夜の果てまでパラノイア
行き詰まりのどん詰まり。眠りすぎて頭が重い。それでも電子の片隅の吹きだまりの中で、よっこらしょっと重い尻を上げる。ヘイSiri、タイマー4分にセットして。寝ぼけた頭に熱々のカフェインを注入して、散り散りの意識を指先に集中させる。文章を書く時間だ。本心を言えば、もっと文章を書きまくりたい。めちゃくちゃな内容でいいから、起きてるあいだずっとキーボードを叩いていたい。チャンスは一日に一度っきりだなんて誰が決めた? 秘めた才能を開花させるのに必要なのは数だ。喧嘩も結果も数がものを言うんだよ、ボーイ。
まったく。なにが秘めた才能を開花だ、ファイアーエムブレムのやり過ぎだろう。それは否定しない。おれは炎の紋章をその身に宿し、大袈裟にうなずく。教師として戦士として、そして謎めいた宿命を背負わされた男として、精一杯やっているよ。生徒はみんないい子たちでね。だけどそれが辛いんだ。凄惨な悲劇の匂いがするよ。戦争って悲しいよね。それでもおれたちは戦争から目を離せやしない。戦争で遊ぶことを止められない。ポリシーとして、おれは戦争FPSだけは遊ばないんだけど、それがなんだってのさ。ゲームの中で、いったい今まで何人の命を奪った? 何千人、何万人……数え切れないよ。おれのゲームパッドは血で染まっている。べとついて、嫌な臭いを発している。たまらんね。それでもおれはゲームを止められやしないよ。残酷な時代は美しい歌を歌うんだよ。
湯気立つマグカップを傍らに置いてしばらく様子を見る。おれは猫舌なんだ。ラーメンの麺だって、一度レンゲに置いてからしか食べられないぜ。その昔、松本人志という男が、レンゲでミニラーメンを作るやつが許せない、と発言して笑いをとっていた。許せない? 何様だこいつは。でもその発言以来、おれのラーメンの食い方を何度かバカにされた。その度におれはあの男の影響力の大きさを考えたものだ。やつの影響力を甘く見てはいけない。お笑いの実力云々はおれは知らん。いや特別な男なんだろう、きっと。おれだってやつで笑ったことは何度もあるよ。それでもおれはあいつが嫌いだ。あいつも嫌いだし、吉本興業も嫌いだ。連中の認知はちょっと洒落にならないくらいに歪んでいる。醜い。あまりにも。連中が反省することはないだろう。本気で自分らが被害者だと思い込んでいるのだろう。そして、その主張は多くの人間に支持されるのだろう。大丈夫。おれはいちいちがっかりなんてしない。やつが表舞台から消えようが消えまいがどちらでもいい。ただ、起きたことを忘れないでいることだ。誰がどんな反応をして、どんな態度をとったのか。いち企業がどんな声明を出し、どう動いたのか。そのあたりをちゃんと覚えていることだ。そうすることで、見えてくるものがある。どっちが悪い、どっちが正しい、なんて話には付き合わず、ただ記憶しておくこと。それが重要だ。まあ、30代40代の連中にはなにも期待していないけどね。アホばかりだから。ただ若い人にはお願いしたい。記憶していてくれ。頼んだ。
たまにはね。こういうことも書きます。社会派阿部千代です。こんなこと書くつもりは一切なかったけど、猫舌という言葉が、おれにこういうことを書かせた。本当は書きたくないのよ、こんなこと。書いたってしょうがないもんな。絶望するだけなんだもん。絶望したっていいことなんてないからね。希望を持って生きるのみ。希望はあるよ。おれが希望だよ。おれのようなやつが生きているという希望。きっとどこかにおれのようなやつがいるはずという希望。度を超した願望は簡単に失望に変わるけれど、希望の灯は燃え尽きやしない。消極的に前向きに生きるだけだな。本当はおれこそが子を残すべきなんだろうけど、ごめんね、自分の幸せを優先してしまったよ。今からだって遅くはない。そうだね。その通りだ。とりあえず社会復帰してみて、それから考えよう。