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カタリーナを待ち焦がれる王女と王

「ようやく王宮に着きましたね」


ジビラが嬉しそうに言う。

ずっと馬車に揺られていたので、揺れない建物が恋しいのだろう。

カタリーナたちを乗せた馬車は、ようやく王宮の大手門を通り抜けた。


大手門を(くぐ)り抜けたと言っても、目的地の王妃宮まではまだかなり距離がある。

正門である大手門を抜けると、次にあるのは二の門だ。

二の門より先に馬車で進むことができるのは侯爵位以上の者だけであり、普段この門は閉じている。

ほとんどの者は、二の門の脇にある歩行者用通用口から出入りする。

それより先にはさらに三の門があり、三の門の中まで馬車で入ることができるのは王族だけだ。

本宮や王妃宮など、王宮の主要施設は全て三の門の内側にある。


「あー。ようやくだー。

帰ったらすぐ、ゆっくりお風呂に入りたいわー」


「エミーリエさん! 平日の午前中に何を言ってるんですか!」


エミーリエの仕事は、カタリーナの話し相手になることだ。

せめて王宮使用人が忙しく働く時間帯ぐらいは、ゆっくりお風呂に入ったりせず、いつでも話し相手を務められるよう待機しているべきだ。

ジビラはそうい言いたいのだ。


エミーリエとジビラは比較的良好な関係だ。

だが、忠義に篤い真面目なジビラとしては、エミーリエの勤務態度を是正したいようだ。


ちなみに、エミーリエはかなりの自由人だ。

カタリーナとお(しゃべ)りをしていないときは、図書館に行ったり、庭園を散歩したり、王宮内の美術品を鑑賞したり、厨房につまみ食いに行ったりと、いつもふらふらしている。


「構わないわ。

長旅で疲れているんですもの。

だからジビラ。

あなたもしっかりとお休みしてね?

あなたは長旅に加えて領地戦に参戦までしてくれたんだから、その疲れをしっかりと癒やしてね?

明日から、あなたは忙しくなるわ」


「明日ですか?

王妃殿下のスケジュールなら把握してるつもりでしたけど、何かありましたっけ?」


「これから、あなたの叙爵式と勲章授与式があるの。

式典のドレスやアクセサリーの準備は、明日から始めないともう間に合わないと思うの」


「はいいいい!!?

な、な、な、なんで私が!!?」


「もう。何を言っているの?

わたくしたち二人で、あの大軍に完全勝利したじゃない?

王家としては、あなたの功績を(たた)えないわけにはいかないわ」


「で、でも、あれは王妃殿下がお一人でされたことです!!

私なんて、ただ旗を持って立ってただけです!!」


「旗を持ってあの大軍の前に立つだけでも、十分に凄いことよ?

誰にでもできることではないわ。

実はね。

領地戦に向かう前に、陛下にはもう了承を頂いているの。

だから、叙爵も勲章授与も決定事項よ?

ドレスの仕立て屋と宝飾品を扱う商人は、もう手配してあるわ。

明日の午前中、王宮に来ることになっているの。

それから、美容施術師も手配してあるから、明日から毎日エステも受けてね?

費用は全てわたくし持ちだから、そこは心配しないで良いわ」


「……そんな」


ジビラは、呆然とするばかりだった。


「出発前にそこまで準備してるって驚きだわ~。

王妃様って、ホント仕事できるよね?」


エミーリエは、焼き菓子を取り出してもぐもぐ食べながら言う。


「王妃様あああああああああああああああ!!!」


(っ!?)


