622 ジスランとジロー 盗賊討伐計画を立てる
ドラちゃんとドラニちゃんに上空から荷馬車隊の後をつけている人がいるか確認してもらう。三人確認。観察ちゃんが三人の後ろに転移して付いていく。
さあてどうしようかな。僕らが片付けてもつまらないし。
ジゼルさん、アンヌさん、ジローさんにやってもらおう。ピエネ川と言ったな。
ジゼルさん宛に手紙を書こう。
ジゼル様
こんにちは
今日は盗賊の情報をお知らせします。
現在ホルストさんの荷馬車隊の後を盗賊らしき人たちが三人つけています。
葡萄畑で働いていた人たちの予想では、ピエネ川に盗賊が集結し襲うようです。
盗賊は川のそばにねぐらがあり、普段は通行料を取っているらしいですよ。また川の両岸の宿場町にも素知らぬ顔をして住んでいるとのことです。
順調にいけば3日後、ピエネ川にホルストさんの荷馬車隊が到達します。
盗賊の討伐計画ができましたら、観察ちゃんにお知らせください。転移等協力します。
○年○月○日
シン
こんなところだろうねえ。
みんなに確認してもらう。いいんじゃないとアカが申しております。
「ドラニちゃん、ジゼルさんに届けて来て」
「はーい」
手紙を預かってドラちゃんと飛んで行った。
ジゼルさんは、ちょうど王宮からロワール商会に戻って来たところだね。
『どこかな。いたいた。ジゼルさんはロワール商会だ。ドラねえたんと手紙の配達は楽しい。たいていお菓子をもらえる。カビの生えたお菓子を出してくれたサイショーさんはどうしているかな。ドラねえたんと行ってみようかな』
ジゼル、アンヌ、ジスラン店長は執務室で相談中であった。
開け放たれていた窓からドラちゃんとドラニちゃんが入って来た。
ドラニちゃんがジゼルの前に浮いて足を出す。ポトっと手紙が空中から落ちる。ジゼルがキャッチして「シン様からだわ」と言って、アンヌが茶菓子の手配をする。
「ドラちゃん、ドラニちゃん。こっち、こっち」
とアンヌが自分の両隣を叩く。
侍女がすぐお茶とお菓子を持って来た。みんなの前にもおいた。
「さあ食べましょう」
アンヌが率先して食べ始める。
「うん。なかなか美味しいわ。大丈夫ね」
ドラちゃんとドラニちゃんを撫でながらのたもう。自分が食べたかっただけではないかとジゼルとジスラン。しかしドラちゃんとドラニちゃんが撫でられて満足そうだから黙っている。
「まあ、盗賊だわ」
ジスランが読み、アンヌが読んだ。
「旦那様は通行税では済まなそうですね」
「ジローを入れて計画を立てなくてはならないな」
「その旨返事を書きましょう。ドラちゃん、ドラニちゃん。待ってて下さいね」
ジゼルさんが机に向かい、計画を立てたらご連絡しますのでご助力をよろしくお願いしますと簡単な返事を書いた。
「ドラニちゃん、お願いね」
わかったーとばかり手紙を収納してドラちゃんと飛んでいった。
「アンヌ、ドラニちゃんとどうして言ったの?」
「あれ、ドラニちゃんは手紙配達人ですよ」
知らなかったとジゼル。
「どちらがドラニちゃんかい?」
ジスランが聞いた。
「ドラちゃんでない方がドラニちゃん」
ジゼルとジスランは、アンヌに聞いた方がバカだったと思うのであった。
アンヌが馬車の用意をしにいった。
「我が侍女長は優秀なのかヘボなのかわからないわね」
「ドラゴンと仲が良いみたいだし、常識人には測れないのかもしれないな」
ジゼルとジスランで玄関に行く。すでに馬車は来ていた。御者はいるが、アンヌが手綱を握っている。
「行きましょう」
やれやれとジゼルとジスランが馬車に乗る。
すぐ王宮に着いた。
国王の執務室に行く。
国王と先の国王、ジローが揃っていた。
「荷馬車が盗賊に襲われるそうよ。シン様が教えてくれた」
シン様の手紙を出す。先の国王、ジロー、国王が読む。
「どうしましょう」
国王が心配している。
「どうしょうも何もない。盗賊は殲滅よ」
ジゼルは勇ましい。
「荷馬車は何台だい?」
ジスランが聞く。
「8台のうち、4台は街々、村々を回って塩を下ろしてくるから4台だわ」
「4台か。ダミーの荷馬車を用意するか」
「面白そう」
ジローだ。
「だろう。荷馬車を守る必要がないから思う存分戦える」
「そうしよう」
一決した。
「じゃあ俺はダミーの荷馬車を用意するから後はジロー、頼んだよ」
さっさとジスランは出て行った。気遣いのジスランである。
「ええ、兄さん行っちゃった」
「お前に気を遣ったのよ。計画はジロー、お前が考えなさい」
「そうか。それでは、兄さんが荷馬車を用意でき次第、荷馬車だけをすり替える。付き添っていた人たちはすり替えた荷馬車で進んでもらう。当然盗賊の見張りはついているだろうから、それはシン様に誤魔化してもらう。本来の荷馬車は盗賊の見張りの後からゆっくり付いて来てもらう。川に向かう最後の街、盗賊がいるという話だから、荷馬車が出たら軍が街を封鎖。軍はあらかじめ近くに転移させてもらっておこう。ダミーの荷馬車が川に差し掛かり盗賊が襲撃を開始したら、反対側の街も軍が封鎖。お楽しみの戦闘ののち、捕まえた盗賊に街の盗賊一味を吐かせて捕える。でどうだ」
「面白そう。それでいいわ」
先の国王が国王に「おい、軍の指揮権を一時的にジローに移譲しろ」
「わかりました。ジロー兄さん、お願いします」
アンヌがすぐ出て行って事務官を連れて来た。事務官は書類を持っている。アンヌは手回しがいい。
「あの、軍の指揮権をジロー兄さんに移譲します。書類をお願いします」
「はい。アンヌ様に言われて書類は用意してあります。サインをお願いたします」
国王がサインした。
「では只今より軍の指揮権はジロー様に委譲されました。軍等への連絡はしておきます」
アンヌは優秀な事務官を連れて来たようだ。特異な才能である。
「ではシン様へ連絡して荷馬車の交代はやっておくわ。後細かいことはジローが考えてシン様に連絡してね」
「どうやって連絡すれば?」
「観察ちゃんと呼べばいいのよ」
「へえ」
「それじゃね」
ジスランは友達を捕まえてロワール商会まで送ってもらったと御者が話してくれた。
「では帰りましょう」
アンヌは今度は馬車に乗り込んだ。
「ピエネ川の激戦、激闘ピエネ川、激突ピエネ川、盗賊VSジロー国軍ピエネ川の激闘、何でしょうね」
「何それ」
「吟遊詩人が歌うタイトルです」
お気楽アンヌであった。
すぐロワール商会に着いた。




