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白雪姫のいじわるな継母に転生しましたが、継娘が可愛いです  作者: 新天新地


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ハッツフェルト家との遭遇

「ようやく見付けたぞ!

おい! 待て!」


カタリーナが王宮を歩いていると、後ろから声を掛けられる。

怒りの形相で睨(にら)み付けているのは、父親であるハッツフェルト侯爵だった。

侯爵夫人と妹も一緒だ。


「貴様! 自分が何をしたのか分かっているのか!?

お前のせいで、儂(わし)は宰相から降ろされたんだぞ!?」


怒り心頭でカタリーナの許(もと)へ駆け寄った侯爵は、そう言ってカタリーナの頭頂部辺りの髪を鷲掴みにする。


「本当に! なんて子なんでしょう!

せっかくわたくしが付けて上げた侍女を処刑してしまうなんて!

こんな恩知らず、見たことがありませんわ!」


「まったく、何をしても愚図ね!

いい迷惑だわ!」


遅れて駆け寄って来た侯爵夫人と妹も、怒りを露わにしている。


「あら。

お父様が宰相の座を降ろされたのは、自業自得ですわ。

あんな侍女を王宮に送り込んだから、こうなったのではなくて?」


「なんだと!!?」


これまで従順だったカタリーナからの思わぬ反論に、激昂(げきこう)した侯爵はカタリーナを平手打ちにする。

かなり強く叩かれ、カタリーナは弾き飛んで床に倒れ込んでしまう。


「おい!

さっさと出せ!」


倒れてから上半身だけを起こし、まだ立ち上がっていないカタリーナに、侯爵はそう言って手を伸ばす。


「何をですの?」


唇から血を流しながらカタリーナは尋ねる。


「決まっているだろう? 霊宝だ。

聞いたぞ?

呪術が使い放題になる霊宝を手に入れたそうだな?

早くそれを出せ。

それで、今回の失態は赦してやろう」


その言葉でカタリーナは理解する。

気軽に魔法を使うカタリーナを見て、呪術が使い放題になる霊宝を手に入れたと周囲は誤解しているようだ。


(これは、都合良く誤解してくれたわね。

使えるわ)


カタリーナは内心ほくそ笑む。

霊宝を持っていると知られたなら多くの者がそれを奪おうとするだろう。

不忠者が、自らからカタリーナの許(もと)を訪ねてくれるのだ。

王宮の掃除にはちょうど良い。

運良く、ハッツフェルト家の者たちもその誤解をしてくれている。

彼らの今後の行動も予測しやすい。


「なぜ、お渡しする必要があるんですか?

もしかして、手を差し出すだけで簡単に手に入る、なんて勘違いをしていらっしゃいますの?」


「なんだと!?」


従順な愚女とは思えない不遜な物言いに、侯爵は逆上する。

座り込んでいたカタリーナの顔面を蹴り飛ばす。


「お、お、王妃様を、い、いじめないでください!」


カタリーナは驚きで目を見開く。

そう言ってカタリーナと侯爵の間に割って入ったのは、マルガレーテだった。


両手を広げて侯爵の前に立ち塞がる彼女は、がたがたと震えている。


前世で戦場を渡り歩いたカタリーナとは違って、マルガレーテは暴力とは無縁な世界で暮らしてきた。

そんな彼女が侯爵の前に出るのは、大変な勇気が必要だっただろう。

そこまでカタリーナのことを想ってくれる彼女を目(ま)の当たりにして、カタリーナは胸の奥から熱が湧いてくる。


「これは王女殿下。

ご機嫌麗しゅう存じます。

ですが、これは親子の問題です。

関係もないのに、口を挟まないで頂きたい」


王女に対しても見下した目を向け、不遜な物言いで侯爵は王女の指示を無視しようとする。


「駄目です!

お願いです!

