ダメなやつはダメだな
さあ書こうか。今日はなにを書いてくれるのかな。結局のところはこのスタイルに戻ってきちまう。おれのような馬鹿が、あれこれ考えて文章を書いてもしょうがない。サーヴィス業には向いてないんだ。他人を文章で楽しませようなんて、よくもまあ大層な野望を抱いたもんだよ。書き飛ばせ、書き散らせ。書いて、ばら撒いて、あとは知らね。それでいいじゃないか。おれにはそれが性に合っている。それに、そうやって書いた方が、自分でも納得できる文章が書けるだろう。他人の目なんて気にしちゃダメダメ。まわりを見てみろ。誰もいないだろう。それでいいんだ。数字に振り回されるな。そこに幸せはない。待っているのは虚無だけだ。いつも心にポイントゼロを。そしてこの世に怪文書をプレゼントだ。あげる。もらっておいてくれよ。読まずにひっちゃむいてくれたっていいからさ。
ランク入り熱望少女は少年だった。ふーん。そうなんだ。そして、そんな彼が放った最新作はタイトルだけで腹いっぱいの下品な代物だ。意訳すると、「年間でめちゃめちゃ稼いだ超有能なおれ様が、この一年を総括してやる。おれにはその資格がある。おれにしかないと言ってもいいだろうな。なぜなら、おれは年間でめちゃめちゃ稼いだからだ」となる。
スカリーじゃなくたってこう言うだろうな。あなた疲れてるのよ……。
ボーイはいささかクレイジー。自分に酔って、酔い痴れて、見境がつかなくなっちまっている。頭の中で積み上げた幻想のコインでなにかを成し遂げた気になっている。誰でもいい。ちゃんと教えてやれ。おまえの文章、味も素っ気もなくて、読めたもんじゃねえぞってよ。なんでも褒めりゃいいと思っていやがるんだ。ガキにすらケツを差し出すってのかい? お盛んなのはいいけど、相手は選べっての。はしたない。不潔。いやですわ。
ヘイ、ボーイは不安定。不安でいても立ってもいられない。おれは考えるよ。彼が権力を持った未来を。おお、なんと恐ろしい。お化けがぐねぐね笑ってら。ファック野郎を育ててなにがしたいんだ? ボーイの取り巻き連中は。あんたら大人ならわかるだろう? ボーイがどれだけ分別のついていない子どもなのか。怪物級の自意識をどれだけ膨らましちまっているのか。わかっているんだろう? もうとっくの昔に、あんたらすら見下されているってことが。
ま、でもおれ、知ーらない、知ーらない。関係ないもん、勝手にやっちくり。鼻くそ、ぴんっ。
ダメだな。なろうエッセイなんて眺めていたら、人間が腐っちまう。おれはもっと非情にならなくっちゃ。全ての人間を救おうなんて傲慢にもほどがある。つーか、救って欲しいのはおれの方だってえの。フックアップしてくれってんじゃない。そんなもの、おれは必要としちゃいない。独立独歩、唯我独尊のお面を被ってゆくぜ、どこまでも。お面の下の顔はヒミツなんだごめん。ヒミツを教えるかわりに風船をあげよう。すぐに割れてしまうから気をつけるんだよ。あんまりはしゃいで転ばないようにね。踏みつぶすぞ。
清しこの夜が明け、仕事納めは明日? 明後日? おれはとっくの昔に納めちまった。いや、しかしこのシャンパンうまいね。モエット、シャンドン……っていうのかな? こうなるから、普段は酒を家には置かないんだよね。全部飲んじまう。今日の文章はアルコール分12度だぜ。今日だけだよ? クリスマスの残りカスを、全部スタッフで処理しておかなくっちゃいけないから、仕方なくなんだ。それはわかってほしいね。
