ルルージュ・リリー
やるしかないんだ。泣き言も降参もなしだ。追い詰められてからが本番だ。ここからが見せ場ってわけ。わけがわからないだろう? いきなりピンチだぜ。なぜ? よくはわからないけど、燃えるシチュエーションってやつだ。遅れてきた新成人のイニシエーション。こいつを乗り越えなけりゃたどり着けないロケーション。どいつもこいつも臆病者のインケツ野郎だ。おれは違うぜ。ひと味もふた味も違うんだ。ここから見せてやる。おれの目を見ろ。マグマのように燃えたぎって、氷山のようにクールだ。両極端の二律背反。頭の中で起こる内乱。42にしておれは開眼。結局、アレだ。書くしかないんだ。
巡りゆく季節のなか、考えても仕方のないことを考え続けて、おれはどうなったのか? どうもなりやしなかった。ただただ時間を潰していただけだ。時間を圧縮して小さく小さくプレスした。心臓の鼓動は痛いほどだ。おれはなにかに追われていた。だからこそ、ここで踏みとどまってやった。追いかけてくるヤツの正体を見極めようとした。勝負してやろうと思った。でもヤツは現れやしなかった。逃げ出しやがったのか? おれにはわからないよ。てんでなにもわかっちゃいないんだから。ただひとつ言えることは、おれは一度覚悟を決めたってことだ。覚悟を決めてしまえば、話は早かった。おれはいったいなにを恐れていたのだろう。狂おしいほどの焦燥は、恐怖は、妄想だったのか。頭に描いていた逃走経路をたどることはなかった。だからおれはここにいるんだ。こうして文章を書いているんだ。いいとも。とことん付き合ってやる。苦痛を快感に変換して普通の顔でやり過ごしてやる。ベイビー、後悔するんじゃないぜ、おれを引き止めたことを。
申し訳ない。これがいまのおれの文章だ。おれはいま、まるで失語症。本当はこんな状態で文章を書くこと自体が失礼にあたるのかもしれない。でも書くのをやめることなんてできやしない。きみの足に、恥も外聞もなく縋りつくぜ。もともとプライドは低い方なんだ。これくらい苦でもないさ。おれを見捨てないでくれ。読み飛ばしてくれ。ああそうだ。この文章を読んだって、きみの心にはなにも残らない。深みもコクもない文章。喉越しだけを楽しんでくれ。ノンアルコールのバドワイザーみたいなもんだ。バービカンかも。
まったく滅入っちまうよ。ひぐらしのなく頃に。お疲れさま会でなんとか傷ついた心を回復させてはいるけど、本当に嫌な気持ちで喉が詰まっちまう。次のエピソードにいくのがたまらなく嫌だね。次は誰がとち狂っちまうんだ? 誰がぶっ殺されちまうんだ? おれはもう嫌だよ。でもこんな嫌な気分のまま止めることなんてできないだろう? ひどいゲームだ。本当にひどいゲームだよ。こんなもんを家族総出で作ったって、作者の一家はみんな頭おかしいんじゃないか? 綿流し編は本当に嫌だった。軽い気持ちで行った悪事が、もしかしたら取り返しのつかない罪だったかもしれない恐怖。それがバレているのかもしれない、でもバレていないのかもしれない、どっちだか確信のもてない恐怖。きゅっと胸が痛くなる。息が苦しくなる。なんでこんな心当たりのある恐怖をおれに与えてくるんだ、このゲームは。後悔したってもう遅いって、それ一番嫌なやつじゃん。おれって作者の期待通りの反応してるんだろうなあ。超絶素直な優良プレイヤー。竜騎士07の思う壺。