止めてください!」


そう叫ぶマルガレーテは、大粒の涙を零(こぼ)し始めている。


「……マルガレーテ?」


カタリーナはぎょっとして、彼女に声を掛ける。


「うう……ううう……」


嗚咽を漏らしながらぼろぼろと涙を零すマルガレーテの頭上には、光球が生み出されていた。

豆粒ほどだった光の球はどんどん大きくなり、直径はもうマルガレーテの肩幅ほどになっている。

頭上一メルトほどの高さで浮く光球は、雪のように純白で淡く優しい光を放っている。


(大変だわ! 予定変更よ!)


「ぐふっ!?」「きゃあ!?」「ごほっ!?」


カタリーナは慌てて立ち上がると、衝撃弾の魔法でハッツフェルト家の三人をいとも簡単に弾き飛ばす。

数メートルほど吹き飛んだ三人は、床で呻(うめ)き声を上げ始める。


「マルガレーテ。落ち着いて。もう大丈夫よ。

ご覧なさい?

悪者はみんな、伸びてしまったでしょう?

もう平気よ」


マルガレーテを抱き締めて、必死に彼女を宥(なだ)める。


本来なら、ハッツフェルト家の者たちを挑発して自分に暴力を振るわせるつもりだった。

一方的に殴られてから、その不敬を理由にハッツフェルト家の力を更に削ぐはずだった。

だが、その計画は、中止せざるを得なくなった。


この世界には、エネルギー保存の法則というものがある。

この物理法則により世界は支配されているため、力を行使するならその代償が必要となる。

魔法を使えば魔力を消費し、呪術を使えば星を消費する。


カタリーナが見る限り、マルガレーテが行使しようとした力は魔法でも呪術でもなかった。

しかし力の行使である以上、何らかの代償が必要なのは間違いない。

その代償が、魔力のように回復可能なものであるとは限らない。

だからカタリーナは、予定を変更してマルガレーテを落ち着かせることを最優先した。


カタリーナに抱き締められて安心したのか、マルガレーテはカタリーナの腕の中で眠るように意識を失う。




(はあ。殴られ損ね)


公式の場で王妃を殴ったら誰であっても罪に問われるが、家族が私的な場でするなら大きな罪にはならない。

しかし、大怪我をさせたなら話は別だ。

だからカタリーナは、わざわざ防御魔法を解除してから暴力を受けた。


目論見通り、侯爵はカタリーナに暴力を振るってくれた。

しかしカタリーナもまた、ハッツフェルト家の者たちに暴力を振るうことになってしまった。

これでは喧嘩両成敗となり、ハッツフェルト家に責任追及できない。

結局、ただ痛い思いをしただけで終わってしまった。


意識を失ったマルガレーテを抱きかかえて歩きながら、カタリーナは溜息(ためいき)を吐(つ)く。



◆◆◆



「君は、マルガレーテの異名を知っているか?」


マルガレーテを医師に任せてから、カタリーナは大急ぎでフィーリップを訪ねた。

マルガレーテの母親として、あの力が何なのかを知る必要があった。

国王執務室でそれを尋ねると、フィーリップにそう質問される。


「ええ。白雪姫ですわ」


「では、なぜ白雪姫と呼ばれるのかは、知っているか?」


「雪のように白いお肌だからでしょう?

