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やっぱりおれの居場所は深夜だったのか。おれの生活リズムは日々ずれ続けているので、最近は夜になると眠くなってしまうのと、異様に文章を書く速度が上がってきたので、夕方くらいに文章が書き上がってしまってそのまま投稿していたのだが、これが恐ろしいほど読まれなくてなあ。
昨夜遅くに投稿してみて、30分くらいでずびょんっとPV数が増えたのを確認したときは、感動したって。まったく、深夜帯のやつらはなんの反応も評価もしてくれないから、つまらない連中だなと思っていたけど、読んでくれるってだけで貴重な存在だったんだなって気づいたよおれは。ごめんな。おまえらこのおれを待っていてくれてたんだな。いや、おれはそう思い込むからな。つまらない現実なんて知りたくないんだ。おれに甘い夢を見させてくれ。これからはなるべく深夜に投稿するようにするからな。かーっ、必要とされるのは嬉しいねえ。お待たせ、おれが阿部千代だよ。なめんなよ、ヨロシク。ちょんっ。
さっきここ小説になろうである女性の方の文章を読んだ。びっくりした。ああ……これはエッセイだわ。もう教科書に載せたいくらいにエッセイだわ。小説家になろうのエッセイジャンルで、初めてエッセイを読んでるって感じたわ。
おれは自慢じゃないが、小説家になろうのエッセイはかなりの量を読んでいる。本当に自慢じゃないだろう? そのおれが断言する。この方、ダントツ。ダントツでイチバン。毎回、挿絵もあって、その挿絵も素敵なんだが(職業デザイナーさんなんだって)それ無しでも、文章力で図抜けてる。
爆発的に面白かったり笑えるわけではない。落ち着いたトーンの文章で、淡々と日々の生活や過去の思い出なんかが綴られているだけ。奇をてらってもいないし、わざとらしいくすぐりもない。肩の力が抜けきってるっていうか、正拳突きを20年間毎日一万回繰り返している空手家の突きみたいなさ。派手さはないけど、凄みがあるみたいな感じの文章。読んでいてとても心地がいいもの。めっちゃくちゃ上手いよ。
いま世の女性の間で人気のエッセイストさんです、そう言われたっておれはまったく驚きませんよ。あなた、なんで小説家になろうなんかで書いてるんですか。なんかっていうのも失礼な話だが、実際なろうレベルではない。もう、エッセイストになっている。
おれはもう速やかに30000ポイントくらい入れさせてもらおうと思ったのだが、その方は評価欄も感想欄もなにもかも閉じて鎖国中だったので、ブックマークをつけるだけつけてみた。その方にとっちゃなんの足しにもならないのだろうが、なんとなく。おみそれしましたって感じで。
もうひとつ言うと、その方、おれと同い年なのだよね。エッセイの中でそう書いてあったから、そうなのでしょうよ。同い年のその方の文章を読んだあとに、おれの文章を見てみると、いやあ……なんだか悲しくなってきちゃう。もうちょっとぼくも素敵な文章を書いてみたい。落ち着いた、大人の雰囲気を、押し出していきたい。そんな風に思ってしまったよね。
比べてはいけないのはわかっている。その方の書いているような文章は、本質的におれの好みの文章ではないし、おれの持っている資質的にその方のような文章を書けるわけがない。見てきた風景が違い過ぎるし、もちろん現在の状況もまったく違う。それにしたってね。自分が恥ずかしいというか、もうちょっと心のネクタイを締めた方がいいのかな、なんて。
耳に入ってきたんだよね。「阿部って本当、バカでガキっぽくて、サイッテー」同級生女子からのそんな囁きがさ。ううむ。参った。それを言われると、結構ダメージあるんだよね。それで頭に血が昇って、もっと意地悪してしまって、更に深く嫌われていくという黄金パターン。いやなんか、小中学生のころの嫌な記憶が蘇ってくるなあ。おれもいつまでもバカヤロウだのクソ野郎だの言ってられないよなあ。わたしまあまあ本気で反省しています。まずは一人称のおれを止めようか。なんか悪ぶってる感じに見えてしまうもんね。ぼくにその気がなくてもさ。
文章って難しいですよね。正解もないし、決まった道筋もないですし。ただぼくは、その中でなるべく自由に遊んでいたいと思っていたわけですが、最近の文章は目指しているところと離れ過ぎているな、ちょうどそう感じていたところに、同い年の方のすごく上手な文章を読んでしまって、軸がぶれにぶれているところです。そもそも軸なんてあったっけ?
ふむ。なんだか間の抜けた夜だよ。目印にしていたものを、一瞬で見失ったような気分。もう少し丁寧に文章を書いてみよう。そうでないと、文章を書いている意味がわからなくなってしまう。ただ行数を稼ぐために書く文章ほどつまらないものはない。勢いをつけながら丁寧に。慎重に書くのではなく。ことばを踊らせよう。音楽のような文章を書くんだ。
よし、そうと決まれば、煙草を一本吸おう! そして眠ればいいじゃないか。もう夜なのだし。