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嫌われ者の俺がいじめを救い、学校のヒーローになるようです。  作者: 松竹梅竹松
第1章 いじめ

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第1章 最終話 新たなはじまり

「後輩くん、制服をなくすのっておもしろそうじゃない? いや制服が嫌いなんじゃないよ、制服を着ないっていう選択肢ができるのが楽しいんじゃん! とりあえずやってみようよ!」



 学校にプライベートルームがほしいからと適当に入った同好会。そこにいた先輩はみんなのヒーローだった。



「射丹務くん、潰れそうな美容院を助けるなんてかっこよくない? それにここで恩を売ったら今後サービスしてくれるはず。ボクにいい考えがあるんだよね」



 その人はただ楽しいことが好きなだけだった。それなのにいつの間にか人を助け、人に愛されている。そういう生き方ができる人だった。



「新斗……ごめんね、しくじっちゃった。ボクは学校を辞めることになった。急なことでごめん」



 そんな先輩は、突然そう言って学校を去っていってしまった。全てを知ったのは数日後。香苗さんに教えてもらい、俺は俺に残された使命を知った。



「でもこれだけは言わせて。ボクは君のヒーローだった。次は君が誰かのヒーローになる番だよ」



 これが俺と先輩の最後の会話だ。あの人はこのネット社会に意味なく立ち向かうことを楽しんでいてスマホもパソコンも持っていなかったから。家を出てどこかに出かけたというあの人を追う手段は何一つとしてなかった。



 まぁ陽火先輩のことだ。そのうち旅にも飽きてふらっと帰ってくることだろう。その時何を話そうか。話したいことは山ほどあるし、俺ならいくらでも話すことができる。その膨大な記憶の中で、まず俺が伝えたいことは――。



「あ、ようやく起きましたか」



 先輩の顔が脳裏から消え、代わりのように千堂の顔が視界に入った。どうやら俺は夢を見ていたようだ。夢のような時間の夢を。



「先輩、午後の授業出ないでずっと部室で寝ていたそうですね。香苗さんから聞きました。ダメですよ、授業にはちゃんと出なきゃ」

「……香苗さんは?」


「帰りました。もう十八時ですからね。でも新斗くんに怒られちゃうから~っていうのはどういう意味でしょうか」

「ああ……あの人俺の許可なく夜出歩けないんだ。そういう約束だから」



 去年から愛用している寝袋から出て一度伸びをする。十八時ってことはもう帰る時間か……でもまだ寝足りない。朝一度仮眠を取ったとはいえ、ほとんど徹夜状態であんな疲れることをしたんだ。もう脳も身体もくたくただ。



「……で、お前は何やってんの?」

「ポスター作りです。仕方ないとはいえ、読書研究会なんて名前では困っている人も助けを求めづらいです。しっかりと人助けをしている同好会ですよというのをアピールしないと」



 ……うん、状況はわかった。わかってしまった……めんどくさい!



「俺はお前の入部は絶対に認めないし、人助けなんて絶対にやらないからな!」



 ようするに自分のように辛い人を助けてあげたいですーとか言って読書研究会に入るつもりだろう。そして俺を巻き込んで人助けを強要するつもりだ。誰がそんなめんどくさいことするもんか。絶対に絶対に嫌だ!



「いえ、先輩は私の入部を認め、積極的に人助けをする義務があります。その理由が三つ」

「言ってみろよ。俺に口喧嘩で勝てると思ってんのか勘違い女! お前は所詮俺が手助けしないと何もできないただの能天気で世間知らずなお嬢様だってわからせてやるよ!」



 ドヤ顔で指を三本立てる千堂。最初の意趣返しをしたいのだろうが、舌戦において俺に敵う奴がいるわけもない。そのドヤ顔を泣きっ面に変えてやる。



「まず一つ。私は部活動存続届に名前を書きました。これは同時に入部届にもなります。すなわちもう入部は認められたも同然です」

「甘いな。今の俺がお前のクラスメイトに頼めばビビって名前くらい貸してくれるはずだ」


「ああ、もう先生に提出済みですので入部は確定です」

「ああああああああ!」



 クソ……俺が寝てる間に終わらせてやがった……! なんだ千堂のこのドヤ顔……顔がいい分余計むかつく……!