でも一度酔ってみると、素面ってのはなんて侘しく、悲しいんだろう。うーん、あれ? 文章が続かなくなっちゃったよ。そう言えば今日はなんだかスローペース。やっぱり酒はダメだね。おれには向いてない。かといって向いてるものなんて無いんだよね。長年かけて溜め込んだ語彙だって、常人よりはほんの少し多いってだけで、それも年々サーチ能力が衰えて口籠もる頻度が増えてゆく一方だ。表現力? そんなもんおれに求めるなって。小説を読んでたって絵すら浮かんでこないんだから。言葉を言葉として処理して、文章を文章として処理しているだけさ。情緒とかさっぱり理解できない。ペーソスとか言われたってさ、どろっとしたパンに塗るやつしか思い浮かばないんだよ。こんなポンコツが文章を書こうなんて……はい、そこでストップ。
酒に飲まれかけたな。朝からシャンパンなんて飲むからだ、馬鹿が。ちょっと気持ち悪くなってきたね。モニターの光が目に刺さって痛いよう。ゲロなんかより言葉を吐きたいよう。
よう、そこのあんた。おれの横っ面を思い切り引っ叩いてくれ。いい加減に目を覚ましたいんだ。長い長い夢を見ているんだよ。そこは醜い連中ばかりでさ。おれなんて、おっかなくって震えていることしかできなかったよ。誰かの魂を震わすものを書きたいとかさ、よく言うじゃん? あれってどういう意味なんだろうね。単に感動させたいってのを言い方変えただけ? 要は泣かせればいいんだろう。そんなもん簡単だよね。死なせりゃいいんだって。おれなんて、涙もろいからなんだって泣いちゃうからね。知らないドラマの最終回とかでも泣いちゃうんだから。でもそれって感動ではないよな。排泄みたいなもんでさ。涙は流れてるけど、おれの魂はちっとも震えちゃいないよ。魂っておれもよく使う言葉だけど、皆さんはどんな意味で使っているのでしょう。おれの場合はあれですよ。自分からみた自分だよね。他人からみた自分ではなく。あれ? おかしいな。頭の中ではしっくりきていたのに、文章にすると意味がぜんぜん違う問題。この問題の解決法はいまだ発見されていない。もう21世紀だってのに、解決のめどすらたっていないことが多すぎるよ。大杉漣も亡くなってしまったしね。~だしね。って書くと、最後のしねが死ねに見えて、ちょっとドキッとする。それだけ、おれは死を恐れているってことだ。それでも、だいぶ受け入れ体制は整ってきているような気もする。だってずいぶん長く生きたものな。あまりにも長い長い夢。いい加減目を覚ましたいんだよ。だからあんた、頼むよ。おれの横っ面を思いっきりやっちまってくれ。頼むって。
誓おう。おれはもう二度と酒を飲んで文章を書かない。いくらなんでもこれは酷いと思うんだけれど、でもおれが酷いと思うものはウケたりするから、この文章もウケがよかったりするのか? いや、それはないな。言葉では上手く言い表せないが、いつもの酷いとまた違う酷いだ。言葉では上手く言い表せない、だってよ。そういうことを上手く言い表すために文章を書くのでは? 誰が決めたんだい、そんなこと。無理なものは無理さ。どんなに考えたって無駄。だっておれはこれ以上、考えたくないんだもの。キーボードを打つ手が止まる瞬間が一番嫌いだよ。酔っていようが、支離滅裂だろうが、構いやしないぜ。慎重に書いた文章が面白かった試しがないんだから。書いたそばから書き捨てだって言ってるだろうが。本当は読み返すのだってNGなんだぜ。誤字脱字、誤用誤変換、そんなの知るもんか。でもおれってそういうの少ないと思うんだよね。無いとは言わんよ。でも他の人より圧倒的に少ないと思うんだけど。これ、ちょっとだけ自慢なんだ。書きながら校正しちゃうからね。この能力だけは自信があります。でも完全ではありません。そして完全であれば良いというものでもありません。誤字脱字などは文章において重要なファクターではない。つまりおれの自慢の能力などなにも意味はないということだ。無意味な男。それでも書くし、生きるのさ。生きねば。




