極東最前線からこんにちは
さあ行こうか。夜が明けて、明らかになった街の様相。物思いに耽るカラス。哲学的難問に頭を悩ますホームレス。おれの母はこの街で暮らす。寝ぼけ眼の新宿大久保。東洋指折りの盛り場からほど近く、治安も環境もすこぶる悪く、歩く連中は大抵マージナルな存在感を醸す。看板を蹴り倒す酔っぱらい。初詣客を狙うかっぱらい。その横を走り抜けるテスラ・モデルY。カオスな朝に乾杯。おれの読みどおりに暦がかわり、この街から発信するおれ好みの文章。無味無臭の文章が好みの方はUターンを推奨。体言止めをいい加減に止めろ。だってこれ気持ちいいんだよ。こういうのが、ちょっとかっこよく思えるくらいには、ガキくさい感性がおれには残ってるってことだ。まだまだ未完成な阿部千代です。
明けちまったな。そっちの事情は知らないが、とりあえずおめでとう。大丈夫。おれだってめでたいにはほど遠い。それでもせめて今日くらいは、おめでとう、だ。
ずいぶんと格好つけるね。まあね。こういうキザな文章もバンバン書いていこうかなって。今年はやるぜ、おれはよ。嘘だよ、やらないよ。年内かわらず通常営業。適当に文章を書き散らすだけだな。それにしても煙草が吸いたい。母はおれがとっくに煙草をやめていると思い込んでいるので、というかおれがそう言ったのだけど、訂正する機会を見つけられぬまま10年以上の月日が経つ。
生きていると、煙草を長時間我慢しなければいけないときがいくつか訪れる。ここ何年かの12月31日の夜から1月1日の昼頃までが、おれにとってはまさにそのときで、まあはっきり言えば新年の挨拶などそこそこに済ませて、はやく帰りたいわけだけど、甥っ子がまとわりついてきたり、まあ母とも会うのは結局は年に1回きりなわけで、少しくらいは煙草を我慢したって罰は当たるまい。そりゃまあ、罰は当たらんけれども、苛々はするね。そわそわもするし、ちらほらと貧乏揺すりも顔を覗かせ、そのたびに家人に睨みつけられる。なんかちっこい犬がおれにちょっかいをかけてくる。
まるであったかホームドラマだ。そうだ。煙草も吸いたいけど、本当に嫌なのはこの家族感だ。いろいろな理由があったりなかったりするけど、おれがここの連中の一員であること、血族として長男として、まあまあ重要なポジションに位置していること、それらすべてに違和感しか湧かん。一度ばらばらになったものを再構成したのが、この血族だ。そしてこのおれが、この部屋の最後のピースであった事実。
おれの奪還は、母の長年の悲願だった。けれどおれ自体がそいつを望んでいなかった。もちろん、理屈で考えればこっちの方が良いに決まっている。フーテン崩れのラリパッパはおれを高校に通わせる金がないと言い切っていた。おれはそんなこと気にしちゃいなかった。学校なんて行きたくなかったし。
でも結局おれは、こっちに引き取られた。それ以来、おれに実家なんてものはない。くつろげる場所はいつだって家の外になった。それだって永遠じゃない。すこしの刺激で、なにもかもが変わっちまう。おれは自分の居場所を探して彷徨った。流れ流れて、いま新宿大久保で、血の繋がった他の人ん家の布団で寝っ転がっているってわけだ。いろいろと端折っているし、ぼかしているから、なんのこっちゃわからないと思うけど、おれもいろいろと大変だったんだよ。きみがいろいろと大変だったのと一緒でね。
そうだ。もうとっくに恨みなんてないさ。一生憎しみ続けてやると、そう誓っていたはずなのに。まあそんなもんだ。結局のところ、完璧な存在なんていないんだ。大人だろうと親だろうと、やらかすときは盛大にやらかすぜ。ガキってのは馬鹿だから、そいつが理解できないんだ。いつだって自分を1番に見てくれると信じてやがる。そうならないと、すぐにむくれちまう。人間はほんのタイミングでいとも簡単にとち狂う生き物だってことを、まずは教えてあげなくちゃな。そして、いつまでも守られているだけじゃダメなんだよってことも。きみがパパやママを守ってあげなければいけない場合だってあるんだよ。子どもだから、なんて言い訳にならない。大人だって子どもだって、駄目になっちまったやつは駄目なんだ。人間ってのは驚くほど弱い生き物なんだ。
なに言ってるの。おれは誰だ。何様だ。とにかく煙草が吸いたいってだけの話を、ずいぶんと広げたね。まあね。文章なんて広げてなんぼだから。際限なく広げていきゃいいんだよ。いまのおれは未熟だから、自分でストップかけちゃうけど、いいんだよ、止める必要なんてないんだよ。行きっぱなし、やりっぱなしでいいじゃないですか。いやでもあまりにもドメスティックな話だから……。構やしねえよ。どうせなんのことやらさっぱりなんだし、賢いやつは断片的な文章からでもなんらかのストーリーを見出すさ。それでいいんだ。勝手にしてくれ。おれだってこれ以上は面倒見てられないよ。
それにしてもだ。やっぱりキーボードじゃないと調子出ないね。フリック入力も決して悪くはないけどスピード感が段違いだ。それに音。キーボードは楽器でもあるから。タイピングの音が精神を高揚させてくれる。だから今日はちっとも上がらない。もう眠たくってしょうがないんだ。
本当は朝早くにこの文章を投稿するはずだったのに、ついつい途中で眠ってしまって、もうこんな時間だよ。初夢はカープがリクエスト失敗する夢でした。無理にホームに突っ込んだランナーがなぜか瀬戸。とっくに引退してるっつうの。夢ってマジでわけわからないね。おれは瀬戸のことなんて普段考えていないよ。当たり前でしょう。90年代の控えのキャッチャーだよ? 瀬戸輝信。フルネームまでそらんじることができるんだから、おれって本当にカープ好きだよな。まあでも瀬戸の話およびカープの話はこれくらいにしておこう。だれも求めていないもほどがある。
やっぱりダメだな。自分の部屋じゃないと集中して文章を書くことができん。普段の環境がどれだけ恵まれたものなのかが実感できる。TVうるせえ。子どもうるせえ。人間うるせえ。煙草吸いてえ。DHCブランドの商品がちらほら目についてちょっとゲンナリ。もちろんDHCが売却されたのは知ってるけど、どうしてもヘイト企業だって目で見ちゃうよな。普通のやつはそんなことないのか。普通ってなんだろうな。おれはおれを普通だと思ってはいるんだけど。それにしても、吉本芸人はやかましいな、本当によ。わあわあぎゃあぎゃあ、鬱陶しいったらないよ。TV番組がくだらないとかそういうんじゃなしに、単純に目障り耳障りなんだよな。神経に障るみたいな感じ。誰も見てないからっておれがTV消すと、なんで消えてるのっつって誰かが点けるの。イカれてるよ。TVが点いていないと落ち着かないって、それ普通に病気でしょう。嫌だねえ。早く帰りたい。おれの家に。おれの部屋に。他人の家はやっぱり苦手だね。従わないといけないルールが多すぎる。TVを消して、音楽を流すだけで、だいぶ変わると思うんだけどね。なにしろTVは下品だよ。鬱陶しい。こんなもんマジで見てたら気が狂っちまうよ。
はあ。母親の家に来てまで、ぼやくおれ。やっぱり部屋を出るべきじゃないんだ。今年もおれはなるべく部屋に引き篭ろう。と言っても仕事に出なければいけないんだが。上手いこといかんよ。今日はすみませんね。まったく集中できなかった。それでは。