「馬車を停めてちょうだい!」


窓を(のぞ)き込んで声の主を確認したカタリーナが、御者に言う。


馬車はまだ、三の門をようやく通り抜けたところだ。

各宮からはまだ距離があるその場所で、声を掛けて来たのはマルガレーテだった。

叫ぶようにカタリーナを呼び掛けながら、一生懸命にこちらへ走って来る。


「王妃様っ!!!」


馬車からカタリーナが姿を現すと、マルガレーテの顔はぱああっと輝く。


「逃げないから、走らなくても大丈夫よ?」


カタリーナがそう言っても、マルガレーテは走った。

そして、腰を落として待つカタリーナの胸に飛び込む。

ぜえぜえと呼吸しながらも、ぎゅっとカタリーナにしがみ付く。


「どうして、ここにいるのかしら?」


マルガレーテを抱きかかえて立ち上がったカタリーナは、腕の中の彼女に尋ねる。


「お、お、王妃様の、ば、馬車が、み、見えた、から」


息を切らしながらマルガレーテはそう言う。

その言葉の途中で涙をあふれさせ、またカタリーナの首にしがみ付く。


息切れをしていて、ぽろぽろと泣きながら嗚咽も漏らしていて、カタリーナにしがみ付いてもいて、マルガレーテは色々と忙しそうだ。

マルガレーテだけではなく彼女を追い掛けてきた彼女の侍女も馬車に乗せ、彼女から話を聞くことにする。


長距離移動の負担を軽くするため、カタリーナたちは六人掛けの大きな馬車に三人で乗っていた。

追加で人を乗せる余裕は十分にあった。


「申し訳ありません。

王妃殿下がご留守の間に王女殿下が解かれる予定だった問題集ですが、ほとんど終わっていません。

せっかく王妃殿下がご用意下さったのに、面目次第もありません」


マルガレーテの侍女は深々と謝罪する。


マルガレーテは、もうこの歳にして勉強が習慣になっている。

言われなくても進んで勉強するし、カタリーナが作った問題なら喜んで解く。

そんな彼女が勉強に手が付かなくなったなら異常事態だ。


「お勉強をせずに、何をしていたのかしら?」


「王女宮の大手門が見える部屋で、ずっと窓の外をご覧になっていました。

お勉強もお遊びもされずに朝から晩まで、それどころか夜中でも目を覚まされるとその部屋に行かれて、ずっと窓の外をご覧になっていたんです。

王妃殿下の馬車の色だけは、覚えていらっしゃったようです。

似たような色の馬車が大手門に向かう坂に現れると外に駆け出して行かれて、王妃殿下の馬車ではないと分かるとしょんぼりされることを繰り返されていました」


王宮は小高い丘の上にある。

王女宮でも部屋によっては、大手門とその先にある王宮へと続く坂道が一望できる。

マルガレーテはそんな部屋から、一日中外を眺めていたようだ。


「……そう」


幼い子がおもちゃで遊ぶこともせず、生活の全てを投げ出して、一日中ただ窓から外を眺め続ける。

一体どんな心境なら、五歳の子にそんなことができるんだろう……。


彼女はまた、ここまで息を切らして走って来てくれた。

似たような馬車が来る度に、そんなことをしていたのだという。

そこまで追い込まれてしまったマルガレーテを、カタリーナは哀れに思ってしまった。


同時に、そこまで自分を必要としてくれることが嬉しくてなってしまった。

彼女との確かな(きずな)を実感してしまった。


マルガレーテを哀れむ気持ちと、彼女との深い(きずな)を感じて嬉しい気持ちが()い交ぜになり、生み出されたのは目頭が熱くなるほどマルガレーテを愛おしく思う気持ちだった。

零れそうになる涙を懸命に抑えて、カタリーナにしがみ付くマルガレーテをぎゅっと抱き返す。


「マルガレーテ。

わたくし、今日はあなたとたくさん遊びたいわ。

あなたの今日のご予定はどうかしら?」


「だ、大丈夫ですわ! 全然、大丈夫ですわ!!

わたくしも、遊びたいです!!

たっくさん!! たああっくさん遊びたいですわ!!」


今泣いた(からす)がもう笑っている。

まだ目には涙がたまっているのに、マルガレーテは大喜びの笑顔だ。


「うふふ。そう言ってくれて、嬉しいわ

お着替えをしたらあなたのお部屋に行くから、少し待っていてくれるかしら?