女性のわたくしから見たら、羨ましいぐらいの白さですわ」


「あの肌の色は、王家の血筋の特徴だ。

歴代の王族を見ても、同じような肌の者は多い。

だが、白雪という言葉を含む異名で呼ばれた者はいない」


言われてみればそうだ。

髪色や肌の色は、血族で似たようなものになるのが普通だ。

たまに髪まで真っ白で、極端に色白な子供が生まれるが、黒髪のマルガレーテはそれでもない。

にもかかわらず、マルガレーテだけが『白雪姫』だ。


フィーリップもまた、羨ましいほどきめ細かくて白い肌だ。

マルガレーテは艶やかな黒髪だが、フィーリップはふわふわと柔らかな白銀の髪だ。

白雪のイメージなら、白銀色の髪を持つ彼の方がずっと近い。


「まだゾフィが健在だった頃、彼女がマルガレーテの前で倒れたことがあったのだ。

そのときも、大泣きするマルガレーテの頭上に光の球が生まれた。

その球から、雪のようなものが吹き出したのだ」


「雪のようなもの、ですか?」


「ああ。

見た目は雪だが、雪ではない。

触っても冷たくないし、溶けて水になるものでもなかった。

少し時間が経つと、煙のように消えてしまった。

ちょうどその場には、有力貴族家もいたからな。

彼らの口からそのことが広まって、白雪姫と呼ばれるようになったのだ」


「……初耳ですわ」


「噂が広まらないように手を尽くしたからな。

それでも広まってしまったから、ゼッキンゲン家などと手を組んで噂を改変したのだ。

白い雪のようなものを生み出したから白雪姫なのではなく、雪のように白い肌だから白雪姫だとな。

雪交じりの風を生み出す呪術は、宮廷呪術師でも知る者がいなかった珍しい術だ。

聞いたこともない呪術より、男性の興味を掻(か)き立てる王女の容姿の方が噂として定着しやすかったのだ」


(きっと当時は、マルガレーテの周囲の人を変えたくなかったのね)


フィーリップの話から、カタリーナは当時の状況を推測する。


呪術を使おうと思ったら、術の手順を知る必要がある。

マルガレーテが呪術を使ったなら、誰かが彼女に呪術の手順を教えたということだ。

だが呪術とは、悪運を招き寿命を縮めるものだ。

そんなものを幼い王女に教えた者がいるなら、目的は王女の寿命を削ることに違いない。

幼い王女に宮廷呪術師さえ知らない高度な呪術を教えるのは、王女暗殺を目論(もくろ)むのに等しい。


その事件が広く知られたなら、王家としても犯人を処罰しなくてはならない。

当時マルガレーテの教師だったゼッキンゲン夫人も、その容疑者のうちの一人になる。

犯人が処罰されたら、マルガレーテの周囲に空席のポストができてしまう。

その空席に座ると目される者は、当時の王家にとって不都合な人物だったのだろう。


「でも、あれは呪術ではありませんよね?」


「分かるのか?」


「ええ。一目で分かりますわ」


フィーリップは驚く。

呪術に対する造詣(ぞうけい)が相当深くないと、一目で判別なんてできない。


「……そうだ。あれは呪術ではない。

部屋とマルガレーテを宮廷呪術師に調べさせたが、呪術の残滓(ざんし)はなかった。

どういったものなのかは、調べても結局分からなかった。

今度は、こちらから聞きたい。

あれは、君だけが使えるという魔法というものでもないのか?」


「ええ。魔法でもありませんわ」


「そうか……」


(陛下までご存知ないとは思わなかったわ。

困ったわね。

これでは対処のしようがないわ)