「二つ。読書研究会の活動は人助けをすることです。先輩は自分で動きたくないんでしょう? なら積極的に動く私の存在は喉から手が出るほどほしいはずです」

「違うな、読書研究会の活動内容は本を読むこと……いやそれすらもしたことないけど。とにかく人助けなんて絶対に活動内容から逸脱してる!」


「でももう困ってくる人を助けますというポスターを学校中に貼ってしまいましたしビラ配りもしてしまったので。今さら取り消せはしませんよ?」

「なぁ俺が寝てる間に終わらせたこと後出ししてくんのズルだろ!」



 千堂の奴……俺に文句を言わせないよう、寝てるのをいいことに外堀を埋めやがった。だからドヤ顔やめろって!



「最後、三つ目。私はまだ、先輩を惚れさせていません」



 俺が動く理由。その最たるものは好きかどうか。それを満たせなかった千堂は、俺に助けてもらうため好きにさせてみせると宣言した。そして結果は……。



「先輩を惚れさせるのは助けてもらった以上マストです。裏を返せば、先輩は私を好きにならないといけない。もう私を助けてしまったわけですからね。その努力はお互いするべきだとは思いませんか?」

「つまりそのために近くにいるべきってことだろ。学年が違うんだ。部活で繋がりがなきゃ話すことすらできないからな。でもこんなの簡単だ。俺が今お前を好きだって言えば終わる話」

「言ってくれるんですね? 私に惚れた、私が好きだって」



 鬼の首を取ったように早口でまくしたてると、千堂は素早くスマホを録画モードにして構える。



「さぁどうぞ、言ってください今すぐに。ああスマホは気にしないでくださいね。これは条件を達成した証拠を残すのに必要なことですから。さぁどうぞっ」



 今までよりもずっとわかりやすくドヤ顔でニヤニヤ笑みを深めている千堂。……馬鹿にしやがって。それくらい適当に言ってやる。千堂雪華が好きだ。嘘でもいいから言えばいいだけ。そう……一生記録に残るスマホの前で……。



「……まいった」

「勝ちましたっ」



 完敗。わかりやすいくらいの完敗だ。まさか……正義とか抜かしてる頭お花畑女に完璧に言い負かされるなんて……。



「……変わったな」

「……先輩のおかげです」



 俺のおかげなもんか。俺はそう、手助けをしただけ。実際に変わり、行動し、掴み取ったのは千堂自身の努力が全て。



「本当に……ありがとうございました」



 だがその言葉は、千堂の涙を前にしては口から出てくれなかった。



「ずっと……怖かったんです。このまま三年間いじめられるんじゃないかって……将来が終わっちゃうんじゃないかって……生きることすらできなくなっちゃうんじゃないかって……本当に怖かった……」



 千堂の震える手からスマホが落ちる。俺は彼女の足元に転がったスマホを拾うと録画をオフにした。こんなもん、残しておくもんじゃない。



「先輩は嫌われ者かもしれません……。性悪だし口は汚いし態度は悪いし最低だし……」

「ほっとけ」

「それでも私は!」



 せっかく努力して作った化粧が涙によって崩れ、素顔が晒される。裏表一つない、剥き出しの本心。それを露わにした千堂は、俺に抱き着きこう告げた。



「私にとっては、最高にかっこいいヒーローです」



 ……あぁクソ、やっぱり俺はこいつが嫌いだ。苦手で受け入れ難く、それでも――。



「早く私のことを好きになってくださいね?」



 先輩に再会したらまずこの話をするんだろうな。俺にもかわいい後輩ができたって。

ひっっっっさしぶりに小説を書きました。松竹梅竹松と申します。あとがきもひさしぶりすぎてどんなテンションだったか覚えていませんし、なろうのUIもずいぶんと様変わりしていて困惑続きです。


まずはここまでお読みくださり誠にありがとうございます。本当は1話2000文字程度が読みやすいのかなと思っているのですが、主人公が長話好きというのもあり毎話少し長くなってしまっています。読みづらいと思っている方申し訳ございません。


次章はついにあのキャラが登場……!と思っています。よろしければもう少々お付き合いいただけると幸いです。


それでは改めましてここまでお読みいただき本当にありがとうございます。おもしろい、続きが気になると思っていただけましたらブクマや☆☆☆☆☆を押して評価していただきたいです。やる気が、、、出ます!!!!! みなさまの応援が続ける力になりますので、おもしろいと思っていただけたらで結構ですのでご協力いただけると幸いです。それでは今後ともよろしくお願いいたします。

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