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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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605 塩輸送荷馬車襲撃顛末

 ジェナとチルドレンは朝からソワソワしている。

「おとたん。今度は人数がいる?」

「そうだなあ。いるけど、やっつける人たちもいるからそんなに回って来ないかも」

「ええ、つまんない」


「まあまあ、ドラちゃんとドラニちゃんに乗って上から見ていようね。面白い劇が見られるかもよ」

「ううーーん」

「見てみないとわからないけど、面白いと思うよ」

「ま、いいか」


 朝から王宮は忙しい。橋が見える高台に工兵隊が見物用のテントをたくさん張る。10時頃から見物客が次々と城門を出て橋が見える高台に移動する。


 ジェナ達は少し遊んできておやつ。ぐっすり寝た。イベントが昼過ぎだからお昼寝はできないからである。

 すぐ早昼にしてドラちゃんとドラニちゃんに分乗して現場上空に到着。勿論下からは見えなくする。


 荷馬車隊は第一の襲撃現場予定地の少し手前でゆっくり昼食にしている。さすがジゼルさんである。


 襲撃者は橋の方に追い込むのが任務である。もう少し橋に近づいて自分たちの前を通過してくれないと橋に追い込むことができない。いつ荷馬車隊が動くか気が気ではない。食事が出来なかった。


 橋近くの次男のジロー小隊は、ジローが母親を発見し、母親の性格と現在位置からわざとゆっくり食事をするに違いないと兵に食事をさせた。


 橋が見える高台では関係者が揃った。庶子とその子、塩商人、商業組合副組合長が一緒だ。国王夫妻、先の国王夫妻、ハビエル神父とトルネード。貴族、商業組合組合長、街の有力者。そして軍隊である。


 元気な先の国王夫妻を見て、庶子派に走った兵、貴族、街の有力者はグラグラである。先の王妃に世話になった者も多い。にっこりと微笑みかけられると、まずい、非常にまずいと思ってしまうのであった。

 それを見た庶子、まずいと思うのであった。塩商人も雰囲気がおかしい。まずいと思うのであった。副組合長はまずいと思ったがもはや後には引けぬ。大変まずいという顔をするのであった。


 街の人も塩が届くらしいと噂を聞き続々とテントの周りに集まって来た。ジゼルさんに頼んだ細工というのは塩の到着イベントがあると市中に噂を流してもらうことである。効果覿面、次々と市民が集まってくる。テントの下の人たちよりはるかに多く集まった。まだ途切れることなく城門から市民が出て来る。一大イベントになってしまった。


 衆人環視となってしまった。庶子の予想外の事態である。


 さて荷馬車隊。食事の後はゆっくり休憩である。隊列は整えてある。動き出すかと思えば座り込む。いつ動き出すか気が気ではない襲撃者。さんざ焦らされてやっと動き出した。

 

 徐々に近づいてくる。先頭は怪物のような馬に乗った偉丈婦である。背中に大太刀を背負っている。思わず尻込みしてしまう。目の前を荷馬車が通過。さて出撃と思ったが、殿はまた怪物馬に乗った先頭のヤバそうな女とよく似た大男が太刀を背負って辺りを睥睨してゆっくりと来る。こちらを睨まれた気がする。先頭を譲り合う襲撃者。


 そこへ後方の丘を越えて兵が攻め込んでくる。

「ならず者だ。賊だ。殲滅だ」


 馬車襲撃者は狼狽える。

「待て、待て。俺たちは軍だ。ならず者ではない」

「制服を着ていない。賊だ。ならずものだ。殲滅だ」


 襲撃者は賊にされて士気が上がらない。その上空腹である。力も出ない。太刀の武者も恐い。あっという間に降伏した。

 

 荷馬車は悠々と進む。橋に差し掛かる。塩を待っていた市民は歓声を上げる。


 まずいと庶子。市民の衆人環視の中、荷馬車を襲ったら悪人になってしまう。襲撃はよせと手で合図するが、それを何故いかないとの叱咤ととった丸太隊。丸太を持って突撃した。


 後ろからは次男のジローが先頭に立って攻めてくる。丸太隊と戦闘になる。兵は丸太を持って必死に橋に走り丸太を置いた。荷馬車隊はゆっくり止まった。


 後ろから追い立てる襲撃隊がいない。話が違うと丸太隊。

「邪魔するな」

 ジゼルさんが叫ぶ。


 アンヌさんが丸太をスパスパ。

 ジゼルさんが短くなった丸太に棒を刺し、持ち上げて丸太隊の方に投げた。

 街の人は大喜び。

「ジゼル、ジゼル、ジゼル」

 の大合唱である。ジゼルの棒が進化したとの声も聞こえる。

 

 観察ちゃんが教えてくれる。女傑で棒を振り回してならずものを叩き潰してまわって有名だったらしい。獲物を求めてわざわざ裏通りにいって棒を振るっていたらしい。


 丸太隊は次男のジローが制圧。

「エイ、エイ」

「オー」

 とやっている。


 観客は塩の荷馬車を襲おうとした丸太隊を制圧した次男に

「ジロー、ジロー、ジロー」

 の大合唱だ。


 庶子派であった貴族も有力者も乗り遅れてはならぬとやけになって叫ぶ。

「ジゼル、ジゼル、ジゼル」

「ジロー、ジロー、ジロー」

 身分を隠して軍隊ということであったがとうにばれていたらしい。


 ジゼルが観客、市民の方に近づいて叫ぶ。

「皆の者、塩は届いた。サルメウムで岩塩の鉱脈が新たに発見された。わが商会が荷馬車10台で買い付けに行った。しばらくすれば届く。安心しろ」

 ウワーッと歓声が上がる。

 英雄だねえ。


「ジゼル万歳、ジロー万歳、ロワール商会万歳」

 歓呼の声があたりに響く。


 庶子派だった者達も心から叫ぶ。

「ジゼル万歳、ジロー万歳、ロワール商会万歳」

 庶子派は壊滅した。


 塩商人は機を見るに敏だ。不利を悟って逃げた。モタモタしているとワイン泥棒として捕えられてしまう。副組合長も一緒に逃げた。


 庶子が気がつくと塩商人と副組合長はいなくなっていた。

 先の国王が近づいてくる。


「田舎暮らしもいいものだぞ。どうだ」

「・・・」

「集落の中の屋敷と暮らしていけるだけの葡萄畑をやろう。ゆっくり休め。書類は預かっておく。倅はワシが教育してやろう」


 塩商人との契約書を入手されてしまったらしい。それに倅を人質に取られた。集落というのは見張りが住んでいるのだろう。

「わかった」

 ほぼ無血で騒動は終わった。


 観客、市民は荷馬車を取り囲んで一緒に城内に帰っていく。工兵隊がテントを片付け始めた。


 僕らは出る幕はなかったね。ジェナたちは面白い劇だったから満足のようだ。

 ハビエル神父は儲けた砂金をステファニーさんに渡した。

「儲けたわね。私もこの国で砂金大袋一袋を儲けたわ。またやりましょう」


 混んでいるから少し後から行こうと思ってブラブラしていた賭けに負けた貴族、それを見て、‘うわっ、詐欺師の元締めがいた。組織的詐欺師集団だ。難癖をつけられたらかなわぬ’、慌てて馬車に飛び乗り門の方に馬車を進めた。


 ハビエル神父とトルネードは、ティランママとティランサンと一緒に帰って行った。ティランママはバトルホースを返して、ハビエル神父さん達を送って行ってくれる。

 僕らはパレートに戻った。

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