「関係がある可能性があるのは、ゾフィが使った呪術だろうな。

指先から流れた血を、手順の最後で地面に落とすのは口寄せの術だ。

もしかしたらゾフィは、異能を持つ者の魂を呼び出してお腹(なか)の子に宿らせたのかもしれないな」


「そこまでしてその異能を望んだなら、その雪のようなものの効果は相当強力だったんですね?」


「いや、何かの効果があるものではなかった。

誰かが触れても煙のように消えるだけだったし、降り掛かった調度品などにも変化は見られなかった。

それが届いた範囲も、部屋一つ分程度でしかない」


カタリーナは首を傾(かし)げてしまう。

もし広範囲に本物の雪を降らせることができるなら、強力な異能だ。

気象を自在に変化させられるなら、敵国に飢饉を起こすことだってできる。

王国の将来を考えた王妃が、我が子にその異能を持たせるために命を賭すことも理解はできる。

だが、そんな宴会の隠し芸程度のものを、命懸けで我が子に持たせようとするだろうか。


一体、何を呼び寄せたのだろうか。

王妃が亡くなった今となってはもう分からない。


口寄せの術は、死者を呼び寄せることも可能だ。

その術で前王妃を呼び出して尋ねれば良いのではないか、と思うかもしれないが、それは困難だ。


呪術師に口寄せしてもらえるのは、死後四十九日の間だけだ。

それを過ぎると魂は冥府へと行ってしまう。

冥府の神の絶大な力に抗(あらが)って、死者の魂を冥府から呼び出すのは極めて難しい。


もっとも、四十九日内でも、死者を口寄せすることは滅多にない。

死んだ後も未練がましく生者と話などをしていると冥府の神の機嫌を損ねる、と言われているからだ。

だから遺族は、もう一度話したくても呼び出さない。


殺人事件などの捜査でも、滅多に口寄せの術は使われない。

呪術は万能なので、死者の口止めもまた可能だ。

貴族が絡む事件では、呼び出しても口止めされていることがほとんどだ。


平民同士の事件なら、加害者には死者の口止めを依頼する資金もなく、呼び出せば詳しいことを教えてもらえるだろう。

だが、些末(さまつ)な事件一つ一つで呪術を使えるほど捜査予算は潤沢ではない。

自分の命を切り売りしているようなものなので、呪術師への依頼料はとんでもなく高額だ。




「ハッツフェルト家から要請があった。

豊穣祭を開催してほしいとな。

断り切れずに開催することになってしまった。

すまない」


考えても結論が出ないことを、いつまでも考えるのは非効率だ。

そう言わんばかりに、しばらくの無言の時間の後、フィーリップはさっさと話題を変える。


「謝罪される必要はありませんわ。

本来なら、豊穣祭は毎年開催するものですもの。

前王妃殿下の喪も明けましたから、前例に従って今年は開催するべきですわ」


「しかし、おそらくハッツフェルト家は……君に恥を掻(か)かせようとするだろう」


豊穣祭は、王妃が主催し女性貴族だけが参加する祭事だ。

男性のフィーリップは参加できないので、彼の手は借りられない。

その場でのハッツフェルト家の企みは、カタリーナだけで対処する必要がある。


「ええ。そうでしょうね。

わたくしに、大失敗をさせようとするでしょう。

それからわたくしの再教育を申し出て、しばらくハッツフェルト家にわたくしを閉じ込めようとするでしょうね。

そして、もう一度わたくしを王宮に送り出すときは、あの家の侍女も一緒に送り出そうとしますわね」


カタリーナは呪術が使い放題になる霊宝を持っている、と彼らは勘違いしている。

何としてもその在処(ありか)と使い方を聞き出して、霊宝を奪い取ろうとするだろう。

情報を引き出すなら、気軽に拷問もできるハッツフェルト家でする方が容易だ。


そして、王宮に送り返すときは十分な数の侍女を付けることも忘れないだろう。

もう二度と反抗できないよう、厳重にカタリーナを管理するはずだ。


この予想は、カタリーナにとって容易だった。

ハッツフェルト家の者たちの性格を、彼女はよく知っていた。


「ふむ。そうだな」


フィーリップは、目を見開いて感心した様子を見せる。

彼から見た今のカタリーナは、およそ『ハッツフェルトの愚女』や『吸血の愚王妃』と呼ばれる人物とは思えなかった。

とても聡明(そうめい)な女性に思えた。


「ですから、今回は対処もしやすいですわ。

豊穣祭という場面で、生家での再教育が必要となるほどの大失態なんて、いくつもありませんもの。

大した理由もなく行事をすっぽかしてしまう、王家に代々伝わる豊穣祭用の瓶を割ってしまう、祝詞(のりと)ではなく禍言(まがごと)を神々に奏上してしまう……。

