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テキーラ!

 みんな一体どうしたの? なんだか気味が悪いよ。ぴん、ぽん、ぱん、とスコアが伸びていくのをおれは見た。嬉しいことは嬉しいんだけど、まあまあ、いったん落ち着いてくれ。そんなに急激にやられたら、ヤツらに気づかれちまうよって感じだ。もしや怖じ気づいたのか? いつも威勢のいいことを書いているくせによ。マイルド路線に変更するか? 噂の三浦マイルドってやつか。頭に浮かんだ言葉を無闇やたらに書けばいいってわけじゃない。内輪話みたいなものを気軽に放り込むな。

 ああ、そうだな。その通りだ。評価がつくのは望むところなのよ。もとよりおれは生粋の目立ちたがり屋だしさ。別に急激なスコアの伸びにびびってるわけじゃないんだぜ。その割にランキングに載っているかどうかを確認していたな。うん。載ってた。しかも、まあまあ上の方に。やっべ、って思ったよ。

 おれだけじゃないか? やべえ、ランキングに載っちまったって焦るのは。だって読むやつが読んだら、怒るぜ? どうせポイントゼロだから誰も読んでねえだろうってたかを括ってたんだから。どうする、いったん退くか? 愚問だぜ、兄弟。阿部千代は不退転。いくとこまでいっちゃうぐらいの勢いがあると見せつつ、ギリギリのところで踏みとどまる。それこそがエンターテインメント、チキンレースってヤツだろう。観衆はおれの脳漿が散らばるのが見たいのかもしれないが、そうはいくかっての。まあ見ててくれって。おれの伝説は、ジングルベルとともに幕を開けるんだ。

 そういやあらすじに、血と硝煙が舞う新感覚ラヴストーリー、いまここに開幕――。みたいな感じのが書いてある小説をたまに見るけど、ああいうのって恥ずかしくないのかな? だって自分で書いてるんだろう、あれ。10代ならまあ、ギリわかるよ。もしおれが10代だったとしたら絶対にやらないけど、オタクボーイなら仕方ないじゃん? 昔も連中の一部ってめちゃくちゃ気取ってたから、むしろ懐かしいもん見たなって気になるけど、あれをいい大人がやっているとしたら、ちょっとね? いや、いいんだけどね。いいのよ、マジで。好きにしたらいいと思う。でも……ちょっとね?


 イヴはいかがお過ごしでしたか。おれなんかあれだね、確認するたびにPVが伸びてるもんだから、手を叩いてキャッキャと喜んでたら一日が終わってたよ。あ、一応言っておくけど、こんな寂しいイヴを過ごしましたよ、みたいな報告じゃないからね。こんなことを書いたからって、弱者男性とか自分で言っちまうような負け犬インセルの共感を誘っているわけではないから、そこんところは勘違いしないように。おれはただ正直者なだけだからね。たまたま今年のイヴはそんな風に過ごしたよってだけ。

 だいたいイヴだからって浮かれたり落ち込んだりする方がおかしいんだって。そりゃ付き合いたての恋人と初めて迎えるクリスマスとかなら浮かれるでしょうけど、それは別にクリスマスが嬉しいんじゃなくて、恋人と一緒にいられるのが嬉しいわけじゃん。あとは、まあ優越感? モテねえ連中はざまあみろ、今年のオレは彼女と一緒のクリスマスだぜ! そんな感じのさ。

 でもさ。長く付き合ってる恋人とだったら、言葉は悪いけど、義務みたいなもんじゃん、お互いにさ。もちろん、普段よりは楽しく感じるかもしれないけど、それはたぶん普段より金をかけてるからゴージャスな気分になるからだよね。それだって、アジの干物がスモークサーモンに、発泡酒がスパークリングワインにそれぞれ変わったくらいのもので、そんな大したことではないよね。別に一晩でウン百万って使うわけじゃないんだから。せいぜいプレゼント込みで10万くらいの話でしょう。結構、高いな。まあ高めに見積もって。おれなんてプレゼントはいっつも6000円くらいだったもん。それでもいいのよ。おれだから。そういうおれと一緒にいるのが幸せって人が実際にいたんだから、しょうがないでしょう。ない袖は振れんのよ。