それから、今日はずっと一緒にいましょうね?」


「わたくし、今からずっと一緒が良いですわ。

わたくしのお部屋でお待ちするのではなくて、王妃様のお部屋でお着替えをお待ちしたいんですの。

わたくし、良い子にお待ちできますわ!」


「ふふ。もちろん構わないわ」




馬車が王妃宮に着く。

カタリーナがマルガレーテと手を(つな)いで馬車を降りると、なんとそこにフィーリップがいた。

出発時間が決まっている見送りなら、フィーリップも対応は可能だろう。

しかし、到着時刻が定かではない出迎えは、多忙なフィーリップでは困難なはずだ。


「陛下。ご機嫌麗しゅう存じますわ。

ただいま戻りま……」


「よくぞ……よくぞ無事に戻って来てくれた……」


カタリーナのフィーリップへの挨拶は、途中で言葉が止まってしまった。

フィーリップが真正面からカタリーナを抱き締めたからだ。

カタリーナの意思を尊重して自由にさせてはいるが、フィーリップもまた領地戦は不安だったのだ。


(ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!)


カタリーナは、動きを止めてしまった。

人前で男性に抱き締められ、心の中では大絶叫だった。


背の高い彼に抱き締められると、視界に見えるのは彼の胸板だけだ。

鍛えている男性らしい引き締まった体の感触と、服越しの彼の体温が頬から伝わる。

彼が付けている香水の柑橘(かんきつ)系の香りが鼻腔(びくう)を満たす。


これらの様々な感覚が、男性が非常に近い距離にいるという事実をカタリーナに伝えている。

それがカタリーナを、余計に混乱させてしまう。


「ご、ご機嫌麗しゅう存じますわ。陛下」


マルガレーテが口をぽかんと開けて二人を見上げていると、フィーリップと視線が合ってしまう。

マルガレーテは慌てて、舌っ足らずな言葉で挨拶をする。


「ご機嫌よう。マルガレーテ。

ちゃんと挨拶ができて偉いな」


今度は、マルガレーテが目を皿のようにして驚く。

これまでのフィーリップは、マルガレーテから挨拶をされても目礼を返すだけだった。

言葉で挨拶を返したことなんてなかった。


それが今日は、しっかりと挨拶を返したのだ。

しかもマルガレーテの前に来て腰を落とし、彼女の頭まで()でている。


「なぜ君は、この馬車に乗っていたんだ?」


「お、王妃様をお迎えに行きましたの……」


ほとんど会話したことのないフィーリップに人見知りをするマルガレーテは、もじもじとしながら答える。

だが、五歳児のその説明では要領を得ない。

彼女の侍女が説明を補足する。


「なるほどな。

それでは、領地戦の報告はオットマーから聞くとしよう。

君たちは今日、ゆっくり遊ぶと良い」


「そ、そ、そ、そうですわね。

そ、そ、そ、それでは、し、し、失礼しますわ」


まだ動揺が脱け切っていないカタリーナは、フィーリップがそう言うと逃げ出すように王妃宮の入口へと向かう。


「王妃様! 面白い歩き方ですわ!」


右手と右足、左手と左足を一緒に前に出してしまうカタリーナのギクシャクとした歩き方を、マルガレーテが真似をして遊びながらカタリーナに付いて行く。





たくさん遊ぶと言っていたマルガレーテだが、たくさんは遊べなかった。

遊んでいるうちに、彼女はすぐに寝てしまった。


深夜にも度々起きて窓から外を眺め、カタリーナの馬車が来ることを(こいねが)っていた彼女は、ここ数日かなりの寝不足だった。

カタリーナが側にいてくれる日常が戻ったことで、安心して緊張の糸が切れてしまったのだ。


ソファで寝てしまったマルガレーテを、カタリーナは自分のベッドに寝かせる。

そして、自分も彼女の隣で横になる。

約束通り、その日はずっとマルガレーテと一緒にいた。



◆◆◆



カタリーナたちが王宮に到着したその翌日も、カタリーナはマルガレーテと遊び続けた。