後で抜けがないか確認しますけれど、事前に分かっているものについては、全て予(あらかじ)め手を打つつもりですわ。

それで、少しお力をお貸し頂きたいのですけれど――」


二人はしばらく密談をする。



◆◆◆



「マルガレーテは、どんな様子かしら?」


マルガレーテの寝室に入ったカタリーナは、彼女の側に控えている女性の医師に尋ねる。


「まだ、お目覚めになっていません。

お体には異常がありませんので、じきに目を覚まされるかと思います」


「そう」


ベッドの横に置かれた椅子に腰掛け、カタリーナはマルガレーテの脈を取る。

といっても、心拍数を測っているのではない。

手首から彼女の体内に魔力を流し込み、魔法による診断をしているのだ。


『もしかしたらゾフィは、異能を持つ者の魂を呼び出してお腹の子に宿らせたのかもしれない』


フィーリップは、興味深い考察をしていた。

もし彼の推測通り、前王妃の口寄せが異能を持つ特殊な魂を胎児に宿らせるものだとしたら、マルガレーテの不思議な力の根源はその魂にあるということになる。

力の行使には代償が伴う。

魂を根源とする力を使ったなら、今の彼女の魂には何らかの損傷がなくてはおかしい

この診断は、それを確認するためのものだ。


魔法には、魂を扱う領域のものもある。

死霊魔法や神聖魔法などがそれだ。

前世では大魔法使いであったカタリーナは、ある程度ならそれらも扱うことができた。


「何かお分かりになりましたか?」


医師がカタリーナに尋ねる。


呪術は、手順を知らないと使うことができない。

魔法という宮廷呪術師さえ知らない呪(﹅)術(﹅)を使うカタリーナは、王宮内では呪術の専門家だと思われている。


「気枯(けが)れを起こしているわね」


気枯れとは、魂の中にある大元(おおもと)の気、つまり『元気』が枯渇することだ。

どうやら、フィーリップの推測は正しかったようだ。

マルガレーテの魂は『元気』を消耗していた。


『元気』を失うと、意気消沈してしまう。

つまり、元気がなくなる。


「そうでしたか。

では、宮廷呪術師を呼びましょう」



気枯(けが)れの治療は、医師ではなく呪術師の領域だ。

治療には気枯れ払いという呪術が用いられる。


広く知られた呪術であり、呪術師ではない普通の庶民も使うことも多い。

使われるのは、家族が友人を亡くして意気消沈しているときなどだ。

葬儀からの帰宅した家族に、気枯れ払いの手順に従って呪文を唱えながら塩を振り掛ける。

そうすることで『元気』を回復させ、抑鬱(よくうつ)状態から抜け出させることができる。


「それは止めましょう。

呪術が必要なほど深刻ではないわ」


『元気』の回復方法は、なにも呪術だけではない。

楽しいときを過ごせば、呪術より時間は掛かるが回復は可能だ。


どうやらマルガレーテは、特殊な魂を持っているようだ。

魂に作用する呪術を彼女に使ったら、不測の事態が起こるかもしれない

そう考えたカタリーナは、大事(だいじ)を取って呪術を使わないことにした。






「……王妃様?」


目を覚ましたマルガレーテは、自分のベッドの脇に置かれた椅子で居眠りをするカタリーナに気付く。


「……あら。起きたのね。

良かったわ」


「どうして王妃様が、わたくしのお部屋にいらっしゃるんですの?」


「急に気を失っちゃったあなたが心配だったから、側にいたのよ」


「え? わたくしを、そんなに心配してくださったんですの?」


今は夜中で、部屋にある光はベッドの脇の三叉燭台(さんさしょくだい)一つだけだ。

ぼんやりとした橙(だいだい)色の灯(あかり)に照らされる、薄闇の中にいるマルガレーテは嬉しそうに驚く。


「明日はたっぷり遊びましょうね?

何がしたいかしら?」


カタリーナは『元気』を回復させるための提案をする。


「本当ですの!?

たっぷり遊んでくださるんですの!?

あの、それなら、お絵描きしたいですわ!

あと、お人形さん遊びもしたいですわ!

しゃぼん玉遊びも、ビーズ遊びもしたいですわ!」


「ええ。あなたがしたいことは全部しましょう?」


カタリーナは、さり気なくマルガレーテの手首に触れて彼女の診断をする。

ただ話しているだけなのに『元気』はぐんぐん回復していた。

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― 新着の感想 ―
[一言] マルガレーテちゃんかわいいだけの娘じゃあなかったんだなあ にしても自分の娘とはいえ王妃に手を挙げるのは普通に捕まえていいやつでは
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