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目覚めた世界で生きてゆく 僕と愛犬と仲間たちと共に —新大陸編—  作者: SUGISHITA Shinya


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604 塩輸送荷馬車襲撃前日 (下)

 ハビエル神父とトルネードを呼んで事情を話して、ついでだから橋の手前あたりに転移させた。


「トルネードや。楽しいね」

「ヒヒン」

「向こうに見えるのが橋だね。おや、大の大人が木登りして遊んでいるね」


 トルネードが足元の石を弾き飛ばした。

 ドサっと監視の兵が枝から落ちた。

「足を滑らせたんだろうね」

「ヒヒン」

 今日も絶好調な神父詐欺師と助手であった。


 橋を渡り城門も難なく通過、王宮の通用門で門番に話しかける。

 どうしたわけか、通用門も通過。門番はトルネードまで預かってしまった。


 王宮に入り、迷わず堂々と先の国王陛下の私室へ向かう。あまりの堂々さに誰も疑いもせず私室まで到着した。

 庶子派の侍従がいたがハビエル神父に先の国王陛下にお会いしにきたと瞳を覗き込まれると、意識が薄れ出した侍従、どうぞと答えて座り込んで眠ってしまった。


「こんにちは。シン様から派遣されたハビエルと申します。シン様の神父をしています。今回は薬師ということになっております」

 やっぱり問題なくやってきたと先の国王と先の王妃。


「一応薬師ですからそれらしくやりましょう。この水を飲んでください」

 どこから出したか、水の入ったコップを差し出された。もちろん先の国王は疑わず飲んだ。

 喉越し爽やか、体の中に爽やかさが満ちてくる。

「奥様もどうぞ」

 先の王妃も飲む。体の疲れがとれ体が充実してくるようだ。


「お前、顔。顔」

 先の国王の見る前で、みるみるシワが消えていく先の王妃。

「あなた、あなたの顔のシワが」

「お前も顔のシワが無くなった」


 あまりの煩さに起きた侍従。すぐ部屋に入ってきた。

「シン様が派遣してくれたこの薬師様の水薬によってすっかり治った。もう薬はいらぬ。余っていたらそちが飲むと良い」


 ハビエル神父が隣の部屋の侍従の荷物から水薬を持ってきた。たっぷりある。

「遠慮せずに飲むと良い。我のために滋養強壮の高価な薬を求めてくれたようだ。滋養強壮薬だからお前にやろう。飲みなさい」

 ダラダラ汗を流し始めた侍従。


「どうした。具合が悪そうだな。ますます薬が必要だ。遠慮することはない。飲みなさい」

「お許しください」


 侍従は薬を飲まされて寝たきりになるよりかはと、薬は庶子本人より渡され、その際、寝たきりになる薬だと言われたと自供した。


「そうか。ご苦労であった。今は素知らぬ顔をして勤めていなさい。うっかりすると庶子に口封じをされるだろう。この件が終わったら田舎に帰ると良い」

「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」


「家内の友達のシン様という方が派遣してくれた薬師の薬によってすっかり回復したと表に伝えてきなさい。それから数日経過を見るために薬師の方が滞在してくれる。それも話してきなさい」

「はは」

 侍従は下がって行った。


 すぐドカドカと庶子派と数少ない国王派の貴族がやってきた。

「おう来てくれたか。このハビエル様のおかげですっかり治った。皆にも心配をかけた」


 そんなはずはないと先の国王を見る庶子派の貴族。顔にシワがない。手もすべすべしている。足腰もしっかりしているようだ

「はは、まことに・・・」


 治ってしまった。それは肌の具合で誤魔化しようがない。どうするかと庶子派の貴族。ふと先の王妃をみるとこちらもシワがない。昔日の美を取り戻した。これでは回復したことは事実で隠しようがない。回復していないと誤魔化しようがない。俺は間違った選択をしたのかと庶子派の貴族。

 国王派の貴族は涙だ。


「明日、何やらイベントがあるらしいな。ワシも出よう。手配せよ」

「はは」

 ぐらぐら庶子派の貴族が返事をした。国王派の貴族とハビエル神父によろしくお願いすると言って手配に仲良く出て行った。

 トルネードはもちろん厩舎に案内された。


 侍従はハビエル神父と控室である。暇なのでカードゲームをした。

 たちまち負けが込む侍従。庶子からもらった金額ちょうどで終わりにしてくれた。お金はもちろん巻き上げられた。全てお見通しということか、嘘はつくまいと侍従は思った。


 表は大騒動である。先の国王が完全回復した。いやそれ以上だ。王妃も若返っていると噂が王宮を駆け巡る。もちろん庶子にも噂が聞こえてきた。噂である。いつも注進にしに来る貴族が来ない。

 しょうがないから自ら先の国王の私室に出向いた。


 控室には買収した侍従と何やら神父服のようなものを身に纏った男がいた。

「薬師のハビエルと申します。どうぞ中へ」

 俺の買収した侍従はどうしたと思ったが目を合わせない。仕方がない。中に入った。


「おう。よくきてくれたな。ハビエル薬師の薬のおかげですっかりよくなった。そちが手配してくれた滋養強壮薬は体に合わなかったようだ。そちなら合うであろう。飲んで行くか?」


 くそ。本当に回復している。元の通り、いやそれ以上だ。若返っている。先の王妃も若返っている。

「いや。どこも悪くないので」

「まあ遠慮するな。高価な薬だろう。飲んだらどうだ。ほれ、ほれ」

「元気になって何より」


 庶子は逃げた。ばれていると考える方が普通だ。それにしてもあの薬の効果を打ち消してさらに若返らせるなど、信じられない薬だ。ハビエルと言ったな。捕まえて製法を吐かせるか。いや今は塩とワインの交換に専念しよう。国王になれば思いのままだ。今は自重しよう。


 暇なハビエル神父、侍従に言って賭け事の好きな庶子派の貴族を呼んでもらう。賭け事と聞いてもちろんすぐ来た。勝つ気満々である。


 カードゲームを始めると、初めは勝ったり負けたりしていて、勝ち始めたら大勝負を持ちかけられ、流れ的に勝てると踏んで勝負を受けた。結果はボロ負けである。大金である。だが貴族は気がついた。負けた金額は庶子にもらった賄賂の総額であった。冷や汗を流しながら侍従にお付きの者を呼んでもらって自宅から砂金を持って来させどうにか支払いを済ませた。

 負けた貴族はみっともないから、いやあ儲けた儲けたと仲間に吹聴するのであった。


 それを聞いた貴族、次々とハビエル神父の元にやってくる。カードゲームでも丁半博打でも全て負けた。剛のものがイカサマ博打を仕掛けた。しかしさらなるイカサマを仕掛けられ、元は自分のイカサマだからどうにもできず負けた。短時間のうちに庶子派の貴族の全員が負けてしまった。圧倒的な力量の差である。


 ハビエルという男は、薬師ではなく、大博徒、大詐欺師、大ペテン師、大イカサマ師ということになった。


 隣で聞いていた先の国王夫妻は神様派遣の神父の所業に大笑いである。久しぶりに腹の底から笑った夫妻であった。


 やっぱりハビエル神父は面白いな。さて明日の準備は、何もないな。時間になったらドラちゃんに乗って上から見ていよう。


 お狐さんも来て、夕食をみんなで食べた。そしてお風呂に入っていつものようにお狐さんの話を聞いて楽しみ楽しみと寝てしまった。

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