 それで、子どもができたら、クリスマスなんてもう子どもが主役じゃん。子どものボーナス日みたいなもんじゃん。おれにはそんなクリスマスはなかったけどね。別に同情しなくていいけど、小学生の時に2回だけもらったクリスマスプレゼントが、コロコロコミックと500円玉だからね。嬉しかったですけど? コロコロコミックなんて3年くらい一冊を、繰り返し繰り返し、ずっと読み続けたからね。いい子だろう? まあそれはどうでもいいとしてさ、親になったら子どもが喜んでいるのを見て、にこにこするのがクリスマスでしょう。もちろん一概には言えないけどね。おれん家みたいな家庭もあるだろうし。イメージとしてね。

 で、おひとり様。別にさあ、わざわざさあ、ひとりであることにそこまで落ち込む必要なくない? つーか、マジで落ち込んでるの? 落ち込んでるポーズじゃないの? だっていっつもひとりじゃん。毎日毎日ひとりでいることで落ち込むわけじゃないでしょう。おれだってひとりのクリスマスなんて余裕であったけど、気にしないよそんなもん。むしろ気にするやつの気持ちがさっぱりわからん。


 ここまで書いておいてなんだけど、どうでもいいな。どうした、阿部ちゃん。なんか説教臭いぞ。ランキングに載ったからって、いいこと言おうとしてるの? やめろ、そんなことは関係ない。おれがそう書くと、マジっぽくなるからやめろよ。もうクリスマスのこと書いてる途中から我に返ってたんだけど、とりあえず書き進めてみたけど、どうでもいい、って感情がどんどん大きくなっていって、耳元で囁くのよ。おまえ、どうでもいいこと書いてるな、ってよ。じゃあ、いつもはどうでもよくないことを書いているってのかよ。いや、どうでもいい、の閾値を超えたんだよ。それになんか庶民くさくて嫌だ。いいか? おれは生活臭のするものが嫌いなんだ! 軽自動車に飾ってあるクレーンゲームで取ったぬいぐるみとかさ、ベタベタに薄汚れたシールが貼ってある冷蔵庫とかさ、額縁に入れられた変な子どもの似顔絵とかさ、そういうものが嫌いなんだよ。わかってくれよ。


 もっと現実感のないことを書こうぜ。それか小説家になろうの連中の悪口でもいいぜえ? いやそれがよ、昨日の小説家になろうは至って平和でよ、おれの見立てでは、ムカつく連中は日曜のイヴに文章を投稿するのって、なんか負けた感があって嫌だったんじゃねえか? そう思うんだけど。変なプライドだけはありやがるんだろうな。そういうところも含めて全部カッコ悪い!

 おれさ、もう人の悪口書きたくない。ランキングは関係ないよ? 人の悪口って虚しくなるんだもん。いや勝手にしろって話なんだけどな。誰にも頼まれてないし。期待されているわけでもないし。別に宣言する必要もないんだけど、でもほら、ちょっと評価ついたからマイルドになったって思われるのもしゃくじゃないですか。誰もそこまでおれの文章を見てねえよ。自意識過剰も甚だしいな。この文章を初めて読む人もいるってことをおれは忘れていないか? 忘れてたね。そいつはすっかり忘れてた。いつから忘れていたんだ? 最近ずっと忘れていたような気がするぞ。いや、盲点だったね。読者の目を気にするってそういうことだよな。勉強になるね。こんなことをひとりで気づけちまうおれって、やっぱりなかなかのもんなんじゃないかと思うんだけど、どう? 誰に訊いてるの。

 最近ちょっとなんか不安なんだよね。文章を書いている時に、ずっとおれと会話をしているような気がして。そのうちおれが二つに分かれちまう気がして。もうちょっとちゃんと文章書こうかな。それとも二つに分かれて見るのも一興か。よし。今日はこれで終わりにしよう。なんか調子出なかったね。最近ずっとこう。嫌な感じだよ。後で読んでみるとそうでもないんだけど、書いている時の違和感だよね。グルーヴ感が足りていない。毎日書くのもそろそろ限界なのか? でもここで踏ん張ることが重要なのかも。うーん。わからん!

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