カタリーナのベッドでしっかりと睡眠を取ったマルガレーテは体調も万全で、途中にお昼寝を挟みつつも、朝から晩までたっぷりと遊ぶことができた。

彼女を寝かし付けて自室で仕事をしていると、フィーリップの使用人が訪れた。

酒席の誘いだった。


フィーリップの名を聞いて、彼に抱き締められた記憶がカタリーナの脳裏に浮かぶ。

恥ずかしさに耐えられず、手で顔を覆ったり、頭を横にぶんぶんと振ったり、机に顔を伏せたりしてしまう。


林檎のように真っ赤な顔をして突如そんな奇行を始めるカタリーナに、フィーリップの使用人は驚きつつも無言で見守る。

彼女の視線に気付いたカタリーナは、慌てて居住まいを正す。

奇行をじっと見られ、先ほどとはまた別の恥ずかしさが上乗せになる。

カタリーナの頬は焼けるようだった。


「ちょ、ちょうど良いわ。

い、色々とお話があったのよ」


羞恥に悶えながらも、カタリーナは誘いに応じた。





「よく来てくれた。

久しぶりにゆっくりと話せるな」


酒席のための一室に入ると、フィーリップはもう部屋で待っていた。

カタリーナを見付けると、彼は優しげに微笑む。


昼間に見せる、隙のない業務用の笑顔ではない。

屈託のない優しげな笑顔だった。

その笑顔にカタリーナの心臓が跳ねる。


(駄目よ!

しっかりしなくては!

今日は大事なお話を、いくつもしなくてはならないんだから!)


一瞬、彼に抱き締められたときのことが脳裏に浮かびそうになった。

カタリーナは全力で思考を制御してそれを打ち消し、冷静さを保つ。


領地戦から戻ってからこれまで、フィーリップとはゆっくり話していない。

溜まっていた業務連絡をしなくてはならない。


また、領地戦に勝ったら父親としてマルガレーテに愛を注ぐと、フィーリップは約束した。

その話も、今日はしなくてはならない。

パニックを起こしたまま、そんな大事な話をするわけにはいかない。




「ええっ!?

ボールシャイト家が、滅んだ!?」


まずは業務連絡から始めた。

そのときのフィーリップの報告に、カタリーナは驚愕(きょうがく)してしまう。


「ああ。ちょうど君たちが領地戦をしていた日のことだ。

兵力の大半を領地戦に回した結果、手薄になった領都を攻められてしまったのだ」


ボールシャイト家だけではない。

領地戦に参加した不可侵貴族家は、三家とも侵攻を受けたそうだ。


アウフレヒト辺境伯家は、領地戦に大規模な派兵を行いつつも、隣国に対する備えとしてある程度の兵力を領地に残していた。

強大な軍事力を持つ辺境伯家だからこそ可能なことだ。


そしてあの領地の領都は、強固な城塞都市だ。

侵攻を受けても、そう簡単には陥落しなかった。


オルローブ侯爵家は、あの家の寄り子である貴族家の援軍が間に合い、(から)くも防衛に成功した。

街のいくつかは奪われたが、領都は守り切ったとのことだ。


しかしボールシャイト家は、そんな幸運に恵まれかった。

領都まで占領されて、一族は根絶やしにされてしまった。


三家を狙った理由は、もちろん霊宝だろう。

これらの家いずれかが領地戦で霊宝を得て、次の王家になることを阻止したかったのだ。


「領地戦に参加中の家を侵攻するのは、王国法違反ですわ」


領地戦とは、戦火をいたずらに拡大しないための手段だ。

通常、契約書に記された貴族以外は参戦できない。


また、領地戦の最中にある貴族の領地を、他の貴族が侵攻することも許されない。

それを許してしまえば、実質的に領地戦に参加できる貴族に制限がないのと同じだ。

戦火は無秩序に拡大してしまう。


「まだ確認中だが、おそらく王国法には違反していない。

侵攻したのは、君たちがしていた領地戦が終結してから数時間後だ。

領地戦終了後に攻め入ったことになる」


「攻め入った家はどちらですの?」


「ゼッキンゲン家とコルウィッツ家、それからハッツフェルト家だ」


「え?

ゼッキンゲン家はともかく、コルウィッツ家とハッツフェルト家は領地戦の真っ最中ですわよね?