いや社会復帰をするなら、そのことを前提に考えてみようか。子を残す。いままでおれが考えていた以上に、こいつはかなり大事なことなんじゃないか。そんな風に思えるようになってきた。42歳にしてようやくね。そういう意味ではおれも新成人みたいなもんだ。フレッシュな風を吹かそう。停滞してどん詰まりな空気を一掃してやるんだ。吹きだまっている場合じゃない。老いぼれている暇などない。人生は戦いだ。勝ち目はないけど、挑まないやつに、女神が微笑んでくれることはないぜ。隠者になれるほど、おれの気性は穏やかじゃない。ま、ちょっくらやってやりますか。イケボイスで、そう独り言。なぜだか元気が出てくる阿部ちゃんであった。本当にわけのわからない男なのであった。
読めないね。おれの心理が。おれにも読めないおれの心理。きみはどう読む? おれってずっとこんな感じよ。ある日ある時、唐突に考え方生き方を変えたりする。前触れは一切なし。もちろん根底に流れている音楽は一貫してパンクロックなんだけど、表に出す音はころころ変わってゆく。ある人はおれを気分屋と評するし、ある人はおれを詐欺師と評する。天才と呼ばれたこともあります。どうしようもないボンクラ扱いされたことも。はてさてその実体は。知らないね。わけわからないからね。真面目に付き合うと馬鹿を見る人間であることは確かだ。確かなんだけど、おれって当人だからさ。真面目に付き合ってやるしかないんだよね。おれはおれの役割をトリックスターなんじゃないかなって気がしているし、カルトスターとして評されるべき人間だと思っている。まあなにか持っているのは間違いのないところで、そいつはおれの文章を読んでくれればわかることでしょう。こういうことを書くと鼻につくかもしれないけど、まあ仕方ないよね、おれがそう思うんだから。決して自分を過大評価も過小評価もしていないつもりだよ。おれの文章には金銭的な価値はないと思うけど、燻っている炎を魂に宿しているやつを揺さぶるパワーはあると信じているよ。だからこうして毎日文章を書いているんじゃないか。絶対に誰かしらの心にフックする。そんな確信があるからこそだよ。馬鹿にしたいやつはしてくれて構わないの。おれだって馬鹿は馬鹿にするさ。なにしろとんでもない馬鹿が野放しにされている状態だ。そんな声のデカいだけの馬鹿の言うことを聞き入れてしまって、本来そいつが持っている輝きが鈍ったりしたら、もったいないでしょう。おれの言葉が理解できるやつには見所があるわけです。そういう人たちの魂を刺激してやりたいわけです。主義主張を発表したり、御自身のスタンスを表明して気持ちよくなっている連中とは、考えの次元が違うんですよね。人間としてのレベルが低いやつを相手にしたってしょうがない。そんなやつが新鮮な驚きをもたらしてくれることなんてないんだから。あなたたちはウェルメイド目指して頑張ってくださいな。あなたたちのやり方では100パー無理だと思いますけどね。
阿部千代さんは頭でも打ったの? そうお思いの方もいらっしゃると思います。でも残念ながら阿部千代さんは元々こんな人です。口が悪く、性格も褒められたものではないけれど、情に篤く、一本気な男です。不器用ではありません。器用なやつです。でもその器用さを悪用しません。卑怯な真似はいたしません。自分に正直、阿部千代です。いつも心にポイントゼロを、阿部千代です。阿部千代、阿部千代を、よろしくお願いします。真面目に不真面目、阿部千代です。風巻き起こす、阿部千代です。阿部千代に清き一票、どうぞよろしくお願いします。阿部千代はあなたの一票を無駄にはしません。あなたを踏み台にはしません。あなたを養分にはしません。あなたと向き合う阿部千代です。文句があるならかかってこいや、阿部千代でございます。それでは皆さんお元気で、さようなら。




