかない。だがこの建物は立ったまま立派に交換や補強がしてある。さらに不思議なのは、地面が高くなっている。それも版築でだ。俺の師匠がやっているのを一度手伝ったことがあるが、家が立っていたのでは到底できない。それが見事に版築で基壇が作られている。基壇の周りは石で覆われている。今は宮殿でも版築で基壇を作ることは行われていないところが多い。信じられない。神業だ。これを修理した師匠のお名前を聞かせてくれるか」


「シン様といいます」

「神様か。そうだろう。それ以外にはありない。ありがたいことだ」

 棟梁は建物を拝み出した。


 棟梁は弟子に床下に潜らせた。

 弟子は首を捻って出て来た。


「確かに交換や追加がしてありましたが、どうして交換したか、追加したか全くわかりません。床下の土は固く締まっていました。石のようでした」

「それでよい。普通はそうだ。これから勉強だ」


「5年くらいたって、弟子たちが勉強したらまた家を見せてくれ。そのときわかることもあるだろう。お願いする」

「いいですよ」


「湖のそばに建てている宿と観光馬車の施設は気合を入れ直して建てさせてもらう。費用は変わらん。勉強だ」

「よろしくおねがいします」

 棟梁が弟子を連れて去って行った。

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