あれらの家が他家の領地を攻めるのも、王国法違反ですわ?」


領地戦に参加中の貴族の領地に、他の貴族が侵攻することは王国法違反だ。

同様に、領地戦に参加中の貴族が、参加していない貴族の領地を侵略することもまた王国法違反だ。

これもまた、戦火を際限なく拡大しないためのルールだ。


「君たちの領地戦の日に、ハッツフェルト家とコルウィッツ家の領地戦でも和解が成立している。

こちらも確認中だが、おそらく王国法には違反していない。

侵攻開始は、和解成立から数時間後だ」


「なるほど。

ハッツフェルト家とコルウィッツ家は敢えて領地戦を続けることで、それを侵攻の隠れ(みの)にしたのですね?」


「そうだ。

領地戦中の家の軍が多少移動したところで、あまり警戒しないからな。

威嚇のための追加派兵なんて領地戦では珍しくないし、領地戦中なら移動中の軍が他の領地を攻撃する危険も少ない。

軍を移動しても警戒されないことを利用して、ボールシャイト家を不意討ちで滅ぼしたのだ」


「うふふ。好都合ですわね」


「そうだな。好都合だ。

ハインツの軍が狼煙(のろし)を上げたことは、報告を受けている。

おそらくはハインツも一枚()んでいて、彼が上げた狼煙(のろし)を見て電撃戦を仕掛けたのだろう。

だから、こんなことになっている」


そう言い合う二人は、悪い笑顔だった。


狼煙(のろし)では、そう複雑なことは伝達できない。

煙の上げ方を変えることにより伝達事項を変えられるが、それも数種類程度のものだ。

「ボールシャイト家がカタリーナの旗を取った」などの発生可能性の高い結末なら、それに応じた煙の上げ方も用意されているだろう。

しかし「女性二人で万を超える軍勢を鏖殺(おうさつ)してしまった」などの常識的に考えてあり得ない結末は、対応する煙の上げ方がないことが普通だ。

おそらくハインツが上げた狼煙では「その他の事態により領地戦は終結した」程度のことしか伝えられない。

カタリーナの絶大な戦力までは伝えることができない。

だから彼らは、こんなことを仕出かしてしまっている。


「その、ハインツに関することだが……。

君は、愛する男性に監禁されることを望んでいるという報告があったのだが?」


「はいいっ!!?

あ、あ、あ、ありませんわ!!

そ、そ、そんな願望、一切!! 全く!! 全っ然っありませんわ!!

そんなのっ、あり得ませんからっ!!」


「そうなのか?

君を護衛していた女性騎士の報告によると、閉じた世界で朝から晩まで愛し合うことに、特に強い関心を示していた、とあったのだが?」


「あ、あ、あれは、あ、あ、あまりにも破廉恥なことを言うから、は、は、恥ずかしくなってしまっただけですわ!!

決してっ!! 断じてっ!! そんな破廉恥なことに関心なんてありませんからっ!!

わ、わ、わたくしは、しゅ、淑女ですわよっ!?」


「……君は、男女関係のことになると途端に危なっかしくなる。

私の方でも目を光らせてフォローはするつもりだが、何か困ったことがあったらいつでも相談してほしい。

必ず君の力になることと、全て君の望み通りに対処することを約束しよう」


カタリーナの手の上に自分の手を置いて、フィーリップは優しく諭すようにそう言う。

さっきまで顔真っ赤にして護衛騎士の報告を否定していたカタリーナだが、彼のその優しく置かれた手に、また別の理由で顔が赤くなってしまう。


(頼りにしたくなってしまう人ね……)


フィーリップは色々と心配はしてくれるが、カタリーナの行動を制限したりはしない。

心配はしながらも、領地戦に行くことは認めてくれた。

さり気なく見守ってくれているし、今後のことでもカタリーナの希望を優先する約束をしてくれた。


そんな彼に、カタリーナは大人の余裕と安心感を感じてしまった。

生きている年齢だけで言えば、前世の記憶もある自分の方がずっと上だ。

だが精神的には、彼の方がずっと大人のように思えた。

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― 新着の感想 ―
カタリーナに可愛らしい弱点があって1万人虐殺してもホンワカ雰囲気
[気になる点] 旧ボールシャイト領は、領地戦勝利に伴って直ちにその半分が王領になっている。 旧領全土を占領している3家は、事実上、王領を不当に占領しているのと同じ。 王家は、条約に基づき、正規軍を動員…
[一言] マルガレーテには随分と心配をかけちゃったみたいですねー フィーリップも彼女に負けず劣らず心配してくれていたようで 今回の件で家族の距離が近付いてくれるといいなあ
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