綿流し編、おれの見立てでは犯人は詩音。詩音になりすました魅音になりすました詩音。双子ってずるいよな。すり替わり放題。まあでもエピソードごとの犯人なんて大した問題じゃなさそうだ。はあ。それにしたって、嫌だなあ。びびる系の怖いじゃないのよ。もう嫌なのよ。とにかく嫌。なんでこんなんなっちゃってんの。どうしてこんなんなるまで放っておいたの。こんな村、行きたくねえよ。引っ越してくんなよ前原圭一。新規移住者を拒絶しろよ園崎家。おれの支えは梨花ちゃまだけだよ。マジで。梨花ちゃまだけはとち狂わせないでくだせえとオヤシロ様に祈る。おれ、めっちゃハマってるのね。でもはやくラクになりたいっす。
このままひぐらしの愚痴みたいな賞賛を続けたっていいんだけど、もう書きたいこと書いちゃったし。ゲームに興味のない人だって読んでるだろうし。でもあれゲームか? ゲームです。これは強調しておきたいけど、ひぐらしの小説もアニメもまったく興味ないもんね。ゲームが原典だから手を出したんですよ。ゲームだから楽しめるんですよ。それ以外の媒体しかなかったら、手をつけちゃいないよ。
ゲームでしか楽しめない物語ってあるよね。おれにはあるんだよ。つーかほとんどそうだよ。ゲームが原作の映画とかアニメとか、誰が求めてるんだろう。ゲームをやりゃいいじゃんとしか思わないんだけど、まあこれだけガンガン作られてるってことは需要があるんでしょう。コンテンツの入り口をできるだけ多く作っておくってのは、商売として正しいんでしょうしね。おれが理解できないことは、大抵が正解だからな。おれのために世の中がまわってるわけではないってこった。
自分でなにを書いているのかよくわからないですね。もうどうしたらいいのか。ゆらゆら揺れていますよ。ゆらゆら帝国で考え中ですよ。だいたい夜は家のなかでろくでもないこと考えているあいだに終わっちゃいますよ。昼もそうだけどな、おれの場合は。考えたってなにも始まらないってのに。別になにかを始めるつもりもないですが。いい加減にしなさいっ! ってさ。すばらしきこのせかいのシキさんのこのセリフがめちゃくちゃかわいいんだよね。またゲームの話。いい加減にしなさいっ! ってね。叱ってほしいよシキさんに。嘘ですけどね。誰にも叱られたくなんかないよ。叱られるのも叱るのも向いてないんだよ。叱られたらムカついちゃうし、叱るのは超面倒くさいし。だいたい人を叱る資格なんておれにはないってのに、仕事してるとそういうことをしろって言われるんだよな。嫌なんだよね。正直なところ、おれは組織の儲けなんてどうでもいいんだよ。つーか組織の一員であるっていう自覚すらないもん。仕事なんて学生気分のバイト感覚よ。それでもおれって器用だし口が上手いからさ、有能だって勘違いされちゃうの。勘違いだっつってんのに、聞く耳持っちゃくれんのよ。すぐフックアップされちまう。なんで愚痴ってんの? いまは働いてもいないのに。
適当に生きてゆくって難しいんだよね。どうしても真面目っていうか、献身を余儀なくされる。おれは文章を書くことは頑張りますよ。今日だってもうつまらないことこの上ない文章を書いているのに、書いているでしょう、ちゃんと。真面目に。辛いんですよ。こんなもん書くのは。心苦しいよ。でも仕方ないの。やるっきゃ騎士。いつか好転するって信じてるからね。書き続けてさえいればさ。書くことをやめたらもう終わりだよ。人生すなわち辛抱、辛抱。苦しくったって、書くことなくたって、文章は書けるからね。必死でしがみつくんだよ。マジでプライドも拘りも捨ててるから。がむしゃらにしゃかりきに。振り返ることなく、書き続けるだけなんだよ。ここ何日かは読み返してもいないぜ。読み返したら、心が折れちまいそうで。がっくり膝をついて、二度と立ち上がれなくなりそうで。いやそれでも立ち上がるんだけどね。そうしないと死んじゃうもん。おれを殺すわけにはいかんでしょう。そんなもったいない。




